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大切に読みたいかそけき世界『ことり』小川洋子著

両親亡き後、ひっそりと暮らす7歳違いの兄と弟。少しゆっくりではあるものの、普通に育っていると思った兄が、11歳のころ無口な数か月を過ごしたのち、不意に意味不明の言葉をしゃべりだした。

 

両親はあらゆる努力をしたが兄の症状は改善するどころかますます深刻になり、普通の言葉はいっさいしゃべらなくなる。不思議なことに、なぜか弟にだけは兄の言葉が分かるのだった。

 

兄は近所の幼稚園の小鳥小屋を眺めることを愛していた。あまりに毎日じっとフェンスにもたれて眺めるため、そのフェンスにはお兄さんの体がすっぽり収まるくぼみができているほどだった。

 

兄の出かけるところと言えばその幼稚園と、小鳥のイラストの付いた棒付きキャンディーを買う青空薬局だけ。そのキャンディーの包装紙を大切に集め貼り合わせて、お兄さんは小鳥のブローチを作り母親にプレゼントし、そのあともずっと色とりどりのブローチを作りためた。

 

こんなちょっと風変わりな兄弟の生活が綴られ、やがて兄が52歳で亡くなるが、ある企業のゲストハウスの管理人として働く弟のつつましい生活は続いて行く。弟はお兄さんが愛した鳥のことをもっと知りたいと思い図書館に通うようになり、そこで司書として働く女性に淡い思いを抱くが、いつかその女性もいなくなる。

 

幼稚園の子供たちから「小鳥の小父さん」と呼ばれた、この「弟」の命が終わるときまでの静かな日々を描いた物語は、あまりに繊細で美しく、大切に大切に読まなくては壊れてしまいそうだ。

 

兄弟は二人だけの小さな世界で生き、お兄さんを認識したのは家族以外では園長先生と青空薬局の店主だけかもしれない。それでもお兄さんの一生は穏やかで幸せなものだったのではないかと思える。

 

お兄さんよりはもう少しだけ広い世界で生きた弟は、その分いくらか苦しい思いもしたのではないかと思うけれど、お兄さんや鳥を愛し抜いて、充実した人生だったのではないかと思われる。

 

兄弟があまりにも純粋なので、ひどく傷つく事態が生まれないかと心配しながら読んだが、静かで穏やかな世界があまり乱されることなく終わりほっとした。世界はますますお金に振り回され醜さを増しているけれど、そんな現実の中で、こんなにも美しく静かな世界を紡ぎ出す小川洋子さんに深い感謝を捧げたい。

 

読み終わった感動を、いつまでもそっと大切に抱きしめていたいと思う作品だ。

 

 

装丁も素晴らしい。




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