『坊ちゃん』の中に天婦羅そばを4杯食べてそれを目撃されるエピソードがあります。私は育ちが東京でそば文化圏で、ので、異郷の地で故郷を思い起こさせる食べ物をたらふく喰う気持ちはわからないでもないのですがそれ横に置いておくとして、目撃されたのちに教えている生徒達にからかわれ、生徒は誰一人としてそれを止めません。それは一見すると笑える描写っぽくしてはあるものの、裏にあるのはその場の集団において異質なことをするやつを監視する社会と異質なものをもつやつへの糾弾です。
ここ数年読んでいた『青春ブタ野郎シリーズ』では主人公の妹である梓川花楓は花楓自身が一気呵成に本を読みたい派で読書を優先し、クラスでそんなことをするのは花楓ちゃんだけで結果既読スルーしたことが原因で複数のクラスメイトからSNSで攻撃を受け排斥にされ、それが物語の前半に深くかかわってきます(『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』)。笑える話ではないけれど、ああこれ天ぷらそば4杯と構造は同じだなあ…などと読みながら思っていました。
どちらもその場で多数である集団がその場での正解決定権を持ち、異質な点がある人をスケープゴートとして攻撃してる構図で、フィクションとはいえ坊ちゃんの居た時代から青ブタの花楓ちゃんまで百年以上あるのですが、そのあいだ日本は変化していないのだなあ、と。
坊ちゃんや花楓ちゃんのように異質な存在をスケープゴートとして設定しそれを攻撃し場合によっては糾弾や排斥してしまうのか、といったら、同質であることが当たり前でそこからの逸脱が許せない、ということが仮の解としてあり得ます。
わたしはアタマが悪いのでどうして逸脱が許せないのか?がいまいちぴんとこないのですがそれは横に置いておくとして、仮に逸脱を注意することがその場に置いて理屈抜きに「正しいこと」だとすれば(でなければたとえば『坊ちゃん』において「4杯は喰いすぎぞなもし」というセリフは出てこないはずで)、逸脱したほうは理屈抜きに「正しくない」ほうに転がるわけで、ので糾弾や排斥という方向へ転がるのは理解はできませんが辻褄は合います。念のため書いておくといま書いたこの「正しくない」とか「正しい」とかはフィクションにおいてその場の多数で決まってしまうあいまいなものなのですが。
話はいつものように横にすっ飛びます。
先月の選挙で日本人ファーストを掲げた政党が躍進しました。なぜがその政党にとってLGBTは7月19日付毎日新聞の報道によれば街頭演説では「要らない」そうで、それが差別には当たらないのはなぜかと毎日が問うても答えがなく、ので既視感が拭えず、理屈抜きにその場におけるその集団の多数が正解をにぎり、スケープゴートを設定し、攻撃することでまとまってる上記のフィクションを途中から思い浮かべていました。くわえて、しばらく本気で理解できなかったのはその政党に投票した人がけっこう多かったことです。ただそれが民意である、と云われるとぐうの音もでないです。ぐう。
話を元に戻すと、坊ちゃんや花楓ちゃんの件は「その場の多数と異なる部分を持つ人」に対して不寛容な態度を示し攻撃しているのですが、繰り返しますがそこに理屈がありません。なんのことはない、最初にそれは周りと違うからよくないという断定があって、断定ゆえに理屈が(続かないしくっつか)ないからです。
以下、フィクションではなくて現実に目を向けると、LGBTや外国人労働者など「その場の多数と異なる部分を持つ人」を「周囲と異なるから注意したり排除すること」が仮に「正しい」と断定してしまえば、そこに理屈がなくても「正しい」と自動的に思考してしまう人がそこそこ居てもおかしくないかもしれない…などと、時間がかかりましたが、先月起きた事態をなんとなく理解しています。
さて坊ちゃんは一日だけ休んでそのあとはガン無視して授業を続け、何か云われたからといってやろうと思ったことを止めるようなことはしていません。花楓ちゃんのほうは花楓ちゃんを攻撃した複数のクラスメイトが逆にほかのクラスメイトから攻撃対象になってしまいます(『青春ブタ野郎はおるすばん妹の夢を見ない』)。
私はどちらかというとセクシャルマイノリティに属し、多数を構成する集団から逸脱している部分があります。起きてしまったことはどうしようもないのですが・もしかしたら息苦しい世の中にこの先なるかもしれぬものの、坊ちゃんと同じくやろうと思ったことを止めるつもりはありません。花楓ちゃんの事例のように排斥を主張したほうが排斥されたら興味深いと思いますがそれはともかく、この先も普段どうりに生活をし忙しいけど時間をやりくりしてここでくだらぬことを書き続けたいと思っています。
やりたいことついでに書くと、アイスの実を日本酒に入れるとおいしいというのを聞いて、日本酒より白ワインのほうがよくね?と考え、先日はよく冷えた白ワインにブドウのアイスの実を入れています。けっこうイけて、やろうと思ったことは止めないほうがいいなと強く思いました…ってねえ真面目に書いてきたのに最後がそれじゃダメじゃん。