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【733冊目】ポール・ヴァレリー『ムッシュー・テスト』

ポール・ヴァレリーの唯一の小説・・・とのことであるが、本書を小説と呼んでよいかどうか、疑問である。ムッシュー・テストはヴァレリー自身の分身のような存在で、精神そのもの、思念そのものをとことんまで純化した存在である。いっさいの熱狂も情動も排し、ただ思索のみに生きる。

ムッシュー・テストは株屋であるらしい。株の動きだけにかかわる日々は、また人間の精神のみにかかわる日々ともいえる。いくつかの部分に分かれているが、個人的におもしろかったのは「マダム・エミリー・テストの手紙」。なんとこの変わり者、ムッシュー・テストは妻帯者だったのである。その奇妙な夫婦生活を妻の側から暴くこの架空の手紙は、ムッシュー・テスト自身の言葉よりむしろはっきりと、ムッシュー・テストとは何者なのかを告げている。

本書は簡単にあらすじや内容を説明できるような本ではない。薄い本ではあるが、要約することすら容易ではない。むしろ、その短い言葉のもつきらめきや精神の脈動をとらえ、そこにヴァレリーの思想のもつ極北点を感じ取れるかどうか、という問題かもしれない。難しい。




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