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【2800冊目】町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』


キリ番です。だからといって特になにもないのですが、キリ番にふさわしい本になりました。


それほどに、心に沁み入る本でした。こういう本が売れる今の日本は、まだまだ捨てたもんじゃありません。


主人公の「キナコ」は虐待サバイバーです。母から壮絶な虐待を受け、難病を患う義父の介護までさせられていたキナコは、アンという人物の助けでそこから救い出されます。しかし、その後のいろんなこと(ネタバレになるので詳細は伏せますが)を経て、大分の片田舎に来ても、表面上は普通に振る舞っていますが、キナコの内面は死んだままなのです。


そんなキナコは、かつての自分と同じような虐待を受けている一人の子どもと出会い、彼をかくまいます。その子はしゃべることができず、親からは「ムシ」と呼ばれていたようなのです。キナコはその子を「52」と呼ぶことにします。それは、自分たちが「52ヘルツのクジラ」だから。他のクジラには聞こえない周波数を発し、だから助けを求めても周りに聞こえない、そんな孤独なクジラたちなのです。


この「52ヘルツのクジラ」というのが本当なのかどうか知りませんが、これを物語のど真ん中にもってきたのが素晴らしいと思います。絶対的な孤独と、だからこそ「同じ声」をもつ仲間たちと出会う喜びを、見事に言い表しています。


私たちには、周りにいる「52ヘルツのクジラたち」の声が聞こえているでしょうか。虐待やいじめ、差別や偏見を受けている人たちの声や、見捨てられ、忘れられている人たちの声を。私たちの多くが気づかないだけで、実はこの世界は、そんな「52ヘルツの声」で溢れているのです。


最後までお読みいただき,ありがとうございました!




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