楽しみなドラマが始まったと思ったのだが、全3話とのことなので、もう今週終わってしまう。もっとずっと観続けていたいドラマだ。
またしてもコミックが原作の『Shrink』である。“全ての人が気軽に精神科にかかれる日が来ますように…”と願う、のんびり屋だがとても優秀な精神科医・弱井(中村倫也)と、一言多いが思いやりに溢れた看護師・雨宮(土屋太鳳)の2人が診療に当たる新宿の路地裏にある小さな精神科医院が舞台。中村倫也さんはとても穏やかな良い声なので、この声で優しく語りかけられたら誰でも本当に心が落ち着きそうで、この役にはピッタリだ。
先週土曜日の第2話は、チェーン展開のラーメン店の店長が主人公だった。もう十二分に頑張っているのにさらに売り上げを伸ばすよう本部の人間に求められ、心を病んでしまう。しかし本人にその自覚はなく、一緒に暮らす妹が心配して相談してくる物語だった。
私はいま村山由佳さんの『風は西から』という、実際にあった過労自殺事件を題材にした小説を読んでいて、これもチェーン展開の飲食店の店長の話だ。小説もドラマもちょうど似たような状況で、観たり読んだりしている私も非常につらい。そんな非人間的な労働を押し付ける職場は今すぐ全てを放り出して逃げて!と思うのだけれど、もともと真面目な人たちだし、そこまで追い込まれた人にその発想はなくなってしまうようだ。
放送時にも好きで観ていたドラマ『今夜すきやきだよ』を、今またネットフリックスで視聴しているのだが、そこに登場する脇役の「しんた」(三河悠冴)という男性が魅力的だ。
「男の子だから泣かないの」「男なんだから高学歴・高収入じゃないと」「我慢できるでしょ男なんだから」などの「男らしさ地獄」から抜け出したいと口にして憚らない、将来設計もなければ収入も不安定なフリーのwebライターだ。主人公の一人である絵本作家のともこ(トリンドル玲奈)の良き相談相手でもあり、ひょうひょうと軽やかに生きている。
どうも日本人は、苦しい状況の中で歯を食いしばって頑張ることに価値を認めがちで、適当にゆるゆると楽しそうに生きるのはけしからんと見られがちだ。この「しんた」などまさに日本人の一般的な価値観からすれば、いい年をしてフラフラととんでもないということになりそうだが、私には魅力的に見える。こういう人が安心して歳をとっていける社会でありたいと思う。
もちろんそうした社会であるためにも、日本がちゃんと稼げる国でなければならないわけで、国の経済的基盤をどう作るかは重要だが、でもそれは決して「日本を世界のてっぺんに押し上げる」などということではないし、そのために労働者が使い捨てにされて良いはずもない。
今この瞬間も、こうした過酷な「ブラック労働」の職場で苦しんでいる人がたくさんいることだろう。でもどうか頑張り過ぎないで欲しいと思う。世間の物差しなど気にしないで、人権に配慮しない職場は放棄してほしい。
発想を転換すれば、そんなにつらい思いをしなくても、人は生きていけるものだと思う。探せばあちこちにただ同然の金額で家を借りられる自治体があるはずだし、そうしたところはたいてい広い庭があったり、その気になれば畑さえ借りられたりする。
若い転入者はどこも歓迎なので、仕事の相談に乗ってくれるところもある。多くを望まなければ、人間生きていけるものだ。思い切ってそちらに舵を切ってみれば、世間で言う「大手企業に就職し、マイホームを持って出世競争に勝っていく」という成功物語より、はるかに人間的でゆたかな人生が送れることに気付くかもしれない。
