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応援したくなる作家『食っちゃ寝て書いて』小野寺史宜著

横尾成吾は作家である。子供のころは長く文字を読み、大人になってからは長く文字を書いた。というか彼には文字しかなく、書いては文学賞に応募を繰り返すうち、なんとか小さな出版社の新人賞を受賞して作家としてデビューした。

 

少しくらいの距離なら交通機関さえ使わずに歩き、1丁30円の豆腐を毎日食べて、年下の編集者にもらった「おあがり」のダウンジャケットを何年も来て、そうして「食っちゃ寝て書いて」なんとかかんとか暮らしている。

 

作品は今までに十三作出しているが、五十を目前にして、最近大手出版社の女性編集者に、二度の書き直しの末にボツをくらうという目に遭わされ少々参っている。その編集者は文芸部門に栄転し、代わりに井草菜種という若い男性編集者がついた。

 

菜種は実家がクリニックなため、当然家業を継がなければと思い医学部を受験したのだがすべて失敗し、文学部で合格した(一流どころらしい)大学を出て、なぜかボクサーを目指すも挫折し出版社に入ったという人間だ。クリニックは妹が継ぐので何の問題もなく、恵まれた家庭環境ですくすくと育った人物らしい。

 

この二人の人物の視点で、3月から翌年の2月までの日々が交互に綴られる。昨年の暮れに読んだ『日比野豆腐店』の作者の作品で、今回も嫌な人物は一人も登場しない。とりわけ物欲も少なく謙虚な横尾は非常に好もしい人物で、作品が売れるといいなと応援したくなるが、間違って大ベストセラー作家なんぞになって人格が変わってしまったりしてほしくはない。

 

富を得てさらに強欲に醜くなっていく人物ばかりのこの世の中で、横尾は一服の清涼剤とも言えるような好人物だ。「もの書く人」と言えば、Eテレの『ネコメンタリー』に出てくる方たちのように、豪邸とまではいかないまでもこじゃれた住まいに暮らすリッチな人種と思ってしまうが、横尾は小さいとはいえ新人賞を受賞し1作は映画化もされた作家なのだが、それでもこのように生活は大変なものなのだろうか。好人物の横尾にもうちょっとだけ良い生活をさせてあげたい気もする。

 

本屋とか図書館とか出版社を舞台にした物語は、本好きにとってはたいてい外れなく楽しい。この作品は主要登場人物の二人の人間性が非常に好もしく、またその二人が二人三脚のようにして新しい作品を世に出すまでをそばで見守るような気分で楽しませてもらった。

 

 

 




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