
今週のお題「10年前の自分」
2013年に今の会社に期間3年の契約社員として入社した。
2015年に試験を受けて正社員登用された。
当時はまだリーマンショックと東日本大震災の影響で仕事の口は少なかった。契約社員の面接にこぎつけるだけでも狭き門で、そこからさらに正社員登用される確率は20分の1とも30分の1とも言われた。俺が特別優秀だったわけじゃない。ただ運がよかっただけだ。同時期に入社した人たちは2015年末に退職していった。
転職5回か6回目、それまでの人生で社保なしやタイムカードなしや週休1日の連休なしや残業80時間オーバーが常態化しているブラック企業にしか勤めたことがなかった俺にとって初めての大企業だった。働いている人たちは基本穏やかで余裕が感じられ*1、福利厚生が充実していて、毎年昇給があり、コンプライアンス遵守の空気があった。ロッカールームで財布が盗まれる心配をせずに働けるのは天国だ、と思った。
入社前まで1年以上無職だったので金がなかった。全財産7000円の実家暮らし。30代にして親の扶養に入り、国民年金も払ってもらっていた。恥の極みである。すでに結婚して子を持ち家を購入した同級生もいたというのに。
入社後、3年契約で終わるものと思っていたので未来に備えて給料から定額で貯金を始めた。それまではあればあるだけ金を使ってしまうタイプだった。いざなくなってみて、生きていく上で金がないのがどれほど恐ろしいことか、身をもって知った。コツコツ頑張って1年間で100万円貯めた。12月の給料日、通帳の残高が7桁になったのを見たときは嬉しかった。
平日は仕事、土日祝は休み。贅沢しなければ生活するのに不足はない給与。GW、夏季、年末年始は長期休暇。氷河期世代でブラック企業しか知らなかった俺がようやく手に入れた、憧れの「普通の生活」。いいものだ、と思った。多少の嫌な人や嫌なこともこの生活を維持できるなら耐えられた。俺みたいなブラック人材が、今後の人生で今以上の会社に転職できるとはちょっと思えない。
あれから10年(以上)が経過した。出世はできなかったけれど40代後半の今も同じ会社にいる。その間、何度も異動があったので現在は入社したときとは全然違う業務をしている。結局結婚することも家を買うこともなく、老いた両親と実家で暮らしている。貯金はある程度まとまった額になったところで生活防衛資金とし、2017年からインデックス投資を始めた。少しずつ積立額を増やし、コロナ禍で買い増した結果、今ではまとまった金額になっている。これを老後資金に充てるつもりだ。退職金もあるし、健康なひとりものとして質素に生きるなら金の心配はもうなくなった。両親がいなくなったら一人には広すぎる今の家は手放して市中心部の安い中古マンションを買い住み潰そうと考えている。
30代で今の会社に入ってようやく人生が始まった、という気がする。それまでは地に足がついておらず、ふらふらしていた。同じ職場の一回り以上も若い人たちと話すと、みんな堅実でしっかりしていて、同じ年齢だった頃の自分の幼稚さが情けなくなる。どうすれば俺も彼らみたく若い頃から現実的に生きられたんだろう。20代で結婚して30代で家を買って真面目に仕事を頑張っている彼らが人生二周目に見える。
俺個人の資質のみならず経済状況や社会の空気も影響した結果の今の人生という気もするが。俺が社会人になりたての2000年代前半頃は、多少劣悪な環境だったとしても「働けるだけありがたいと思え」という空気があった。別の時代に生まれていたらまた別の人生があったのかもしれない。でも今の知識と経験を持って、なろうみたく転生できるとしてもそうしたいとは思わない。人生をやり直したいなんて思わない。やり直せないからこそ尊いわけで、人生は一度きりで十分。この人生でもう十分。
hayasinonakanozou.hatenablog.com
hayasinonakanozou.hatenablog.com
*1:現場のベテランは違っていたが