
旅先でかなり古びたカフェを見つけた。アンティークと称するよりは、時間の経過とともにただ単に古びてしまっただけのカフェであった。僕はブレンドコーヒーを注文した。自家焙煎のコーヒーで香りもよく、久しぶりに美味いコーヒーを飲んだ。店の入り口のすぐ横の部屋には焙煎機が置いてあった。ドアの隙間から焙煎したてのコーヒーの香りが漂ってくる。運よくなかなかのカフェに入ることができたようだ。
少し時間を潰す必要があったので、店に何年も置き続けられているような古びた登山雑誌を手に取ってページをめくってみた。日本アルプスの特集で、よく見かけるような内容であった。おそらく日本アルプスの特集みたいなものは毎年(そして毎シーズン)繰り返し特集されているのだろう。パラパラと読み流していると、ある記事に目が止まった。それは登山を趣味にしているおじいちゃんが、登山のたびに山(もしくは山小屋)バッジを集めているといった内容のものであった。
そのおじいちゃんは山に登るたびに、そして山小屋に泊まるたびに、そこでしか手に入らない限定バッジを買い求め、自分の帽子やリュックにつけてコレクションにしているのだ。かなり年季の入った雑誌だったので、そのおじいちゃんは既に亡くなっている計算になる。でもおじいちゃんの収集した思い出の山バッジは今でも大切に保存されているかもしれない…。男心をくすぐるなんとも素敵な話である。

ちょうどその登山雑誌を読んだ次の週に四国の剣山に登った。そして僕はそのおじいちゃんのように登山をするたびにバッジを集めてみることにした。剣山のバッジは全部で4種類あったが、大人買いして一度にコンプリートするのも味気ないため、剣山に登るたびに一つずつ買い集めることにした。
そしてこのバッジの収集は、登山以外にも飛び火することになった。剣山登山の翌週に兵庫県神戸市で開催されている「大ゴッホ展」に出かけたのだが、お土産コーナーで思わず「夜のカフェテラス」のピンバッジを買ってしまった。そしてその翌週には広島県の尾道市まで車で行き、そこで自転車を借りてしまなみ海道のサイクリングを楽しんだ。そして途中の生口島にある平山郁夫美術館でお土産としてクリップを買ったのである。
剣山のバッジ、ゴッホのピンバッジ、平山郁夫のクリップというそれぞれ形状が違ったものをどうやって一つのコレクションにしようか頭を捻らせた。とりあえず100円ショップに行けば何かあるだろうと思い、近所の100円ショップに行ってみたら丁度良いサイズの穴あきボードを見つけることができた。

↓ 拡大するとこんな感じ

剣山バッジと平山郁夫クリップは透明のテグスで目立たないように固定した。ゴッホのピンバッジはボードの厚みで固定できなかったので、彫刻刀でボードの裏を掘って薄くすることで固定することができた。あとは「◯年◯月◯日、どこどこに行った」みたいなメモを貼り付ければ完成であるが、手書きにしようかパソコンで作ろうか迷っている。
いずれにしても、このコレクションを始めたおかげで「次はどこに行こうかな?」という意欲が湧いてきた。毎週のようにやってくる休日を何気なく過ごすのも悪くはないが、やっぱり自分の人生は”有限”なので、体が動くうちに(そんなに高齢ではないけど)できるだけいろんなところに出かけて楽しむべきだと思った。僕の背中を押しをしてくれるのがこの新しく始めたコレクションだ。あの古びたカフェで読んだ年代物の登山雑誌に出ていたおじいちゃんも、動かなくなってきた自分の体に鞭を入れるために”登山バッジ”を集めていたのかもしれない。

それではまた^ ^