「やらなければならないことがあるのに、つい後回しにしてしまう」
そんな経験はないでしょうか。
こうした先延ばしは、多くの人が経験するものです。
その背景には、いくつかの共通した原因があります。
大きく見ると、自制する力(セルフコントロール)が低下していることが関係しています。
先延ばしの原因を理解し、改善のための対策をすることで、日々の行動力を大きく取り戻すことができます。
ここではその原因と、その対処法について整理してみます。
1. 先延ばしの主な原因
先延ばしが起きやすくなる要因として、次の3つが挙げられます。
①睡眠不足
②行動が定まっていない
③感情を調整できていない
これらはすべて、セルフコントロール(自己管理、自制)の状態と関係しています。
以下で、それぞれの対策を見ていきます。
2. 睡眠不足
睡眠は「時間」だけでなく「質」も大きく影響します。
睡眠不足になるとセルフコントロールが弱まり、これまで習慣として続いていた行動まで、急にできなくなることがあります。
例えば次のような対策があります。
・7時間以上の睡眠時間を確保する
・起床・就寝の時間をできるだけ一定にする
・就寝前に入浴などでリラックスできる状態を作る
・就寝前に強い光を浴びない
睡眠については多くの研究や方法があります。
まずは自分の生活に合うものから試してみるとよいでしょう。
3. 行動が定まっていない
やるべき行動が曖昧だと、物事に取りかかりにくくなります。
そのため、行動を見える形にすることが効果的です。
① 行動を視覚化する
(1) 先延ばしのタイミングに気付く
自分がいつ先延ばしをしているのかを知ることが大切です。
例えば、
・タスクが2つ以上重なったとき
・段取りを決めかねているとき
・後でまとめて片づけてしまいたいとき
・体調などにより、面倒に感じているとき
・突発的に誰かから頼みごとをされたとき
計画的に先延ばしをしたとしても、結果が変わらない、改善されないこともあります。
また、自分のことを優先させなければならない場合もありますから、「〇〇の後でもいい?」「他の人に頼んで」「今はごめんね」と、断る勇気も必要です。
もし今やるべきことが5分以内に終わる作業なら、先に終わらせてしまう方が結果的に楽なこともあります。
やはり、サッと済ませられることは、多少面倒でも、その時にしてしまった方がよいのです。
(2) 先延ばしの損失と、今やるメリットを書き出す
箇条書きで良いので、リストアップするということです。
・先延ばしするとどんな不利益があるか
・今やるとどんな良いことがあるか
人は「今やる理由」がないと動きにくいものです。
理由を言語化すると、行動しやすくなります。
(3) 作業を細かく分ける
人は、やるべきことを実際よりも大きく見積もりがちです。
そのため、
・作業を細かいステップに分ける
・チェックリストにする
といった方法が有効です。
小さなステップにするほど、心理的な負担は軽くなります。
② IF~THENプランニング(習慣の連結)
「もしAが起きたらBをする」という形で行動を決めておく方法です。
例えば、筋トレに当てはめたいなら、「トイレに行きたくなったら、ドアを開ける前にスクワットを5回する」などです。
既にある行動や必ずする行動に新しい行動を結びつけることで、習慣は定着しやすくなります。
人は、何かをしようと行動を始める前に、実際以上の負担を感じるものです。
行動を具体化すると、全体や流れが分かりやすくなります。
取り掛かりを良くするためにも、その心理的な壁を下げることができます。
3. 感情を調整できていない
感情の状態も、先延ばしと深く関係しています。
次のような方法が役立つとされています。
・感情を落ち着かせる/高める
・瞑想
・運動習慣
・習慣化による自動化
習慣化することで、今までの行動が「当たり前の行動」になります。
その都度、「やる気を作る」「細かく計画する」といった準備をしなくて済むようになります。
① 先延ばしした自分を一度受け入れる
先延ばしをした時に、自分を強く責める人は多いものです。
しかし、過度な自己批判は、同じことが起きた時に同じミスをしやすくなるため、逆効果になることがあります。
自分を責めすぎると、次のような行動につながりやすくなります。
・そこから逃げる
・「罰を受けたからもういい」と考える
・失敗から学ばなくなる
・その他の、防衛、回避、逃避行動が増える
また、先延ばしをしやすい人ほど完璧主義の傾向があるとも言われます。
その改善のためには、
・自分をどれだけ許せるか
・自分の責任範囲を理解できているか
・自分でコントロールできないことまで気にしすぎていないか
こうした視点が大切になります。
まずは、「先延ばししてしまう自分もいる」と認めることです。
その上で、次にどうするかを考える方が前に進みやすくなります。
② セルフコンパッション(自分への思いやり)
セルフコンパッションとは、親友を励ますかのように自分で自分のことを励ますという、自分に対する思いやりのことです。
先延ばしをしてしまったら、自分を強く責める代わりに、「もし友人が同じ状況だったら、どんな言葉をかけるだろうか」というつもりでやってみるとよいでしょう。
それを書き出してみる方法があります。
ポイントは次の通りです。
○ 傾向を認めて改善する
× 過去の後悔にとらわれ続ける
例えば、
・「人間だからミスもする」
・「そんな時もある」
・「今の自分でも大丈夫」
といった言葉で自分を励ますことです。
自分自身に対して良い働きかけができる人は、自己肯定感が高まりやすく、この習慣を持つ人ほど、次の傾向があるとも言われています。
・幸福感が高い
・精神的に安定しやすい
・不安や痛みへの耐性が高まる
また、自分に優しく接する方が、
・先延ばしが減る
・目標達成率が上がる
・人に優しくなりやすい
・ネガティブな反芻思考が減る
・しっかりした人物になる
といった結果につながることもあるようです。
さらに、「やればできる」という自己効力感や、「ありのままの自分を好きになる」という自己受容が高まっていきやすいため、人前でも素の自分のままでいられるようになっていきます。
そうしてメンタルが安定してくることで、コミュニケーション力も徐々に上がっていき、やがて人を許せるようになり、温かくて良好な人間関係ができやすくなっていくのです。
③ 運動習慣
運動は意思力にも良い影響を与えると言われています。
週1~2回の運動を、数週間や8回程度続けるだけでも変化が見られた、という研究報告もあります。
また、決まった日、定期的にであれば、運動の内容については脳での反応に特に差がなかったそうです。
運動によって次のような変化が起きやすくなります。
・減少、低下したこと
先延ばし
遅刻
衝動買い
テレビを見る時間
ジャンクフードやアルコールなど依存物質の摂取量
・増加、強化されたこと
誘惑に強くなる
忍耐力がつく
感情のコントロールが上手になる
貯金をするようになる
野菜の摂取量
勉強時間
運動は、セルフコントロール全体に良い影響を与える習慣の一つです。
4. 先延ばしを防ぐノートの使い方
先延ばしを改善するには、自分の行動を記録することも有効です。
「先延ばしをやめる」だけでなく、
・代わりにどんな行動をしたか
・どのように進んだか
を記録します。
記録のポイント
①ゴールまでの進み具合いを書く(全体のうちどこまで進んだか)
②記録回数を増やす(朝・昼・夜など)
③行動の累積を記録する(その行動が増えている実感を得る)
④「ここまでできたら○○」と目標を決める
⑤進捗が視覚的に分かるようにする
記録の使い分け
・行動を変えたいとき
→ 記録回数を増やす
・成果を出したいとき
→ ゴールまでの進展を記録する
始めたばかりの頃は記録回数を増やし、習慣化してきたら進捗を記録すると続きやすくなります。
まとめ
先延ばしは、単なる「怠け」ではなく、
・睡眠
・行動設計
・感情の状態
など、さまざまな要因が関係しています。
だからこそ、
・睡眠を整える
・行動を見える形にする
・自分を責めすぎない
・小さな習慣を積み重ねる
といった方法を少しずつ取り入れていくことが大切です。
完璧に変えようとする必要はありません。
できるところから整えていくことで、行動は少しずつ変わっていきます。