7月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:2456
ナイス数:241
帰れない探偵の感想
「今から十年くらいあとの話」こんな書き出しで始まる物語。主人公兼語り手の「わたし」は「世界探偵委員会連盟」の養成学校を卒業した探偵だなのだが、読み進めても、謎解きが必要な怪事件や殺人事件などは起きない。それでもこの探偵から目が離せずない。「今から十年ぐらいあと」に、世界は、自分は、どうなっているのかを考えずにはいられない本だった。なにもかもが不確かな中で、何をよりどころに「自分」をどう定義するのかを問うような物語でもあった。足元がぐらりと揺れるような、不思議な読み心地の本だった。
読了日:07月28日 著者:柴崎 友香
八月の母 (角川文庫)の感想
#角川文庫夏フェア2025 本。著者の作品を読むのはこれが初めてではあるが、この作品が実際にあった事件に着想を得ていることや数世代にわたる「母」を取り上げていることもおぼろげながら知ってはいた。すごく読みやすい文章で、ぐいぐい引っ張る筆力もあるのだが、その中身は、無責任極まりない大人達によるネグレクトにはじまって、精神的にも肉体的にも振るわれ続ける激しい暴力、繰り返される負の連鎖と、息苦しいほどの閉塞感で…。小説としては巧いともすごいとも思うのだが、精神的にはとてもしんどい本だった。
読了日:07月21日 著者:早見 和真
レス・ザン・ワン――詩について 詩人について 自分についての感想
1987年にノーベル文学賞を受賞したヨシフ・ブロツキー(1940-1996)が1972年にソ連からアメリカに亡命した後に書いたエッセイ、書評、序文、講演禄、講義録などを集めた最初のエッセイ集Less Than One(1986年)から紙幅の都合で割愛された1篇を除く17篇を翻訳収録したエッセイ集。解題、訳者あとがきを含めると550頁とボリュームのある1冊で、正直読み切れるかどうか自信がなかったが、読み始めたら面白くて、どっさりメモを取ってもまだとり足らない。この先、何度も読み返すことになりそうだ。
読了日:07月17日 著者:
この夏の星を見る 下 (角川文庫)の感想
中高生を中心とした群像劇で、コロナ禍だからこその葛藤以外にも、友達や教師たちとの関係など、丁寧に描かれていて、胸を打つシーンも多い。子どもたちだけでなく、むしろ大人たちの方が取り乱し途方に暮れたあの頃をふりかえり、自分の周りに起きたあれこれをも思い出しながら、読み進める。新聞連載当時とは状況が変わった今だからこそ、持てる感想もあるだろう。数年後、数十年後にこの本を読む人たちはどんな感想を持つのだろう、そのあたりも気になるところだ。
読了日:07月14日 著者:辻村 深月
この夏の星を見る 上 (角川文庫)の感想
#角川文庫夏フェア2025 の1冊。2021年から2022年にかけて新聞に掲載された連載小説。元々あった若い人を描く連載小説をという依頼に、いざ取り組もうという段になってのコロナ禍で、何をどう描くか著者も悩んだというが、新聞小説だけあって青春の群像劇にもコロナは避けて通れなかったということなのだろう。物語は新型コロナウイルス感染症が世界的に流行したことに伴い、感染予防のため、小中高の学校は全国一斉休校の措置がとられた2020年春からはじまった。
読了日:07月14日 著者:辻村 深月
毎日読みますの感想
『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』の著者による読書エッセイ。こういうのを読むとまた読みたい本をどっさり増やしてしまう危険もあるので、なるべく近寄らないようにしようと思ってはいるのだけれど、さわりだけのつもりで手に取って捕まった。あれもこれもと、本好きあるあるにあふれた本なのだ。たとえば、こんなくだりがある。“書評は、読むべき本と読まなくてもいい本を選り分ける役割をしてくれる。誰かが丁寧に綴った書評を読むと、わたしたちは二つの選択肢を手にすることになる。その本を読むか、読まないか。”…これは!!…ねえ?
読了日:07月07日 著者:ファン・ボルム
丸の内魔法少女ミラクリーナ (角川文庫)の感想
#角川文庫夏フェア2025 表題作は日常のしんどいことも魔法少女設定でなんとか乗り切っているOLが語り手。親友の恋人であるモラハラ男と魔法少女ごっこをするはめになったリナ。ノリの良い軽妙な語り口で展開し、痛烈な皮肉で締めくくられる物語に、巧いなあと思いはするが、問題のモラハラ男があまりにクズすぎて後味が悪い。こんな調子で魔法少女の連作が続くのかと思いきや、さにあらず。収録作品4篇のどれを読んでも何だか妙にむずむずする。そのむずむず感は、収録作品のトリをつとめる「変容」でピークに…!
読了日:07月03日 著者:村田 沙耶香
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