不安や恐怖、そしてときに絶望に近い感覚に襲われることは、誰にでもあります。
それは自分だけが特別に弱いからではありません。
不安や恐怖を感じると、脳内ではノルアドレナリンが分泌され、危険を察知する扁桃体が興奮すると言われています。
いわば「戦うか、逃げるか」を迫られる原始的な反応です。
だからこそ、まずはその仕組みを知ること自体が、落ち着くための第一歩になります。
1. 不安を鎮めるためにできること│状況を言葉にする
特に、パニックに近いほど不安な状態になったときは、状況を言葉にすることが助けになります。
大脳に言語情報が入ると、扁桃体の興奮が和らぐと言われています。
つまり、そのような状況に陥ったら、
・今何が起きているのか
・自分は何を怖がっているのか
・最悪どこまで起こり得るのか
を言葉にして整理するだけで、冷静さが戻ってくることがあるのです。
これは、今の様子を自分自身に説明するような感覚で、今風に言うなら、動画の実況配信のようにしてみるのが近いと思います。
さらに、言語化すればするほど、分析が可能になり、判断も落ち着いていきます。
「考える」ことは、不安を煽るためではなく、鎮めるために使った方がよいのです。
2. 恐怖への具体的な対処法
①その場の恐怖を軽くする3ステップ(切り分け)
(1) 起こったことを「大・中・小」の規模で分けて考え、一旦認識する
(2) すぐに足掻こうとせず、時間を稼ぎエネルギーを蓄える(あるいはセーブする)
(3) 「この程度で良かった」と口に出してみる
まずはこれだけでも十分です。
無理に打ち勝とうとしなくてよいのです。
②少しずつ慣らしていく(系統的脱感作)
多くの場合、不安や恐怖を和らげるには、弱い刺激から徐々に慣れていく方法が有効です。
例えば、
・治療前に器具を見せてもらい、説明を受ける
→ 先端恐怖症など
・二階建ての建物から始めて、少しずつ高い場所に慣れる
→ 高所恐怖症など
・部屋で着替えるところから始めて、外出へつなげる
→ 引きこもりの改善など
・試験当日に備えて、模擬試験を受けて慣れる
→ 本番の弱さ、過緊張、混乱、凡ミスの対策など
試験を受けるという例なら、失敗しても命がなくなるわけじゃないですし、学校を退学になったり会社をクビになったりするわけでもありません。
多少の受験料や交通費くらいはかかりますが、それで不安や恐怖を和らげることができるのなら、勇気を持って一歩を踏み出せることでしょう。
ただし、治そうとすることは、その対象に戦いを挑む行為でもあります。
何でもかんでも完全に克服しようと戦いを挑むと、かえって反応を強めてしまうこともあります。
また、度を越えてやる、過剰に繰り返すなどして、本来人間に備わっている危険察知の機能を鈍らせるほどやるのは望ましくありません。
「完全に治らなくてもよい」「ちょっとだけ人並みに近づければよい」くらいの軽さを持っている方が、かえって前に進ませる場合もあります。
3. 戦うか、逃げるか
究極的に言えば、不安や恐怖への対処は「立ち向かう」か「退く」かのどちらかです。
先程の例のように、試験が怖いなら、当日までたくさん勉強して受けるのも一つ。
反対に、受けないという選択もまた一つです。
逃げることが即、恥になるわけではありません。
すべてを最初から避け続ければ何も蓄積されませんが、
・計画通り進めてみたが、色々な要素を考えた結果やめる
・途中まで頑張ってみたが、体や心を壊さないために一旦退く
・条件が悪いと判断して、損をしないうちに早めに撤退する
これらは立派な「判断」です。
後から振り返れば「あの時は冷静な判断をした」と、人生に活きる経験になることも多いのです。
どちらが正しいかは「時と場合による」としか言えません。
逃げる選択をしたことや、その選択肢まで全部悪いとはなりません。
立ち向かう選択をするにしても、今の段階では信じられないくらいハードルが高いという時だってあるのですから。
大切なのは、自分で考えた上での選択であることです。
4. 小さく始めるという姿勢
不安や恐怖の対象は、多くの場合、
・未知のこと
・経験が浅いこと
・得意でないこと
です。
いきなり克服しようとすれば、難易度が高すぎて当然です。
気持ちだけはいくらそう思っていても、仕方のないことです。
だからこそ、
・一回だけやってみる
・小規模でやってみる
・何回かやって慣れてみる
・失敗してもダメージが小さい形で試す
・大枠でも一回は自分で完結できるところまで取り組んでみる
こうした小さな経験を積み重ねることが現実的です。
成功しても「もう少しやってみよう」と思える。
失敗しても「この程度で済んだ」と思える。
そのバランスが大切です。
ただ、「どうしてもやらなければ、その後の人生の扉が開かない」「今踏み出さないと、次のチャンスなんて来ないだろう」ということであれば、力づくでも今やるしかありません。
そのためにも、「小さく始めて小さく完結させる」経験は重ねておいて損はありません。
5. 絶望感が深まる前に
不安や恐怖が強まり、絶望に近づきそうなときは、次のことを意識しておくとよいです。
①孤独にならない
②誰かの助けを得る
③相談する
特に③で大切なのは、
〇 孤独を癒すために相談する
× 解決するために相談する
という違いです。
確かに、孤独は不安になりやすいですし、終わりを考えるにつれ怖くなるのかもしれません。
誰の助けも得ることができなかったら、寂しいし、悔しいし、さらに辛くなるでしょう。
相談するにしても、うまく話せなかったり、想像どおりの対応がされずに落胆するかもしれません。
大切なのは、ここでの①~③は、結構手前の段階から動いてしまうことです。
「どうしよう」とか「他人への迷惑」は、一旦横に置いてしまいましょう。
一人でいるから下へ下へと落ち込んでしまうことだってあるのです。
一人で抱え込まないこと自体が、絶望を食い止めます。
まとめ|不安があっても行動はできる
不安や恐怖は、人間の本能に根ざした自然な反応です。
それを完全になくそうとしなくて構いません。
・言葉にして整理する
・切り分けて程度を把握する
・小さく慣らしていく
・戦うか退くかを自分で選ぶ
・孤独にならない
それだけでも十分です。
不安があっても行動はできます。
怖さが残っていても、一歩は踏み出せます。
お試しでちょっとだけやってみたり、一旦やめることもできるのです。
今の自分のレベルでできる「小さな一歩」を選ぶ。
それが、次につながる経験になります。
時にはその小さな一歩が、「誰かと一歩」でもよいのです。
不安な時期を共にできる仲間がいるのでしたら、それはとても心強いことです。
また、じっとしたまま悩んでいては、負の感情をどんどん増幅させるだけです。
気分転換からでよいので、椅子から立ち上がって、実際に一歩踏み出してみましょう。