施設収容は暴力・差別であり障害者権利条約違反
2014年、日本は障害者権利条約を批准しました。この条約は、障害の有無にかかわらず、全ての人が好きな場所で暮らし、行きたいところに行けるといった”当たり前”の権利と自由を認め、社会の一員として尊厳をもって生活することの実現を目的としています。そのため何が必要か、どう考えるべきかが示されています。その基礎には障害者のことを障害者抜きに決めるな、という理念があります。この「Nothing about us, withuout us」という基本理念は、常に政府と対話し、審査し続ける深化する条約に生きています。
こうして条約締結国は、4年に一度、国連障害者権利委員会と「建設的対話(審査)」を行い、その結果を受けて、総括所見(勧告)を権利委員会から受け取ることになります。
▢対日審査に向けて
2022年8月(20年の実施予定が新型コロナウィルス感染症の流行により順延されて)に対日審査が実施され9月に勧告が出されました。
この対日審査にむけて、国内で様々な取り組みがなされました。6月には厚労省で行政、病院団体、障害者団体、障害者団体、研究者などが一堂に会した「地域で安心して暮らせる精神医療福祉体制の実現の向けた検討会」が13回に渡って行われました。その内容はともかく、障害者が議論に加わったのは条約の理念に合致したものです。
これに先立つ2021年10月、日弁連は「精神障害のある人の尊厳の確立を求める決議」を採択しています。
▢日弁連決議
➊医療法・制度の抜本的改革、具体的には精神保健福祉法が定める強制入院制度の廃止、患者の権利を中心にした医療法の制定
➋入院時の尊厳確保
➌地域生活の実現
➍精神障害者の尊厳の回復と差別偏見のない社会の実現
➎国内人権機関の創設を求めるものでした。
▢障害者権利委員会対日審査
2016年日本政府が執行状況報告、19年7月障害者団体がパラレルレポートを提出、10月権利委員会が事前質問を公表、21年10月、日弁連が決議採択、22年6月政府、事前質問への回答という流れを経て、8月第1回対日審査「建設的対話」が行われました。日本からの100名を超える大傍聴団が見つめる中、質問攻めにする各国委員、それに対し、法律論や制度の建て付けの説明に終始する政府代表。具体的回答を求め繰り出す各国委員の質問に答えきれず、時間切れとなってしまいました。キム・ミヨン権利委員会副委員長から重大な懸念が示されて対日審査は終了しました。
▢総括所見(勧告)
22年9月「日本の第一次報告書に対する最終見解」と題する総括所見が発表されました。内容は多岐にわたりますが、精神医療については、強制入院を差別だと指摘。強制入院による自由の剥奪を認めている全ての法廷規定を廃止するように求めています。
また、「精神科病院に入院している障害者のすべてのケースを見直し、無期限の入院を止め、インフォームド・コンセントを確保し、地域社会で必要な精神保健支援とともに自立した生活を育むこと」を求めています。
▢脱施設化ガイドライン
権利委員会は勧告と同時に「緊急時を含む脱施設化に関するガイドライン」を発表しました。ここでは、施設収容は障害者に対する暴力であり、危険にさらし、権利条約違反である、とまで言っています。あらゆる施設収容を廃止し、施設での新たな配置をやめ、施設への投資を控えるべきである。施設入院は、決して障害者保護の一形態、あるいは「選択」とみなされてはならない、としています。
そのうえで12月、撤廃が求められた精神保護福祉法などの改正が成立しました。改善した所、後退した点など注視する必要があります。
(刊行物『精神国賠ー特集地域移行を考える』精神医療国家賠償請求訴訟研究会)