北海道を舞台にした5つの短編小説と4つのエッセイを収録したアンソロジー。
集英社文庫編集部が編纂したというだけあって、収録されているのは初出は雑誌や単行本で、その後集英社文庫に収録されている作品。
9人の書き手のうち、5人が北海道出身だ。
巻頭に収録された「鉄道員(ぽっぽや)」は再読だったが、結末を知っていても思わずうるっとしてしまう。
雪かきネタに思わず共感してしまう北大路公子さんのものを始め、エッセイでは繰り出される北海道ネタに思わず笑ってしまう一方、小説の方はいずれも短篇とは思えないずしりと重く、読み応えもたっぷり。
アンソロジーだからどこから読んでもいいわけだけれど、収録順に小説とエッセイを交互に読んでいくと、小説が重苦しい分、エッセイで気分を切り替える意図があるのかも…と思うぐらい落差がはげしく、一冊通して読むと何とも不思議な読み心地ではあった。
「頸、冷える」を読みながら以前ドライブしている最中にミンクの養殖場跡の廃屋を見かけたことを思い出してみたり、時々繰り出される北海道弁に親しみを覚えたりする一方で、なるほど直木賞を受賞した『ホテルローヤル』ってこういう話なのか、馳星周がノワール系ってそういうことか、専業作家になった経緯ってこれ渡辺淳一の自伝的小説なのか!と今さらながら驚いてみたり、いろんな“はじめて”もあってなかなか面白かった。
この本自体の売上はさておき、こんな風に文庫から読みどころを抜き出して紹介してしまったら、元の文庫は売れなくなるのでは?と心配しないでもなかったが、巻末の出典を確認したら、いずれも名の知れたタイトルの本だったので、それぞれのファンやアンテナの高い読者は既に読んでいることを前提に、若い読者や私のように売れ筋を遠巻きにしていたひねくれ者など、新たな読者層を獲得するためのデモンストレーションの意味もあるのかもしれない。
<収録作品>■小説/○エッセイ
■「鉄道員(ぽっぽや)」浅田 次郎
○「ニッポンぶらり旅 釧路」 太田 和彦
■「頸、冷える」河﨑 秋子
○「あったまきちゃう!/札幌冬の陣」北大路 公子
■「本日開店」桜木 紫乃
○「函館「ラッキーピエロ」のハンバーガー」堂場 瞬一
■「雪は降る」馳 星周
○「旅すれば 乳濃いし」原田 マハ
■「四月の風見鶏」渡辺 淳一