
何から書き始めるべきなのか。かれこれ30分、書いては消し、書いては消しを繰り返している。
私が文士なら、きっとあのピアノの音も、美しい涙も、熱狂のダンスもうまく表現できるのに。
でも書けない。いろんな感情が入り混じって、書けないのが正解な、そんな千秋楽だったように思う。
いつもの如く三歩で忘れるトリ頭な上に、思いっきり泣いて頭はぼんやりしているので順不同なのはご容赦願いたい。ごめんなさい!
「霧深きエルベのほとり」という新作
万里組長の挨拶で「平成の『霧深きエルベのほとり』を作れたのではないか」という言葉が印象的だった。
56年前に生まれた往年の名作を、ギラギラばちばちパッショネイトな星組がどう料理するのか不安半分、楽しみ半分だった観劇前。
結論から言おう。今の星組だからこそ作れる現代的なクラシカルさ(逆語なのは承知)、カールの粗暴な笑いに隠された孤独、マルギットの残酷な無垢さ、悟りでも開いてるのかフロリアン、男らしさと水切りはトップなトビアス、愉快な水夫たち、巻き込まれ体質なカウフマン警部、ベティちゃんとシュザンヌちゃんの妹チームの可憐さ。そしてヴェロニカの懐の深さ。
みんな当て書きされたの?ウエクミ当て書きしたの?
ビア祭りはもう、星組。これでもかってほどの星組。わー、星組見てるわ!って感じ。
紅ゆずるというスターの個性が、ついつい取ってしまう笑いが、カールの哀しさを引き立たせる。最後の慟哭、ようやく出せた本音がマルギットに伝わってよかった。彼とカモメに幸せな未来がありますように。千秋楽で副組長に言い放った「黙れジジイ」最高でした。
何より、退団者に対する敬愛が深く伝わってきて、そりゃファンでなくとも泣くよ。
あんな笑顔で「ああ海よ聞こえるか 残し行く 友の歌 いつまでも聞いてやれ お前だけが」なんて歌われてしまったら。
銀橋の真ん中で「ダンケシェン」って叫んでしまわれたら。
「あばよ!」で鳴り止まない拍手に私まで泣いてしまったのだけど、実はその前の「諸君の安全な航海を祈る!」も大好きなセリフ。これからの星組の行く末が輝かしいものであるよう祈る七海さんの心境と重なって。
私も祈っている。星組の航海が幸せなものになりますように。七海さんの航海が輝かしいものになりますように。
星々の熱さを目撃した
前回観劇した時に体感5分のショーだというのは認識済み。今日はしっかり頭に焼き付けるんだ!と決めて臨んだエストレ。
開始1分で異変に気付く。詳細は後述するが、さゆみさんの声が出ていない。いつでも(良くも悪くも)朗らかに高らかに歌い上げる人なのに。
だがそこからが強かった。星組は強かった。
コーラスが熱い。ダンスがほとばしる。礼真琴を筆頭に「俺たちが全部カバーするぜおらあああ!」と言わんばかりの熱すぎるパフォーマンス。
あなたたちその辺の星じゃないよ…恒星だよ…発光してるよ!
こっちゃん、あなたはどこまでなんでもできる人なの!もうその心意気が伝わるだけで泣けてくる。キレッキレのダンスはあれだけで8800円の元を取った気分になれる満腹スター。ありがとうありがとう。冥土の土産にする。
星メドレーのかいちゃんは男前だった。星サギのかいちゃんは清らかだった。ホットスタッフのかいちゃんはセクシーだった。黒燕尾のかいちゃんは七海ひろきだった。
瀬稀さんの男役芸、星男ならではで大好き。
華鳥さんの歌声はいつでも鳥肌が立つ。星組に必要な存在だったと改めて思う。
天翔さん、細かいお芝居を大事にする人だなあと思っていました。
せおっち!!立派になって!!
ああ、見れてよかった。楽しかった。
紅ゆずるというトップスター
ショーの中詰。 掠れた声で叫んだ言葉に客席の空気が一瞬で変わった。
「皆さんこんな声で本当にごめんなさーい!」
言ってもいいんだ。よかった。そうだよね、声、出てないよね!?
芝居の最後まで朗々と歌い上げたさゆみさんの声が枯れている。声量が落ちている。
客席に静かに広がる違和感に、自らケリをつけた。しかも笑いに変えて。
「明らかにできる」という強みがあると思う。そして紅さんはその強みを120%発揮できる人だと思う。
最後の挨拶で芝居の時に喉をやってしまったこと、プロとして失格、本当に恥ずかしく情けない、お見苦しいところとお聞き苦しいところがあったことをお詫びする。涙をポロポロとこぼしながら掠れた声で頭を下げる姿に、もうこちとら涙腺はとっくに決壊しているのにまだ泣かすか!と思った。
ら。
「しかもこれ………撮っているんですよね?」
「なぜ千秋楽。よりによって、なぜ。昨日までは元気にやっておりました」
笑うわ!
退団者を気遣い、なんどもお詫びをする。だけど随所に笑いが生まれる。
囁き声の「皆さぁん」に反応する星組子の野太い「はああああああい!」(筆頭の爆音:礼真琴)
「星組はねぇ、本当に優しくて…温かいんです」
「私が袖にはけると皆会いに来てくれるんです。そして舞台に出ればお客様が見ていてくださる」
「本当に申し訳ないんですけど、恥ずかしいんですけど、すごく温かさを感じます」
飾らない言葉に泣き笑いが生まれて、こんな人だから組子は全員一丸となって支えたくなるんだなぁともう一回涙腺をガンガンに破壊された。
こんな人だから「ありのままの紅ゆずるさんを愛してまーす!フゥーーー!」なんてお兄様が叫ぶんだな。
さゆみさんがこれまで積み重ねて来た人徳と、実績と、信頼と、キャラクターが今日という日を成立させたんだと思う。さゆみさんにしかできなかった。あの中詰も、挨拶も。
反省なんて言われるまでもなく本人がし尽くしているだろう。ファンにできるのは心配と感謝だけ。次はきっとふた回りくらいパワーアップした姿が見られると信じている。
「退団者には元の声に戻ったら、ちゃんとおめでとうを言いに行きます。客席の皆さんにも………何ていうんだ?」
聞かせて欲しいのはいつもの開演アナウンス!「星組の紅ゆずるです」それで充分。
次の舞台も楽しみにしています。お大事に、ゆっくり休んでください。
Dearest お兄様!
私が知ってるかいちゃんは、宙組の下級生で、アザラシが大好きで、かっこよさと可愛さの間にいるような、少年が青年になる狭間の瞬間のようなスターだった。
スカステでキュウキュウ鳴いてファンの度肝を抜き、アザラシかいちゃんの名を不動のもの(?)にしていた。
いつの間にか星組でお兄様と呼ばれるようになり、バチコンウインクなんかを武器にして娘役と女性客と、あと男性客までメロメロにするようになり。最初は目を疑った。
誰よりも宝塚が好きで、宝塚を好きな人が好きで、ファンの人たちが大大大好きで。さゆみさんを心から尊敬して、下級生のことちゃんが大好きで、星男として唯一無二の居場所を築いて。
順風満帆ではなかったかもしれない。それでも七海ひろきというスターは宝塚に必要だった。心からそう思う。
彼女の挨拶が好きだ。人柄と愛が伝わる挨拶が好きだ。
「愛」なんて普通の人が言ったらクサくて聞いてられない。それがまっすぐ届くのは、彼女がまっすぐだからだろう。
間違いや抜けがたくさんあると思うが、自分がくじけそうになった時のお守りに、残しておく。終演後ぼんやりした記憶でメモしたものなので不完全だけど。
明日世界が終わっても悔いのない舞台を、と毎日思っていました
舞台は一人で戦うものだと思っていました
不器用な私は一人でもがき苦しみ、あるとき舞台に立つことが怖くなりました
そんな私を救ってくださったのはここにいる皆さんです
尊敬する上級生の方々、愛する同期、頼もしい下級生、宝塚を愛してくださるお客様
私より私を信じてくださるファンの皆様
その愛があったから私は変わることができました
私は一人じゃなかった
宝塚に恋をした私は、皆さんに愛を教えていただきました
出会えた全ての方々を心から愛しています
今、とても充実した気持ちで立っています
この瞬間、宝塚男役の七海ひろきは卒業します
素晴らしい宝塚人生でした
これからは変わらないために変わり続けていきたいと思います
16年間、七海ひろきを育て、支えてくださった皆様
心からの感謝をこめて、本当にありがとうございました
親愛なるお兄様、あなたの16年間に心からの敬意を表します。
男役・七海ひろきに出会えて幸せでした。たくさんの夢をありがとう。
ご卒業おめでとうございます。どうかお幸せに。
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ビールの泡に浮かんで消えます