- 作者: 絲山秋子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/12/22
- メディア: 文庫
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よい小説だった。せつなさが心に沁み渡った。
想いを寄せる相手は、私を振り向いてくれない。相思相愛の相手がいても、子どもの頃のできごとがトラウマになって、セックスができない。過去を克服しようと姉に会おうとしても、冷たく追い払われる。
人とつながっていても、人はつまるところ、独りである。そんなあきらめと哀しみが、この短い小説を貫いている。面白いのは、そこに人間ならぬ風変わりな「ファンタジー」という神を介在させたところ。人間だけでは行き詰まり兼ねない孤独と孤独の関係が、この「神様」のお蔭で、どこか風穴が開いている。
とはいえ、この神様はほとんど何もしない。ただ居るだけ。でもそれで、不思議と何かが変わる。でも、神様って、実はそういうものかもしれない。
「役に立たないが故に神なのだ」
「役に立たん神さん拾ってしもたわ」という河野に、ファンタジーはこう言い放つ。名言であろう。
敦賀の海や空の描写が美しい。会話は弾むようなリズム感がある。言葉が活きている。本当に、よい小説だった。