その会社は海にごろごろ流れている野生の商品を整理して、選別し、求めている顧客へ届ける。特定の時期にまとめて出荷される商品もあるけど、そのサービスでは扱っていない。
商品は様々な特性を持っている。
会社は顧客の要求に合う商品を見繕って薦める。海の動向なんかも伝える。この会社からはろくな商品が来ないと思われてはいけないからちゃんとフォローする。
昔は会社が紹介した中から選ぶだけだったけれど、最近は顧客が自分で探すやり方もある。どちらにしても大海原に出るのは顧客の本業ではないから会社が案内をする。会社は商品を選別しやすいように、商品をカテゴライズする。かかりやすい餌や釣り竿を教えたりもする。そこで支払う手数料は必要経費だと顧客は思っている。
大変なのは商品にも意思があることだ。商品の方も顧客を選ぶ。そして金を払ってもいないのにこの会社にはろくなのがないとかサービスが悪いとか言う。
会社の仕事はそれぞれに要求のある商品と顧客を繋ぐことである。顧客はこんな商品がほしいと会社に要求する。商品もこんな会社がいいとか要求をする。会社は、商品から魅力的に見えるように顧客にアドバイスをし、顧客から魅力的に見えるように商品にアドバイスをする。
晴れて双方が合致すればおめでとうございますとなって会社の仕事は完了するが、また別の商品が別の顧客のところから出て漂い始める。
顧客と商品がずっと一緒にいては仕事がなくなるので、商品が出ていってくれる方がその会社からしたらありがたいのだろうなんて言われることもあるけど、商品が出ていきたいのに出られないとか、合わない商品を手放せない方が良くないだろうと、海は流動的であるべきという意見が最近は多い。
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つまり、その会社っていうのが今回の場合はリ〇ルートエージェントのことで、商品っていうのが転職する私で、転職先の会社はリク〇ートにお金を払って今回私を採用した。
私はリ〇ルートにお金を払った顧客ではないので、リクル〇トは私の頼る相手ではない。だから、どうしたらいいか教えてもらおうとしたり不安なんですと相談しても意味はない。対応が遅いとか、担当がいるのに返信がいつも代理だとか、どこそこの辞退の話がちゃんと伝わってんのかとか、受けたはずのWeb適性検査のリマインドが違う日程で届くとかでいちいち不満を言って心を乱す必要はない。私は自分の要求が叶うようにリ〇ルートを最大限利用できればよい。この商品が採用されるように互いに連携しているのだと思えばよい。
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思い返すと去年の今頃はまだ登録しただけでどうなるのか何も見えてなかったんだな。1年前の自分に自慢してドヤ顔したいな〜とか考えるのが楽しいので私は過去を振り返るのが好きだぜ。
秋頃にサイトに登録。その翌月くらいにWebで面談、実際に動くのは繁忙期後に、って話になってしばらく放置。
冬終わり、向こうから連絡がきて面談、繁忙期終わりに始めますって言ったけど終わってさらに一ヶ月ほど放置。
(n−1)月17日
突然やる気スイッチを入れることに成功し、キャリアシート、職務経歴書を完成させて面談を予約。同時進行で気になったところには応募ボタンを押し始める。
n月16日
書類選考通過の連絡。なぜかこれを皮切りに書類が通り始める。
そこまでの間ずっと始めたことだけに満足していたので、書類選考を受けているという気分が全くなかった。今から同じことやれって言われたら一ヶ月も何も考えずに応募ボタンをぽちぽち押すのはできないだろうな……。
繁忙期終わって仕事が落ち着いていたのもあって、何の焦りもなかった。
送りっぱなしで忘れていたため連絡が来て改めて選考を通った会社の内容見て、えっこんな良さそうなところが通してくれたの?!と初めて緊張。そこで第一志望というものができる。そのあと応募済み一覧みたいなとこ見たら(それまで一回も見てなかった)結構書類で落とされててわははってなりましたね。
結論から言うと、最初に書類通してくれたその会社に決まった。
n月22日
午後と夕方に初めてのWeb面接。
ここから2週間くらい面接の日程がぼんぼん入って、リ〇ルートのサービスにめちゃ感謝する。いちいち電話で「一次面接通過となりました。つきましては二次面接の日程を…」「ありがとうございます。今予定を確認いたしますので…」とかやらなくてもマイページからボタン一つでいいんだよな。今は令和だもんな。そういう電話応対も選考の内だと思ってたけど、しないで済むなら企業もありがたいに決まっている。ただし今度はWeb面接のスキルとか慣れてないとマイナスなんだろうなとも思う。
n月23日
記念受験のつもりで送ったところが通過し対面面接の連絡が来る。人に言えば普通に知ってるファッ〇ョン誌(そこを伏字にしてどうする)を作ってる出版社だったので「着ていく服がない」と焦ってトゥモローランドに駆け込み店員さんに勧められたスーツを一式そのまま購入。
n月27日
先週に受けた第一志望から最終選考の連絡。
2回目で最終だし(もとから選考日程にはそうあったけど)、最終なのに対面とWebどっちでもいいらしいし、面接するのは代表者じゃないっぽいし、なので脈無しなのか?と喜びより疑心暗鬼に。
まあでも書類も面接も一社通るなら他も通るっしょ、と思って引き続き応募したり適性検査を受けたりする。これは焦っていなかったというのが半分、期待しすぎないようにというのがもう半分。
n月28日
Webで受けたとある大手の一次面接がとても雰囲気良くて同率1位の第一志望が2社になる。
(n+1)月2日
第一志望の最終選考に行く。会社所在地が良い場所すぎてもう結構その気になる。
(n+1)月4日
第一志望からオファー面談の連絡。
その日にリ〇ルートに電話で相談。
相談内容
①内定ってことでいいんですよね?
②明日と明後日に面接あるんですけど行くべきか?辞退するべきか?
③先週に一次受けて結果待ちの一社だけちょっと諦めきれない
④併願があるって内定先には言っていいんですか?
相談の答え
①内定だよ!
②明日の面接はできれば行った方がいい。明後日はまだ辞退してもいい。
③こっちで状況を伝えて選考結果の通知を早めてもらいましょう
④内定は内定。「併願があるならいいです」とはならないから安心せよ。
転職サイトを使うメリットの1つは手間の少なさだけど、もう1つはやはりこういうときだ。転職特有の状況に慣れた答えをさくさく示してくれる。
(n+1)月5日朝
選考を急かしたところから一次面接通過の連絡。通過するんかい。急かしたら。
リ〇ルートの調整のおかげで、二次面接が通った場合の最終面接の日程まで仮で決定してもらえる。
……その日は私が5ヶ月前にチケット取って楽しみにしてた、もっと言えば2年前のサマソニで見れなかった海外バンドの来日の日なんだよな……という涙を静かに飲みこむ。
(n+1)月5日午後
某出版社の記念受験の面接。
第一志望が自分に合っていると感じたその感覚が、ちゃんと間違っていなかったことを実感。
いや、ここはここで良かったんですけどね。本社建物に入っただけで良い経験になりました。
(n+1)月10日午後
同率1位の第一志望の二次面接。
決して何が悪かったわけでもないのですが前回の面接の雰囲気の良さはそのときの人事の人の良さだった可能性が浮上。加えてリ〇ルートが急かした話とかも知ってるのかよくわからない面接官で、向こうも消化試合だったのか?
同日夜
オファー面談。会社の所在地がとにかくめちゃくちゃいいので面談の前からその気になってしまう。
オファー面談、本当にオファー感あってドキドキしちゃった。
バンドの来日は見れることになりそうだとなる。
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こうしてみると駆け抜けた感があるね。これやりながら通常の仕事もしてたんだもんな〜。準備に1ヶ月、活動1ヶ月というところ。
結局〇クルートには、「他の人はどうしてるのか?」とか「こういうことしても問題ないか」みたいな一般的な相談だけで面接練習とかしなかった。職務経歴書の添削も、書いた方がいいことと書かない方がいいことを聞いただけで大きな添削とかしなかった。面接練習もなし。
というのも、前職(その時で言えば現職)で人に何かを説明するということには慣れており、そこは大丈夫かなと思ったこと。そしてもう一つ、これはおそらく他の人にもおすすめなんだけど、chatGPTに面接練習をしてもらったこと。
chatGPT、使えますね。0から1を生み出してはくれない代わりに、こちらが5だか10だか90だかBだかCだか甲だか乙だかわからないで出したものを揃って100に近づける道筋を立ててくれる。
それに話す練習にはならなくとも、一度自分で他者に伝えるために文章にしたものは話すときにも出てきやすかった。この、他者(他人ではない)に伝えるためにっていうのが重要で、自分で読むだけの文章とはやっぱり効果が違う。
しかも改善点だけでなく良い点も具体的に指摘してくれる。悪いことは忘れてしまう私のようなタイプは褒められたとこだけ覚えてるじゃないですか。面接で焦っても、最低限良い点だけを押さえて話せた。
あとリ〇ルートで使ったのはスカウト機能だけど、結局一社も応募しなかった。スカウト来ると自己肯定感が上がるからオンにしてた。
選ぶのも選ばれるのもお互い様だ。
結果としては30社応募して、8社書類が通ったうち3社は書類選考の結果前に辞退、5社面接受け、その内の1社が見送り、他3社は結果を待たずに辞退。
もともと定員の少ない職種だから20社30社応募しろってアドバイスをもらっていたのでその通りにできたかなと思う。しかし紙と電話しか無い時代ってどうしてたんだろ。
転職って周りでもめずらしい話じゃないけどみんなこんな大変なことやってたんですね。全員すごい。
と同時に、転職をあんまりハードル高く感じてはいけないなと思う。今いる仕事を辞めたらもうやっていけない、と逃げ場がないのは何より地獄だと思う。転職が頭によぎって初めて感じたのは、リク〇ートを始め転職サイトの広告が巷にあふれていることのありがたみだった。そういう点で本当に感謝してる。対応が遅いとかいつも返信が担当者代理だとか辞退の話が伝わってんのかわからないとか受けたはずの適性検査のリマインドが間違った日程で来るとかは全然OK。私はリクルー〇の商品であり、金を支払った顧客ではないので。
特に写真がない記事になるのでここで前職場の好きだったトイレの窓からの景色を載せるか

現職が一社目で年数は長いのは印象がいい、転職はできると思いますよ。と担当の人は言っていた。あとは合うところがあるかどうかですよねと。
キャリアカウンセラーって職業は大変だろうな。仕事って続かない人って本当に続かないし、おんぶにだっこで全部やってもらおうとする求職者もいるだろうし、何もキャリア無いのに不満ばっかのやつとか、自分で何も決められない人とか、とんでもなく常識ないのとか、想像するだけでもヤバそうな人いっぱいいるぜ。
かくいう私も大学に人より長く在籍していたり卒業と就職に間があるなどのヤバみはあるんですが、この会社ではそれがすべて「資格の勉強を諦めずに続けていた」と解釈をされるミラクルが起こっており、なんか全部相性なんだなと納得することにした(実際資格の専門行ってたしそこからその業界に行くのも一般的な話なのでおかしくはないのだが、大学は普通に留年したし新卒で就活しなかったのでそのあいだは実質フリーターでした)。
以下、備忘録的に。
・現職(前職)と応募先企業の違いを挙げ、「今は適わないことが御社でなら適う」と言うのが転職の基本形かなと思う。
・転職しなければ解決しない問題/転職が直接関係ない問題、を分けて考えないと、おそらくあなたの悩みは解決しない。例えば職場の人間関係とか。
・人間関係を理由に転職するのがいけないわけではないが、その根本理由を考えずに「転職で解決」とだけ漠然と思っていても解決するかは運次第ということになる。
・個人的に「現職(前職)にこんな問題点があるので転職したい」と言うのは好きじゃなかったので、「現職(前職)のやり方も良かったし成長できたけど次はもっとこういう経験をしたいんです」って言ってた。
「一人で一社を担当してきたので幅広い経験ができたけど、今度は逆に一人じゃ回せないような大きな規模に関わりたい」みたいな。
何かを上げるために他を下げるのは良くないってオタクは義務教育で習うのでね。
他に写真もないので前職場前のお気に入りの写真でも載せよう

転職の成功って何をもってなんでしょうね。辞めたけど前職だって間違いではなかったと思っている。
私の場合、転職に限らずこういうときの決め手って感覚が第一に来る。迷いながら「でも条件はいいから正解のはず」って決めると失敗する。
今回は条件がどうこうの前に「いいな」と思ったから決めた。
ただまあ、真面目な話をすると、未経験の業務も多そうで不安だった中、オファー面談で「たとえばこういう知識がある人に来てほしい」って聞いた話が全然余裕だったのでそれなら大丈夫か、って思ったという具体的な後押しはある。即戦力っぽいな。私なのに。
今のところいい感じです。面接してくれたのが直の上司なので、この人が採用しましょうって言ってくれたんだよなー、とありがたく思ってるけどそろそろちゃんと頑張らないと「違ったわ」ってなりそうでこわい。
でも前職で「もっとこういうことやりたいのにな」って思ってたことできそうでうれしい。
あと辞めてわかったけど前職がなかなか昭和なとこだったのでその対比で死ぬほど働きやすい(死ぬほど働きやすいとは?)。前職、苦労したというほどはないけどかなり鍛えられたと思うことは多い。
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転職自体満足の結果なんだけど、しかしその中に「前より良くなった」ことではなくそもそも「前と全然変わった」ってことに満足してるところがあって、自分には定期的に環境をがらりと変えたい欲があることに気づきつつある。
10年後20年後に自分が何をしてるのか「まあこんなだろうな」って想像できることってこわくないですか。生活水準の上下ではなく、幅の想像。
だいたい突き当たりまでを想像できる一本の窓の無い廊下をあとはただ歩くだけみたいな感じ。快適な廊下かもしれないけどそれはもうただの作業なんだよ。
やることやってれば勝手にどんどん進級して進学してた子供時代ってそれはそれで私を満足させていたんだろうな。ではそれが幸せだったのかというと全然今の方が良くて、なぜかというと私の求める変化は「変わる」ではなく「変えられる」なので。
別にインドやジャマイカに移住したいわけでも自由なフリーランスになりたいわけでもないし、人と違うことをやりたい欲はまじで全然ないんだけど、とにかくこれまでの自分が想像してなかったことになってたい、みたいなのがずっとあって、そろそろそういうのはだめな年齢ではという気もする……これくらいの願望はみんなそうなのか……?
未来の希望にあふれたこと書いていたつもりなのになぜこんな終わり方に……?






数年後の約束ができるってロマンチック。