ルシア・ベルリンと初めて出会ったのは、2年前。
早稲田文学増刊 女性号 に掲載されていた
本書の表題作でもある「掃除婦のための手引き書」を読んだ時だ。
これがもうすこぶる面白くて、
「この人の作品をこの訳者でもっと読みたい!」と強く思ったものだから、
この短篇集が出版されると知った時からとても楽しみにしていた。
実際に手にしてみると、
見開き2ページにも満たない掌編から
20ページほどの短篇まで24篇もの作品が収録されていた。
長短の別を問わず、そのどれもが、圧倒的な存在感を持って迫ってくる作品で
これはもう、一気に読むにはもったいなさ過ぎて
少しずつじっくり味わった。
連作ではないし、同じ人物が登場しつつづけるわけでもないのだが、
読んでいると浮かび上がってくる一人の女性がいる。
鉱山で働く父親と共に、田舎町を転々としながら育ち、
成長期、脊柱側湾の治療のために矯正具を身につけていた。
父親が長く不在の時期には、母の実家で暮らしもしたが、
歯科医である祖父から性的虐待をうけ、
アルコール依存症だった母に助けを求めることは出来なかった。
三度結婚し三度離婚をし、
高校教師や掃除婦や看護師など、
さまざまな仕事をしながら4人の子どもを育てたが
自身もアルコール依存症に苦しみ
病院のデトックス棟に収容されることも。
末期がんで苦しむ妹を看取った経験もある。
それぞれの物語は独立していて
同じ人物を追って語られるわけではないのにもかかわらず
確かに浮かび上がってくるシルエット。
それが作者自身の投影なのだと
巻末に収録されたリディア・ディヴィスの解説で知る。
もちろんこれは、小説であって作者の自伝ではないが
作者の歩んだ人生と、
もしもあのとき……と思い巡らせる作者自身の想像力がなかったならば
生まれてこなかった物語だったに違いない。
寂しくて悲しくて苦しくて
そのくせとても夢見がちで
どんなときでもユーモアがあって。
重なるところなどひとつもないのに
物語の中の彼女になぜか共鳴してしまう。
ああ違う。
ひとつだけあった。
それも私にとってはとても大きな共通点。
実を言うと私も昔、思春期の入り口に立った成長期に
ダブルカーブのS字型脊柱側湾症の進行を予防するために
矯正具をつけて過ごしていた時期があった。
ものすごく、しんどいと思い詰めていた時期が。
(2019年12月18日 本が好き!投稿)