普通の短編集だと思って読んでいたら、担任の教師が同じであることに気付き、途中から既出の登場人物も現れることが分かった。同じ高校の、一つのクラスの、青春群像だった。そう気が付いて、初めに戻って各登場人物に注意しながら読み直した。
いわゆるスクールカーストの下の方に位置付けられた人だけでなく、容姿に恵まれたりSNSで人気を集めたりしている一群の生徒たちでも、それぞれに青春はなかなか苦いものらしい。
自分の昔を思い出しても、当時はスクールカーストなどというものもなく、私は学校に行くのも全然嫌じゃない、いやむしろ楽しいくらいだったが、それでも映画やドラマに描かれるようなキラキラした青春などとは程遠く、だからこそ、森田公一とトップギャランの『青春時代』が妙に胸に響いたのだと思う。
そんな自分の青春時代に比べ、この作品に出てくる高校生たちも、最近の小説やドラマで描かれる若者たちも、みんななおいっそう生きるのがつらそうだ。確かに昔から物語に描かれてきたようなロマンチックな青春時代と現実は違うけれど、それでも、自分の頃はこれほどではなかったような気がする。
優しく繊細になり過ぎた若者たちに時代の要請も相まって、自分たちで自分たちを生きにくくしている面もあるように思う。この作品でも、各話の中で、登場人物たちがそれに気づいていくようだ。
今は一群にいるが、かつて太っていていじめにも遭っていた女生徒。その屈辱的な過去を知る同級生が目の前に現れておびえる「樫と黄金桃」。
老けた見た目と弱気のためにいじめを受けているが、そのいじめをゲームの「ミッション」だととらえてやり過ごしている男生徒。彼の老けた見た目を利用して煙草を買わせるヤンキーと、屋上で同じ時間を過ごすうちに変わっていく「灰が灰に」。
関西からの転校生赤彦はなんとか人気者になりたいと頑張るが、同じクラスの早見が見た目のカッコよさでSNSの人気者になっているのが気に食わない。なんとか早見の弱点を見つけたいと画策するうち、大変なことを知ってしまう「レッドシンドローム」。
この他に「走れ茜色」「真白のまぼろし」「青とは限らない」とどれも色名を含んだタイトルの作品が6編収められている。
特に最後の「青とは限らない」にはそれまで各話に登場した生徒や先生が登場し、同じ高校の同級生だった教師たちの青春も重なって、苦いけれどやっぱりまんざら捨てたもんじゃないな青春、と胸を突かれる。
まさに春のほとり・・・。今年の8月に出たばかりの著者の最新作。
