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『青春ブタ野郎はビーチクイーンの夢を見ない』を読んで

ここ数年追っかけている青春ブタ野郎シリーズで去夏に出た短編集『青春ブタ野郎はビーチクイーンの夢を見ない』(鴨志田一電撃文庫・2025)を年末に読んでいます。青ブタはシリーズとしては既に完結しるものの本作は主人公がまだ高校生であったころの番外編で、短編が3作入っていてやはり印象深かったのは表題作の『ビーチクイーン』です。

いつものようにいくばくかのネタバレをお許しください。『ビーチクイーン』は冒頭

その日、梓川咲太は男子トイレで、女子生徒に遭遇した

(P12)

という不穏な一文からはじまります。咲太がシリーズ通しての主人公で男子トイレにいた女子生徒がビーチバレーの選手かつ本作のヒロインの大津さんで、その二人を軸に物語が進みます。大津さんがなぜそこに居たか?や、咲太はもちろん咲太の友人である双葉理央や咲太の恋人である桜島先輩の協力を得ながらも起きた問題をどうやって解決したか?は本作をお読みいただくとして。

さて、誰もが何かのきっかけに大きく変わる、というわけではありません。それらのことを含め、大津さんが揺らぎつつ悩みつつ自らの最適解を出すまでの描き方が淡々としつつも丁寧で見事で読んでいて違和感ななく、そのせいか、それがフィクションとはいえ嘘っぽくなっておらず、物語の大筋は実際にはありえない現象に沿って書かれてるものの心理描写は精密なので、こういう話があってもおかしくないよな…という読後感がありました。そして、咲太にとっては冒頭から最後まで小さな苦労と小さな悲劇が続くもののそれ以外はおおむねコメディで、なんどか「ふふっ」となったことを告白します。

以下頭の悪い個人的な経験に根差した感想を。

ひとつめ。前作までは「見る」「見ない」がカギになっていて本作も対象物を意図的に「見る」ことが解決のカギのひとつになっているのですが、くわえて、本作では「匂い」がでてきます。というのは咲太が大津さんの存在に気が付くきっかけのひとつが匂いで(P39)、また、大津さんが桜島先輩の匂いを誉める描写もあり(P155)、嗅覚が違和感を含め注意をひくきっかけや好感につながるのは理解できなくもなく、読んでるほうの経験に訴える描写がちいさなことなのですが唸らされています。

ふたつめ。青ブタは食べ物の話題がわりと出てくるのですが今回もあって

「この目が嘘をついているように見えるか?」

「今朝食べたアジの開きと同じ目をしてるね」

「干物の魚は僕たちを裏切らないからな」

(P44)

という会話のあと「確かにアジの開きに裏切られたことはないな」と納得し大津さんは咲太を信用します。わたしもアジの開きに裏切られたことがないので腑に落ちてて、上記と似たいいまわしになっちまうのですが、読む側の体の感覚をコツンと叩き起こす文章にやはり唸らされています。

末尾にシリーズの完結を知らせる著者あとがきが載っていて、ああこれが最後なんだな、というさびしさがあるものの、でも最後に読めたのが上記の湿っぽくならない明るい作品でヨカッタというのもあったりします。2019年から複数年をまたいで小説を追ったのは久しぶりで読んでる間は至福の時間でした…って書きたいところなのですが、青ブタはライトノベルズに区分されるのですが、私はライトノベルズと小説の区分がよくわかってないのでこのへんで。

 




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