本当に日常が帰ってきた。
買い物のために隣町まで自転車をこいだ。
久しぶりに街に触れた。
道に踏み潰された木苺が落ちている。
もうそんな季節なんだ。
桜が散ってからの時間の経過がよくわかっていないから、少し戸惑う。
道端で大きな蝶とすれ違う。
アメンボが水辺を駆ける。
つばめが宙を舞う。
それぞれの一瞬に心がときめいて、嬉しくてつい鼻歌を歌ってしまった。
忙しい時の流れから解放されて、好きなスピードで自転車をこぐ。
急ぐ必要はどこにもない。
むしろゆったりと、余裕を持って、街中を駆け巡る。
曖昧な記憶を辿って、交通ルールを思い出す。
自転車は車道を左側通行。
信号もちゃんと守る。
あれほど忙しなかった日常が、遠い昔のことのように思える。
あの頃は、何を急いでいたんだろう。
何に追われて、生きていたんだろう。
風が、自転車を追い抜いていく。
僕は、街の中に生きている。