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【第136回】英語教育を変えるのは今しかない!〜「英語を教える」から「動機付け」へ

 

2013年5月18日

 

 

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国際ビジネス・コンサルタントで、文教大学国際学部で非常勤講師(3月まで)も務めた浜地道雄氏。

イスラム文化圏から米国の情報ビジネスの経験と、教育現場両方から見ている浜地氏に日本の英語教育の向かうべき方向についてお話しを伺った。

 

「伝える」「伝わる」英語教育

天野:浜地さんは以前商社に勤めて、海外でのビジネス経験も豊富ですが、元々英語が得意でそのようなお仕事を目指されたのですか?

浜地:商社に入ったのは漠然とした「あこがれ」でしたが、特に英語ができる訳ではありませんでした。 日本流というのか、石油担当だった私はあまり下知識の無い中近東に「放り出された」というのが実態に近く、英語を体で覚えるしかありませんでした。

そこでの取引相手は、欧米で勉強した人々。 こちらがきちんとした英語を使わないとまず入口のところでつまずきます。 しかもイスラム文化圏と、何もかも違う国で言葉も通じないということで、どうやってコミュニケーションをとろうかと毎日試行錯誤していました。

その経験のおかげで、重要なことは流暢に話すことではなく、意味をしっかりと伝えることだと気づいたのです。 逆も真なり、相手の意図も理解せねばなりません。

そして、相互信頼感を築くこと。 これが最重要です。 英語(ことば)はその重要手段です。

天野:相手に伝わるということは流暢さにもつながるのではないでしょうか?

浜地:最低限の流暢さは必要です。 でも、「相手に伝える」ということはそもそも自分の言いたいことをキチンと整理することが大前提です。

コミュニケーションの為には異文化理解も必須です。 異文化理解とは、相手に迎合するということではなく、相手の文化と自分の文化の違いを理解すること。 「お互い、異(ちが)うのだ」と理解することです。

そしてこの異文化の理解とは、実は、「歴史」「地政」つまりヒューマン・ストーリーですから、本当に奥が深いのです。

また、Input(読む、聞く)のないところにOutput(書く、話す)はあり得ませんね。 私はVersant®というスピーキングテストとGlobish®(Global English)の普及をライフワークと思っています。 前者は「口頭英語力」の測定ですし、後者は「最低限の語彙をキチンと固めよう」という主旨です。

 

小学校から大学まで一貫した教育思想が必須

野:学校での英語教育でも「使える英語」を教えるというような事が叫ばれていますが、浜地さんのおっしゃるような相手に伝わるコミュニケーションをとれるようになるために教育現場でできることは何でしょうか?

浜地:教育思想の一貫性です。 なぜ英語を学ぶのか?小学校、中学校、高校、大学そして、社会に巣立っていく。 つまりグローバル社会にあって「国のありかた」といういわば背骨が大事ですね。 「グローバル人材に育っていく過程」としての教育であり、その重要な手段が英語だという意味です。

教えるほうは心配ありません。 音楽と言葉についてはこどもは天才。 まずは楽しい「場」を与える。 上級になるに従って、社会道徳を教え、教養とかその内容を広め、深め、そして社会に巣立つにあたり「仕事で使える英語」、つまり中身を身に付けさせる。 分野に応じての専門性に応じた英語力を培う。

先生の役目はその場、環境つくり、なかんずく「動機付け」で励ますのが役目です。 その為には「英語を教える」のではなく「コミュニケーション力(伝える内容)」が重要なのです。

いくら流暢に英語が話せても、中身の無い会話をしていたら誰も聞いてくれませんよね。 それではコミュニケーションにならない。

私は4人の子供がおり、彼らは初等中等は日本で受け、大学はNYで学びました。 その子供たちの英語力の成長には目を見張らされ、一方、成人してから英語を学んだ私には流暢さという点では叶うはずがないと悟りました。

でも、「ペラペラに話せること」ではなく「英語で何を学び、何を発信するのか?」、教育現場ではそこを目指しましょう。

 

日本の英語教育を変えるのは“今”しかない!

天野:英語の授業が変われば、日本は変わりますか?

浜地:はい、そう思います。 「英語を学ぶと日本人のこころが薄れ、日本語がおかしくなる」という言説がありますが、そんなことはない。 第一、いまやもうすでにこころが失われつつあり、言葉も乱れている。

逆に、英語を学び、世界に窓を広げることにより、むしろ日本の良さも認識でき、論理的思考も養われるでしょう。 もちろん日本の教育には素晴らしい面があります。 それをベースに外に発信する力が必要だと思います。

例えば日本の学校では生徒が掃除を行いますよね?あれは素晴らしい文化だと思います。 クラスメートと協力して自分たちの学校を自分たちでキレイにする。 海外には無い文化です。 日本人はとても礼儀正しく世界に誇れる文化を持っています。 それは日本人の「魅力」です。

「ソフト・パワー」(武力によらない対外力)のうち、最強のものは「魅力度」だと強く思います。 個人ベースで考えても、意見の異なる相手で「ウーン。意見・主張は自分と違うけど、彼・彼女の言うことだから、話を聞いてみよう」というのがありますね。日本の魅力をもっと世界に発信しましょう。

天野:なるほど。しかし英語力が必要といわれるなかで、留学生の派遣も受け入れも少なく、英語力も低いという現実があります。

浜地:英語ができると良いと言いましたが、誰のためでもない、自分のためです。 本来、強制されるものではない、ということです。 それによって視野が広がり、友人も増え、何より楽しいことがいっぱい待っている。

全員が留学する必要もないし、全員が英語を話せるようになる必要もありません。 日本語だけで生きていけると思うなら、それも人生の選択だし、企業や国としての選択です。

しかし、確実に言えることはグローバル人材を目指して努力することは必ずその人にとってプラスになります。 日本が「魅力度」を増せば、おのずと受け入れも多くなり、「交流」が盛んになるでしょう。

天野:現在のグローバル人材育成の議論は日本全体でどうするかという議論に発展しているように思います。

浜地:前述のとおり、全員がグローバル人材を目指す必要はないが、議論が大きくなっているということはすごく良いことだと思います。

以前、大手商社が社内公用語の英語化を目指したが、社内の反対を受け実現しなかったと聞いています。 今、楽天を筆頭に英語化の動きが再燃し、今度は政府も各社も動くほどの大きなムーブメントになっています。

私は、三木谷社長の「社内英語公用語が実現すれば、国に対する最大の貢献」ということばに感動を覚えました。 まさに日本が変わる時期なのだと思います。逆に今日本が変われなければ、また当分変わらないという事になるでしょう。

取材日:2013年4月12日

 

浜地道雄さん国際ビジネス・コンサルタント。(社)グローバル人材開発、顧問、文教大学国際学部非常勤講師(3月まで)
1943年、上海生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、ニチメン(現・双日)に入社。貿易大学で学んだ後、石油部に配属となり中近東イスラム圏に駐在。世界初の原油長期DD(Direct Deal)に成功。45歳で退職し帝国データバンクへ。アメリカ支社(NY)設立後、翻訳会社、日米通信会社を経て2002年に独立。米国大手情報システム会社Cognizantの日本法人、世界最大級の教育企業Pearson(本部:ロンドン)の日本での活動や、音楽制作会社ドリームライフなど、数社のコンサルタントを務める。

 

 

編集後記

浜地さんは「魅力度」という言葉を何度か使っていた。
言語だけできても、人間的魅力が無ければ他社と交流することすらできない。
英語教育の「小中高大の連携」や一貫教育ということについて良く議論があるが、それ以前に、教育全般的に一貫性があるのか?日本人の素晴らしい道徳が保たれているのか?その部分も大いに議論すべきなのかも知れない。
浜地さんは英語をイスラム圏で覚えたというだけあって、まさに今の時代が求めている「どこでも働ける力」を持っている方だ。
言語だけではなく、宗教や文化の理解、そして多様性の中でコミュニケーションを取れるというスキル。
これは身体で覚えるしか無いのだろう。
まさに今注目を集め始めている「体験型の異文化体験」が今後教育現場でもっと重要視されることになりそうだ。

キンジロー編集長 天野智之:「キンジロー」は閉鎖。天野氏は2020年4月28日付(株)アルク社長に就任。

グローバル人材育成マガジン 「KINJIRO」より転載・加筆。




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