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『肉体の悪魔』

 

 僕はさまざまな非難を受けることになるだろう。でも、どうすればいい?戦争の始まる何か月か前に十二歳だったことが、僕の落ち度だとでもいうのだろうか?


こんな書き出して始まるのは、レーモン・ラディゲ(1903-1923)の『肉体の悪魔』。
二十歳の若さで病死したラディゲが十代半ばからの数年間で書き上げた作品だ。

邦題からして“破廉恥”な香りがただようこのフランス文学の存在は前々から知ってはいたのだけれど、“少年と人妻の禁断の恋”というイメージがあって長いこと食指が動かなかった。
書評サイトの先行レビューの影響で衝動的にポチッとしたのが九年ほど前で、以来我がKindle沼に沈んでいたこの作品を今回沼の底からひきあげさせたのは、“やりなおし世界文学”コミュニティの影響だった。


十五歳の少年(僕)は、十九歳のマルトと出会う。
マルトの婚約者ジャックは従軍していて、結婚の予定が延び延びになっていた。
戦場から二週間の休みをもらったジャックとマルトが結婚してからも、僕とマルトの親密な付き合いは途絶えること無く、やがて肉体関係をもつようになる。
僕は学校を中退し、家族の忠告を無視して夜な夜な家を抜け出して、マルトの新居に通い詰めるようになり、人々の噂と非難の的になっていく。
周り中が敵のように思える二人は、互いに傷つけ合いながらも、ますます二人だけの世界にのめり込んでいくのだった。

訳者の解説によれば、この物語には、十四歳の時に婚約者が第一次世界大戦で従軍しているという十歳も年上の女性と恋に落ちたという、作家の初恋が投影されているのだとか。

古今東西“若者と人妻のひとときの恋物語”ならありふれているといえなくもないし、コレット(1873-1954)の 『青い麦』のような年上の女性に恋の手ほどきをうける物語は、フランス文学の系譜なのかもなどと思いながら読み始めたのだが、当初思っていた以上に十九歳のマルトが初々しく、幼いといってもいいほどで、残酷なまでに激しい少年の欲求に翻弄される様が、何とも痛々しい。

社会が、世界が、先の見えない不安や死や破滅がすぐそばに横たわる戦争という狂気の中にあった「特別」な期間。

あれは、四年間の長い夏休みだった。

そう振り返る僕の言葉に、戦争が終わった後も、日常が戻ってくることはなかったマルトのことを思って、やるせない気持ちになるのだった。

 




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