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『八月の母』

 

八月は、母の匂いがする。
 何年もそのことに気づかないフリをしていた。自分が気づかないフリをしていたのだということを、ある日、私は不意に知らされた。


こんなプロローグから始まるのは、母と娘の物語だ。
その日、難産の末にようやく抱くことができた我が子の匂いをかいだとき、彼女はさとったのだった。
幸せそうな家庭を築きながらもなぜか不穏な雰囲気を帯びた母になったばかりの女性。
その正体が明かされないままにはじまる物語は、1977年8月から年代をおって、母親の呪縛から逃れられない、数世代の母娘の人生を語りあげる。

愛媛県伊予市
幼い頃からエリカは瀬戸内の薙いだ海に面したこの街から「いつか必ず出ていきたい」と思っていた。
けれどそのチャンスが巡ってきたかと思われるたびに、母・美智子が目の前に立ち塞がる。
そんなエリカもやがて、自身も母となる。
子どもたちのたまり場となった母子の自宅である団地の一室。
一見それはエリカ自身が子どもの頃には持てなかった居場所を、自分の子どもやその友達の子どもたちにあたえてやっているかのようにも思えたが…。

角川文庫夏フェア2025をきっかけに手にした本。
著者の作品を読むのはこれが初めてではあるが、この作品に関して言えば書評サイトに高評価の先行レビューがいくつもあって、この作品が実際にあった事件に着想を得ていることや数世代にわたる「母」を取り上げていることもおぼろげながら知ってはいた。

評判通りすごく読みやすい文章で、ぐいぐい引っ張る筆力もあるのだが、その中身は、無責任極まりない大人達によるネグレクトにはじまって、精神的にも肉体的にも振るわれ続ける激しい暴力、繰り返される負の連鎖と、息苦しいほどの閉塞感で…。

大人になりきれないまま母となった女たちの痛々しい姿を目の当たりにしながら、「母性」について考えていたつもりだったが…。

「納得なんてせんでええ。もう面倒くさいんや。やり合って、叩きのめして、一時は溜飲が下がったとしても、結局最後はこっちが泣かされるんよ。もうそういうふうにできとんのよ。男と女って。こいつらは逃げられるんやもん。勝手に欲情して、出すもん出したら、あとはもう知らん顔できる生き物なんよ。重いもん背負わされるんはいつも女の方や。そんなん最初からフェアやない。フェアやないケンカならせん方がマシ。何か間違ったこと言うとる?」



女が自分の孫と同世代の娘に言い放った言葉に傷つきながら、なにもかも女や母のせいにする身勝手な男たちのことにも思いをはせる。

まともな女は、まともな母親はいないのか、と嘆くだけでなく、まともな男は、まともな父親はと問うべきなのだろう。

そんなどうしようもない男を育てたのもまた母親ではないかなどという、どこからか聞こえてきそうな馬鹿げた言い草はもうたくさんだ。

小説としては、巧いと思うしすごいとも思う。

だがしかし、突きつけれられるあれこれに、読んでいる間も読み終えた後もとてもやるせなく、猛烈に苛立たしく、どうにももどかしい思いが拭えないでいる。




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