少し前にはてブで知って興味を持った美術展「記録をひらく 記憶をつむぐ」を見に東京国立近代美術館へ行ってきた。戦争美術の展示。内容は以下に詳しい。
チラシも図録もなくひっそり開かれていると見えたせいで憶測を呼んだようだが主催側は予算の都合と明言している。
お昼頃到着。天気は曇り、予報だと降水確率10%、気温は30度前半。これくらいの気候なら徒歩で外出しても耐えられるかなと思って出てきたけど、自宅から遠いため到着したころには疲れていた。電車は疲れる(車も疲れる)。この美術館へ来たのは初めて。

客入りは都心の美術館にしては普通かちょっと空いてるくらい。絵の前に常に2,3人いるって程度。順路に沿って行列になったり絵の前に人だかりができて後頭部越しにしか見られない、というほどではなかった。なのでゆっくり見られた。キャプションもじっくり読めた。すぐ隣に立たれると気になっちゃって集中できないので今日くらいの人出が俺の限界。
大半の展示は撮影可。一部撮影不可。
8章に分かれて展示。2章「アジアへの/からのまなざし」、3章「戦場のスペクタクル」、4章「神話の生成」、7章「よみがえる過去との対話」が見応えあった。満州事変から太平洋戦争までの加害と被害、プロパガンダのための美化。メディアも戦争の片棒を担いで戦争賛美をやっていた。
以下、印象的だった作品。

猪熊弦一郎「長江埠の子供達」。共栄だ、とやって来た日本人に対する現地の子供たちの冷ややかな視線。瞳がなくて目が真っ黒なのでなおそう感じる。目の黒さと対照的な全体的に明るい色調。

フェルナンド・アモルソロ「バターンの少女」。フィリピンの画家。1942年、死の行進につながるバターン半島の戦闘。キリスト教の図像学的に描かれていて(この写真だと分かりづらいが)少女の頭部が輝いている。

藤田嗣治「哈爾哈河畔之戦闘」。幅4メートル。背景に地平線、手前に匍匐前進する日本兵がパノラマ効果を出していて迫力があった。キャプションによると発注者は予備役中将、ノモンハンで戦死した部下の鎮魂のため藤田に制作を依頼した。

田村孝之介「佐野部隊長還らざる大野挺身隊と訣別す」。神々しく描きすぎ感。

『地獄の黙示録』さながら、「ワルキューレの騎行」をBGMに落下傘部隊が降下する動画が流れていた。


藤田嗣治「アッツ島玉砕」。メディア・ミックス戦略による戦意高揚プロパガンダ。これを熱狂的に受け入れるってどんな精神状態よ。怖すぎる。


特攻の原型、爆弾三勇士。これが美談にされちゃうんだもんなあ。特攻、パイロット一人育成するのにどれだけコストがかかるか。機体とは比較にならない損失。藤原彰曰く、旧日本軍は「生命の濫費で勝利を贖」おうとする。

宮本三郎「萬朶隊比島沖に奮戦す」。ロマン主義絵画のように描かれる特攻。以前、敵艦に戦闘機が特攻するシーンとそれを体験したアメリカ兵のコメントを「映像の世紀 第5集」で見た。沖縄戦の悲惨なシーンや広島と長崎へ原爆を投下する様子も収められている。貴重なアーカイブ。

浜田知明「初年兵哀歌(歩哨)」。夜、歩哨に立つ兵士の前に展開する死のイメージ。吊るされる人間、殺される馬。人間だけじゃなく何万頭もの馬も戦争の犠牲になった。

浜田知明「仮標」。作者は21歳で応召し翌年中国大陸へ派遣された。実際に目にしたのだろう。自分の母方の祖父母も満州にいた。
撮影不可の、広島平和祈念資料館から貸し出された一般市民による被爆直後の広島の記憶を描いた絵の数々がこの美術展でもっとも印象的だった。絵と一緒に文章も書かれていて、30年経っても倒木の下で呻いていた人の呻き声が忘れられない、赤ん坊を抱いて片足を上げた走っている姿のまま炭化していた女性がいた、幼いわが子を埋葬し自分もすぐにそっちへ行くと言いながら今日まで生きてしまった、といった物凄い内容のものばかりで、その体験の重さに言葉を失う。戦争って本当、最悪だな。最悪で最低だな。47歳にもなって、そうとしか言いようがない。言葉が出てこない。
かなりじっくり見て滞在2時間。見終わって疲れた。そのあと、せっかく来たんだし企画展のチケットで見られるからと常設展へも回ったんだけど、疲れのせいで流し見になった。美術館で作品を見るのも体力が要る。

3階だったか、このフロアは照明が暗めの瞑想的空間でよかった。作品は大竹伸朗のスナックのドアが面白かった(写真撮り忘れた)。

外に出ると来たときとは変わって空は晴れていた。目の前にある皇居外苑を少し散歩して将門塚でも見てくか、と思い歩き始めるも暑すぎてすぐに後悔。それにしても東京は人が多い。外国人観光客も大勢。都内に来たの、たぶん今年の1月以来。久々に体験する人の多さだった。それでも大手町周辺は新宿・渋谷・池袋と比較したら全然少ない方だろう。
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すぐに予定変更し、将門塚は諦め、東京駅方面へ向かう。丸ビルのあたりでようやく日陰に入れた。このへんはお洒落なお店ばかり並んでるけど賃料いくらなんだろうとか考えてしまう。

遅い昼飯それとも早い夕飯をとろうとsuageへ行く。時間が時間だから空いていた。先日ジビエを食べた流れ(?)で生ラムのスープカレーを注文。旨し。ラム肉、かなり好き。前回このお店に来たのは4年前。まだコロナ禍の真っ最中だった。
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東京駅へ。映画『あのこは貴族』の終盤で水原希子と山下リオが東京駅を眺めるシーンを撮ったのはどこか、東京駅へ来るたび、ついきょろきょろと見回して探してしまう。ビームスが入ってるビルからかな。
当初の予定ではこのあと日暮里へ行って全生庵でやっている幽霊画展にも行くつもりだった。が、時間的にも体力的にも不可能と判断した。なのでそのまま山手線に乗って帰宅。車内は思ったほど混雑しておらず座れたのでよかった。歩数10000歩少々。