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『波が海のさだめなら』

 

「カミラはカミラだからカミラなんだ」
どうして私に「カミラ」という名前をつけたのかと問うと、養父エリックは穏やかに笑ってそういった。
その名前をつけたのは、亡くなった養母のアンだったが、はたして椿がどんな花かを知っていたのだろうか。
ただ単に東洋的なイメージをもって名付けたのかもしれなかった。
カミラは昔から、この名前が嫌いだった。


実家をたたむにあたって箱詰にされて送られてきたカミラの荷物……それはそのまま彼女の過去の遺物といえるようなものだったのだが……は、思いがけず、カミラを作家への道へと導くことになる。

同時にその荷物の中に紛れていた一枚の写真……満開の赤いツバキの花の前で生まれたばかりの子どもを抱いた十代の母親の写真……が、カミラのその後の人生を大きく変えることになるのだった。

国際養子縁組。
生後わずか半年でアメリカに養子に出されたカミラ。
自らのアイデンティティに悩む彼女は、この世に生を受けたときに最初につけられた名前、チョン・ヒジェの足跡をたどり、実母を探すために韓国へと向かう。

自らの出自にとどまらず、多くの人たちの心の中や、人と人との間に横たわる深い闇をのぞき込むことになろうとは想いもせずに。

カミラことチョン・ヒジェは作家で、作家志望だった実母ジウンは詩を書いていた。
そんなこともあって、物語には作品には金起林や徐廷柱、エミリー・ディキンソンやプレヴェールの詩に加え、ジウンが詠んだとされる著者による作中詩も登場する。

現在と過去、娘と母の記憶が入り交じり、どこか幻想的で、それでいてとてもシリアスで、切なくてやるせなくて、それでも最後まで登場人物や読者を見捨てずに包み込むしなやかさがあるのは、キム・ヨンスらしいというべきか。

波が海のさだめなら、あなたを考えるのは私のさだめだった。

あなたに教えてあげたいけど、教えてあげる唇が私はないの。


どうか僕がこの小説で書かなかったことをあなたが読めますように。
著者のあとがきの最後をしめくくるこの言葉は、はたして、読者にそうではないかと推測させるヒジェの出生をめぐる母ジウンの物語の真実だけをさしているのだろうか。

そうとばかりも言えない気がして、読み終えたばかりの物語をまた遡り始める。

希望は翼をもったもの。
あなたに翼はありますか。

もしも誰かにそう問われたら、あなたはなんと答えますか?




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