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『あなたの人生の物語』

 

かつてことある毎にSFは苦手と言っていた私に、複数の読友さんが勧めてくださったのがテッド・チャンで、購入履歴をみるとこの本をKindle沼に沈めたのは2017年だという。
以来、幾度となく沼の底をさらいはしたものの、ついつい後回しにし続けてきた。

そんな私がようやくこの本を読み始めたのは、書評サイト本が好き!で開催されている早川書房創立80周年読書会「ハヤカワ文庫の80冊」を読もう!の対象本リストにこの本があがっていたからだ。
文庫本ではなくKindle版であることはまあご愛敬。

収録内容は小説8点、その他1点の以下の通り
・「バビロンの塔」(The of Babylon, 1990)浅倉久志
・「理解」(Understand, 1991)公手成幸 訳
・「ゼロで割る」(Division by Zero, 1991)浅倉久志
・「あなたの人生の物語」(Story of Your Life, 1998)公手成幸 訳
・「七十二文字」(Seventy-Two Letters, 2000)嶋田洋一 訳
・「人類科学の進化」(The Evolution of Human Science, 2000)古沢嘉通
・「地獄とは神の不在なり」(Hell Is the Absence of God, 2001)古沢嘉通
・「顔の美醜について ― ドキュメンタリー」(Liking What You See : A Documentary, 2002)浅倉久志
・「作品覚え書き」(Story Note)古沢嘉通

ちなみにkindle版には、文庫版にあるという山岸真氏による解説は収録されていなかった。

正直、難しいと感じる作品もあったが、全体を通してひと昔前のSF作品にありがちなジェンダーストレスを感じることもなく、面白く読むことができた。
中でも印象的だったのは、「バビロンの塔」「あなたの人生の物語」「顔の美醜について ― ドキュメンタリー」の3作。

巻頭作「バビロンの塔」は、言わずと知れた旧約聖書における神の領域に挑んだと人びとを象徴するバビルの塔をモチーフにしていて、天の丸天井の向こうを知りたいという人々の欲求とそれがもたらす結果を作業に携わる職人にスポットを当てて描いた作品だ。

表題作「あなたの人生の物語」は、異星人とコミュニケーションを取ろうとする言語学者が語り手。
入り乱れる時制に混乱しながらも、人が言葉を交わすことで互いを知り、言葉によって様々な事象を認識しているのだとすれば、全く異質の言語を司る知的生命体と接触したらどうなるのか、という話だと思いながら読み進め、壮大なテーマが個人的な出来事に集約されていく様と、個人的な出来事を通して解き明かされていくあれこれに圧倒される。

「顔の美醜について ― ドキュメンタリー」で描かれるのは、容姿による差別をなくすために美醜を認識する機能を抑制するテクノロジー“美醜失認処置(カリー)”が開発された世界。
この処置をめぐって賛成派、反対派の様々な意見がドキュメンタリータッチで紹介されていく。
“差別はいけない” は当たり前の前提としても、“差別のない社会”が科学技術によって強制的に実現されたらどうなるのか。
様々な差別がある中で“美醜”にスポットを当てたからこその滑稽さも相まって、あれこれと考えさせられながらも面白おかしく読めてしまった。

収録されているいずれの作品にも共通しているのは、“これまで当たり前のこととして抱いていた認識の変容をせまられたならば…” という問題意識であるようにも思われて、面白いだけじゃないその奥深さに恐れ入った。




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