もしかしたら、
スペインに連れていかれることになるかもしれない。
イッテQが流れる夕飯の食卓で、
父親が急に口を開いた。
「スペインに行きたい」
私は前々から父がスペインに行きたいと言っていたのを知っていたし、
サグラダファミリアを見てみたいと言っていたのも知っていたし、
確か両親の新婚旅行でスペインは行っていないというのも知っていたので、
あぁまたそんなこと言っているのかと思っていたのだが、
よく見るとリビングの食卓の端にひとつの冊子が置いてある。
出版元はHIS。
まさかと思ったが、
いつの間にか父は旅行代理店に行き、
ちゃっかりスペイン旅行のパンフレットをもらって帰ってきていたのだ。
彼は本気だ。
私はそう感じた。
私は海外旅行より断然国内旅行派なのだが、
主な理由は3つあって、
1つ目は海外を知る前に国内をもっと知るべきじゃないかと思っているから、
2つ目は国内だったら日本語が通じるから(方言を除く)、
そして3つ目は、
国内なら最悪飛行機に乗らなくても大体の所に行けるから、
なのである。
それほどに私は飛行機に乗りたくない。
私がなぜ飛行機をそこまで毛嫌いしているのかというと、
墜落するのが不安だとかそういうことでは一切なく、
気圧の変化で耳が痛くなることに耐えられないから、
なのである。
中学生くらいの頃に、
両親に連れられて熊本に旅行に行った時、
往復の飛行機の中でずっと泣き叫んでいた記憶しかない。
耳が痛くなくなると言われている様々な方法を試したが、
結果は今ひとつ。
ただただ離陸から着陸までの時間を、
耳の痛みに耐えることだけに使っていた。
それ以来私は飛行機が嫌いだし、
そういう理由も相まってスペイン旅行にはあまり乗り気ではない。
スペインまでクルーズで行くなら話は変わってくるのかもしれないが、
そんなに金のかかることをうちの家族がする訳がない。
父親がスペイン行きを断念するか。
私が諦めて飛行機に乗るか。
戦いの火蓋が切って落とされた。