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【2659冊目】ジョゼ・サラマーゴ『白の闇』


これは、すごい。とんでもない小説だ。


突然目の前が真っ白になり失明する、謎の感染症。政府は、目が見えなくなった人々を、かつて精神病院だった建物に収容する。外には銃を構えた兵士。食事が運ばれるほかは、誰も中に入ってこない。目が見えなくなった人たちだけの生活が始まる。


いや、それは「生活」の名には到底値しない。そこで起きるあらゆることを、著者は徹底的に描き出す。トイレに行けないので、糞便はそこらじゅうに撒き散らされる。撃ち殺された人の死骸は、腐りゆくまま放置される。わずかな食料をめぐり争いが起きる。銃を持った荒っぽい男たちが貴重な食料を独占し、引き換えに、最初は貴重品、次に女を要求する。


兵士たちは外に出ようとする患者を銃殺するだけで、何が起きようと中には入ってこない。感染を恐れているのか、勝手に死んでくれ、と思っているのか。そして起こるのは、際限のない恐怖と疑心暗鬼。そこでとことんまで試されるのは、人間の善意と悪意だ。


これは不条理だろうか。だが、新型コロナウイルスの洗礼を浴びたわれわれは、これが現実に起こりうることだと知っている。感染への恐怖から起きる、隔離と差別。本書で起きたような、患者たちの間での殺し合いが、コロナ禍で起きなかったのは、単に「目が見えなくなる」という症状がなかったからに過ぎない。


だからこの本は、感染症のもたらすディストピアを描いたという意味で、まさに現実の似姿なのである。その悲惨さは、唯一「目が見える」一人の女性によって目撃される。彼女は目が見えなくなった夫に付き添うため、自らも失明したと嘘をついたのだ。


ポルトガルが生んだノーベル賞作家による、迫真の悪夢。コロナを知った今だからこそ、読みたい一冊だ。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!




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