王朝時代を代表する政治家であり、紫式部や清少納言とも関わりがあり、一説には光源氏のモデルともされる藤原道長の日記が、現存する世界最古の直筆日記として国宝とされているだけでなくユネスコの世界記憶遺産にも指定されていることは知っていたから、いつか読んでみたいとは思っていた。
思ってはいたが、以前読んだ『平安貴族とは何か 三つの日記で読む実像』(倉本一宏著)で、さわりを目にしたところ、大半は業務日誌のようなものらしく、これ読んでも面白くないのでは?とすっかり及び腰になってしまっていた。
けれども同じビギナーズ・クラシックスシリーズの『和泉式部日記』がことのほか面白かったので、こういう形式のダイジェスト版なら、読んでみてもいいかも?と手を伸ばしてみた。
原典から特に興味深い記述を抜き出して、【現代語訳】【原文(読み下し文)】【寸評】【原文(白文)】を並べて収録するという形式なので、順を追って読んでいくと、道長の半生を追っていくことにもなる。
一条、三条、後一条と三代にわたる朝廷において絶大な権力を有し、四人の娘たちを四代にわたる天皇たちと結婚させ、最盛期には太皇太后、皇太后、皇后と同時に三后の父親になった男の日記は、「誰それと交流した」「宴を催したが○○はこなかった」「(犬の死骸、子どもの遺体など)穢れに接してしまって参内できなかった」「(一条天皇のご機嫌取りのために)漢文学に挑戦した」「突然息子が出家してしまった」「井戸の底の呪物を発見した」等々多岐にわたり、時事ネタや当時の風習など興味深い。
そしてまた「紫式部日記」をはじめ同時代に書かれた他の書物との食い違いなどの指摘も面白かった。