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『小説伊勢物語 業平』

 

むかし、お(を)とこありけり
読んだことがなかったとしても誰もが知っているこのフレーズ。
伊勢物語』は全百二十五段、
世間で語り伝えられている名歌が詠まれた事情を語る「歌物語」だ。


源氏物語』ほどではないが、『伊勢物語』にも現代語訳はいくつもあって、
私も原典の他に川上弘美訳を読みはしたのだけれど、
登場する人々が匿名であることも多く、
時系列に並んでいるわけでもない上、歌を読み下すための知識も想像力も必要で、
いちいち注釈を参照しなければ、とても読み通すことが出来なかった。

そんな『伊勢物語』が歌物語の主役と目される
在原業平の生涯という小説として書き直されることで、
歌も人も活き活きと動き出す。

暗闇に月明かり、虫の声、楽の音に木々のざわめき、
五感に訴える日本語の美しさが、
上質のナレーションのような調べを奏でる。

平城天皇の息子・阿保親王を父に、桓武天皇の娘・伊都内親王を母にもつ、
高貴な血筋に生まれながら、
臣籍降下され在原姓を名乗る業平のかかえる複雑な事情と心情。

歌の才に恵まれた恋多き男の10代から50代にわたる恋愛遍歴。

さすがに源氏物語光源氏のモデルの一人と目されるだけあって、
裳着も終えぬ女子を口説いてみたり、
誰それがご執心との噂をきけば、どのような女人なのかと訪ねてみたり、
藤原一門が帝に添わせるために大事に育てた掌中の珠と駆け落ちし
伊勢の斎宮との禁断の恋まで。

後先考えろよ!と説教の一つや二つしたくなるものの、なぜだか全く憎めない。

伊勢物語』は『源氏物語』に大きな影響を与えた作品と言われているが、
この小説は、源氏物語から大きな影響を受けているようで、
先日再読し終えたばかりの源氏物語のあの場面この場面がオーバーラップして、
そんなところも面白い。

なによりも男の劣情や家門の思惑に翻弄されながらも
自分らしくあろうとする女たちの生き様が小気味よく、
そんな女たちに刺激を受けて、
遅々たる歩みではあるものの少しずつ成長の兆しを見せる男だからこそ
あきれつつも、憎めないのかもしれない。

むかしおとこありけり。

もちろんそこには、おとこだけでなく、おんなもいた。




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