今、牛の歩みで『指輪物語』を読んでいる。
この小説ではエルフが人間より上位の半神的存在として登場する。映画版もそんな感じだった。
エルフ。令和の今なら有名なキャラはフリーレンやマルシルか。どちらも長命(不死?)であることがキャラの行動原理と密接に関わっている。
中年の俺にとって思い入れあるエルフはディードリットである。長い耳、切れ長の目、華奢な体格。ディードリットは漫画やアニメにおけるエルフの原型的キャラクターだろう。後続キャラへの影響は多大なものがある。
中学から高校にかけて『ロードス島戦記』を1巻から7巻まで読んだ。今ではストーリーはほとんど記憶に残っていない。ただ、黒でも白でもない灰色の魔女の存在が、善悪で割り切れるほど世の中は単純じゃないと当時の自分に教えてくれたキャラクターとして印象に残っている。カーラに比べると原作のディードリットはそこまで魅力的ではなかったような気がする。
『ロードス』はOVA版がすごかった。結城信輝の描く登場キャラクターは基本的にみんな美形。ディードリットはもちろん、レイリアもシーリスも美しい。そして今見ても絵に古さがない。OVA版も中学の夏休みにテレビで放映しているのを見たんだったと思う。VHSに録画してその後何度も見返した。結城信輝の絵と冬馬由美の声によるディードリットがたぶん俺の初恋だった。
はてな民の初恋二次元キャラが知りたい
即答できる。ロードス島戦記のディードリット。今も変わらず好き。
2022/09/27 17:00
『ロードス』の原作を読み、テレビでOVA版を見たのと同じ頃、ゲームボーイで『ウィザードリィ外伝 女王の受難』をプレイしていた。ウィザードリィは少ない情報量が却ってプレイヤーの想像力を刺激するゲームだった。俺の名を付けられたキャラクターは人間のサムライ。パートナーはエルフのロード。ストーリーボスを倒したあともレベル上げとアイテム収集と妄想に耽るため、学校から帰ると二人きりで迷宮最深部を何時間も探索した。
【追記あり】wiz復刻について、おれと外伝3の話。 - てのひらを、かえして
バグのせいで前衛の武器が弱かったけど外伝1ハマった。育て上げた人間のサムライ(俺) とエルフのロード(ヒロイン)の二人だけで探索してた。妄想が捗った。
2024/05/14 02:19
家のすぐ近所の本屋で『ウィザードリィマガジン』というムックを見かけて購入したのも同じ頃。
1000円が当時の自分にはかなりの高額に思え、勇気を出して買った記憶がある*1。たしかこの本の中に各種族の解説パートがあって、そこに書かれていたエルフについての「彼らは最初の日の出とともに出現した光り輝く種族であった」という文章は30年以上が経過しとっくに本自体は手元にない今でも思い出すことができる。
(2025/1/27追記:中古で入手して確認したところこの記述はなかった。攻略本だったかもしれない)
この本でベニー松山を知ってその小説や、石垣環のコミカライズを読んだりした。
当時の俺はロードスとWizを行ったり来たりしていた。今ではすっかり失われてしまった感があるけれど、中世西欧的ファンタジーに培われた素養が俺という人間の根っこにあるのかもしれない。
話が脱線してしまった。ディードリットの話だった。
『指輪物語』を読みながらwikiを読んで、エルフ、ドワーフ、ホビット、あるいはミスリルなんて言葉を目にすると妙に昔のことが思い出されてそっち方面のページも閲覧してしまう。そうしているうちにOVA版『ロードス島戦記』がまた見たくなり、けれども有料チャンネルしかないので、だったらいっそ、と思いきってブルーレイBOXをAmazonで購入した。深夜だった。深夜は怖い。へんなテンションになるときがある。
買ったら満足してしまって物が届いても見ないんじゃないか、と自ら怪しんだが、案に相違して届くなりその日のうちに数話視聴し、まともに見るのは30年ぶりにも関わらずシーンやセリフを覚えていたりして、若い頃情操に影響を与えた作品とはこうも根深く己の中に残っているものかと感心しながら、美しい絵に魅せられて結局毎日仕事から帰ると視聴、1週間とかからず全13話を見終えた。
「Adesso e Fortuna~炎と永遠~」が流れる中、パーンとディードが馬に跨って彼方を眺めるオープニング映像を見た瞬間、中学の夏休みの空気感がフラッシュバックして胸が切なくなった。開いたままの窓、風に揺れるレースのカーテン越しに差しこむ日差し、うっすら焼けて黄色くなった畳。音楽の喚起力ってすごい。あのときからもう30年の月日が流れたのだ。エルフだったらほんの僅かな時間に過ぎないだろうが人間にとっては違う。そして俺はあの頃からほとんど成長していない気がする。
OVAのストーリーは端折りすぎていて原作を知らない人が見たら意味不明かもしれない。原作を知っている俺は原作を知らない人の気持ちは知りようがないからわからない。正直見ていてこれはちょっとないでしょ、と思ったりしつつ、しかしとにかくディードっすよ。本当に美しい。本当に可愛い。迷宮で見つけた首飾りをパーンに見せるシーン、宮廷でドレスを着てパーンと踊るシーン、夜の歩廊でリュートを弾くシーン、パーンに送られた白い薔薇の香りを嗅ぐシーン、そしてラストの「わたしに黙って行っちゃうの?」の微笑…。
尊すぎる。
すっかりディード熱が再燃してしまった。
かつて好きになった生身の相手は名前は覚えていても顔はすっかりおぼろげで声も思い出せない。でも2Dの相手ならディスクさえあればいつでも会える。そして相手の記憶は霞むどころかリマスターされて当時を凌ぐ鮮明さで現れてくれる。
このキャラデザインすごくない? 30年前だよ? 時代を超越した美しさだよね?
等々熱く女の人に語っていたら、相手はブルーレイのパッケージを見て、
女「うん、でも…」
俺「何?」
女「男いるじゃん(パーンを指して)」
いやあ、その指摘は的外れですよ。俺はべつにディードとどうこうなりたいとかしたいとかそんなこと考えてないんですよ。ただただディードを見ていたいんですよ。そしてディードが幸せならそれでいいんですよ。パーンは男から見たっていい男じゃないですか。パーンといることがディードの幸せならそうしていてほしいんですよ。ディードが幸せなら俺も幸せなんですから。それ以上のことなんて望んでないですよ。
…と長広舌を振るった。心の中で。
何かを、誰かを好きになる。
その好きな気持ちがやがて時間とともに薄れ、失われてしまっても、時を隔てて再会すれば懐かしさや喜びを覚えることもあるだろう。そして何かを、誰かを好きになる機会も、再会する機会も、長く生きていればいるほど与えられる人生の恵みなのだ。きっと。
だから生きていきましょう。
生きて人生の恵みを味わいましょう。

*1:今とは隔世の感がある