- 作者: 中村文則
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2015/04/06
- メディア: 文庫
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前に読んだ『掏摸[スリ]』の姉妹編とのことだが、内容はほぼ完全に独立している。というか、前作の内容自体ほとんど覚えておらず、超重要人物で本作にも出てくる「木崎」の存在すら、すっかり忘れていた。われながら呆れたものだ。
おぼろげに覚えているのは、前作の主人公がスリ師であり、ひどく孤独な人物だったということくらい。そして、本書の主人公であるユリカもまた、いろんな意味で孤独である。セックススキャンダルを演出する「プロ」なのだが、それ以外のほとんど何も、彼女の心の中には存在しない。唯一あるのは、心臓移植が必要な少年、翔太の存在なのだが……
闇社会の中で生きるユリカ、そのボスである矢田、そして「化物」と呼ばれる男、木崎の三者をめぐる、陰惨なパワーゲーム。そこには何の救いもなく、ただひたすらに荒涼とした風景が広がるばかり。そんな世界観の圧倒的な質感を生み出しているのが、無駄がなくスリリングな文体だ。緊張の糸を一度も切らさず、最後まで読み切らせる筆力を堪能した。