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中上、エンドレス、環状線

冷房のきいた山手線の車内でつり革につかまり、クソ暑そうな外の風景を見ていた。そして今、文学は、とゆうか、中上健次は、果たしてどの程度必要とされているのだろうか、とゆう事を考えてみる。大塚駅から池袋駅までの間、わずか五分ほどの時間である。普段なら歩く距離だが、会社から交通費が出るので少々贅沢をしてみたのだ。

電車は池袋駅につき、おれは切符を入れ、改札を出る。人ごみの中、サンシャイン方面と書かれた出口に向かい、階段をのぼる。駅から外に出ると陽がまぶしく、おれは目を細めた。煙草を口にくわえ、それにしてもさっきから尻が痒いな、と思ったもので、おれは右手を尻にくいこませ、軽く穴周辺を揉んでみる。

そして、煙草に火をつけながら、うぅむ、今の時代、文学、いや、中上健次なんて、別に誰からも必要とされていないのかもナ、なんてココロの中でつぶやきつつ、鼻から煙を出した。歩きタバコ禁止と書かれた看板が、目にうつる。おれは架空の存在に向け、謝罪した。

みなさん、おれは禁止されているにも関わらず、この場所で煙草に火をつけてしまいました。お詫びといってはなんですが、煙草の煙と同じか或いはそれ以上に猛毒を孕んだ中上健次の数ある作品の中から、おれが特におすすめのやつを紹介させて頂きやす。今回は中上健次の作品を読んだ事のない方にむけての紹介です。

もうめんどくさい、みんな死んでしまえ俺も含めて、と思っている十代から二十代前半の方

ひなびた青春も終わり、二十代半ばの方

恥ずかしい事は言えなくなった、だがしかし……二十代後半から三十代の方

二口、三口と煙を吸い込み、鼻から吐き出しながらおれは歩く。人いきれ。地面が太陽の光を照り返し、上から下から、内部からおれは熱せられる。電車の中で冷えた体は太陽によって、そして怠惰な暮らしによって冷え切った魂は中上健次を想う事によって、じわじわと熱くなる。それにしても尻が痒い。おれは道路の端に立ち止まり、右手を尻にくいこませ、再び穴周辺を回し揉む。その後煙草の火を指でつまみ消し、先端を整える。長めのシケモクを作り路肩にそっと置いた。

シケモクとは……と考えながら、おれは歩きだした。信号が青から黄色に変わる。シケモクとは、即ち文学であり、中上健次である。横断歩道の中途で、左右からクラクションが鳴る。思考は中断され、おれは駆け足になる。いつの間にか四つ足になったおれは、町を駆け回る野良犬であった。陽は容赦なく照り返し、野良犬の皮膚は焼けただれる。ビルディングは発酵し、その後の爆発を予期させる。古の狼達は獄中で微笑むだろう。死んだ永山。サンドイッチマン。ビートニクス。おれやおまえ、或いは野良犬のための文学。清潔に掃き清められる前に、拾え。




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