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元駐イラン大使、元国際情報局局長、孫崎亨氏の最近著「私とスパイの物語」(ワニブックス)を読了。
私とスパイの物語(孫崎享) | ワニブックスオフィシャルサイト

「スパイ」というタイトルを見ただけでいわゆるキワモノかとも思うが、いやいや、外務省高官としての各国、各地における重要人物との接点をフルに生かした自叙伝的記録だ。かつ、豊富な関連資料も提示、引用されており一気に読了。
本書重要記録は難解ではないが、文字通り世界を巡って、地名、人名、固有名詞が多々出て、かつ、時系列通りでない箇所もあり、その理解の為に実は再々読が必要であった。
であるがゆえに、しかし、現下大混乱の世界情勢を想い、理解し、その重要性から貴重な教訓を得ることができる。
まず、序章「スパイについて考える」だけでも50ページ、全体300ページの1/6を占める。
そこには、何と女優オードリー・ヘップバーン、作家アーネストヘミングウエイを筆頭に我々日本人にもおなじみの人物の登場。信じ難い!
又、ジェームス・ボンドの「007ロシアより愛をこめて」の例を引き、そもそもスパイの定義・活動を解説する。
即ち、スパイ=諜報活動であり、世界では「外交」そのものがスパイ活動である例も示される。
「世界はスパイが動かしている」。 え、え、え!!!
ロシア、イラク、ウズベキスタン、イランと日本(人)には馴染みの薄い治政、文化(宗教)、歴史の地域ではある。
「外交とは相手国から情報を取り、自国の利益になるよう誘導するのだが、そこで、外交官は相手国の国内法を守って行動し、反モラル的な行動を慎む」。
「が、現場において当該国の要人、或いはそこで各国の代表である外交官との公私を交えての接触で知り得たのは日本は例外であるということ」。
「即ち、時には当該国の国内法にはずれ、或いは反モラル的行動も見受けられた」。
なるほどーー。
さて、このように高度な対外接点(情報接戦)の記述のうち、石油担当商社マンとして筆者(浜地)が駐在、出張でビジネス現場にあって体感したイラン、およびイラクについての記述に特に惹かれる。
第十章 駐イラン大使時代(1990年―2001年):
・20年越しに明らかになったホメイニ師の秘密のメッセージ
・ホメイニ政権の反米路線 ・チェイニー米副大統領が日本・イランの経済発展を止めた
【第199回】JANJAN過去記事から(1)トイレット・ペーパ騒 - 浜地道雄の「異目異耳」
第八章 在イラク大使館勤務:
・元KGBの旧ソ連の大使達との交流
・誰が米国の為に働くか
・CIAやFBIは9・11を事前に察知できなかったのか?
・「新たな真珠湾攻撃」を望んだ「アメリカ新世紀プロジェクト」
・トム・クランシー著『日米開戦』『合衆国崩壊』
・宗教派遣団、テヘランで自動車に追突される
ここで、筆者(浜地)の強い思い・主張はイラク侵略・ペテン師カーブ・ボール
9.11同時多発テロ⇒「カーブボール」考 | ISF独立言論フォーラム

第十一章 退官後(2009年以降):
・「イラクの核兵器開発はない」とNYTに寄稿したウィルソン
・チェイニー副大統領の報復
・米軍人やCIAを敵として描いたトルコ映画『イラク -狼の谷-』(2006年)
・中国と西側情報機関の戦い
・安倍晋三元首相の殺害問題
・重光葵の死を考える ・ル・カレ著『ナイロビの蜂』
ということで、筆者(浜地)の想いも鼓舞され、広がり、強く主張するところも大である。
【第294回】イラク侵攻から20年 ~ 風化させてはならない - 浜地道雄の「異目異耳」
そして、最終章においては何と「安倍晋三元総理の殺害問題」について「安倍氏を銃殺したのは山上被告なのか」としてJFK暗殺(1996年11月22日)の例を引きながら学者、政治家、評論家、米国人などから直接あるいは仄聞で、彼(山上)以外の可能性を探っている。
そこでの結論は出してはいないが、本書は「所詮私はスパイの世界の外の人間です」と締めくくられ、即ち「内部の人間ではなく、あくまでも物事を客観的に注視し、分析する」という立場を宣言している。
AI時代、ChatGPT~~、はたまたトランプ2.0。偽情報を含む情報過多の現代であるからこそ、スパイ・諜報・情報・インテリジェンスとその原点にあるべき(人間の)知性、知力がいよいよ重大な課題。必読の道しるべである。
【第347回】BIS33周年シンポにて~講演「AIと情報」 - 浜地道雄の「異目異耳」
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