大塚英志『マイナンバーから改憲へ――国会で50年間どう議論されたか』より、自民党改憲案の問題点を指摘した箇所を抜粋してご紹介します。
https://hakutakusha.co.jp/book/9784768480007/
ちなみに憲法十三条とは以下の通りである。個人の尊重、幸福追求権と公共の福祉の関わりについての条項である。
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
個人番号制度がプライバシーや人権の侵害であるというのはこの憲法が国に求めた「個人の尊重」条項に抵触するという「憲法」の問題としてある。(大塚英志『マイナンバーから改憲へ』p.83)
〈中略〉
自民党が押し進めてきた番号制度と憲法十三条には齟齬がある。その齟齬を「法改正」でなく「憲法改定」で埋めようというのが平井の主張だ。つまり「マイナンバー」制度実現のため憲法そのものを変えてしまえ、という主張なのだ。
実際、自民党の憲法改定案ではまさに十三条が「改憲」の俎上に上がっている。その改憲案は以下の通りだ。
第十三条 全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。
「個人」という現在の保守が忌み嫌う語から「個」がとれて「人」となり「公共の福祉」が「公益及び公の秩序」に書き換えられる。些細なことに思えるが「個人」という人権やプライバシーによって担保される人間存在のあり方がまず否定される。それは個人と個人の権利の調整を意味する「公共の福祉」が成立不可能になることと同義である。だから個人の権利を制限するのは「公共の福祉」ではなく「公」「公益」という「国家」の利益がとってかわる。マイナンバー制度では個人情報の民間利用が前提となっている以上、「公」「公益」には企業の権益も包摂されてしまいかねない。
