
「どうすれば働かない人間を働かせることができるか?」ということについて考えてしまうことがある。これは僕が「会社や組織を経営する立場」にあるからではなく、忙しく働いていた時代からの"怨念"みたいなものがそうさせるのかもしれない。現時点では週休3日で残業なしの生活をしているので、どちらかと言えば「働いていない」部類に入ってしまうのが僕の現実だ。
以前働いていた公立病院では”外科系”の医者が朝から深夜まで(そして翌日の朝まで働いて、そのまま夕方まで…)働いている一方で、”内科系”の医者は研修医に仕事を押し付けて、朝から夕方の定時までネットサーフィンだけして帰宅するというような病院だった。それなのに外科系の医者と内科系の医者の給料にはほとんど差がなかった。下手したら、虚偽の時間外労働を申請している(悪徳)内科医の方が給料が良い場合もあったかもしれない。
ボロボロになりながら働いていた僕ら外科系の医者は、ヘラヘラと笑いながらネットサーフィンをしている内科系の医者を見て「こいつらにどうやったら仕事をさせることができるだろうか…」と、怨念に溢れた気持ちで(そして毎日血反吐を吐きながら)仕事をしていたのである。まあでも自らそのような過酷な診療科を選んだのだから「それはあんたの自己責任でしょ?」と言われたらそれまでなのだが、せめて働いている人間にはそれ相応の報酬があっても良いのでは?と、行く先々の公立病院でそう思い続けていた。ちなみに私立の病院では、ある程度の報酬の差はあった。公立病院が酷すぎるのである。
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話を元に戻すが、今勤務している病院では、働いたら働いただけインセンティブ(お金)が発生するシステムだ。しかしこれは常勤医のみの特権であり、僕のような週休3日の嘱託医にはこの権利は与えられていない。具体的には時間外労働をすれば、その時間に応じてインセンティブが発生する。それプラス、常勤医が入院患者に対して行なった診療に対して支払われる診療報酬の◯◯パーセントが毎月の給料に加算される仕組みである。なので患者さんを入院させればさせるほど、そして高額な医療を施せば施すほど、常勤医なら毎月の給料が増えるという仕組みなのである。
しかしそこでインセンティブを得るのは、患者さんを入院させる常勤医だけであり、看護師をはじめその他の職種の人間には1円たりともインセンティブが発生しないのである。この場合に一番おいしいのは、できるだけたくさんの入院患者を入院させ、そして放ったらかしにしている医者だ。通常であれば、入院患者さんの受け持ち数が多いほど仕事の量は増えて大変なのだが、田舎の病院ではそこまで手のかかる医療レベルを病院側に求めてくる患者さんはいない。とにかく入院させてもらえるだけでも「ありがたや〜」と言われ、放ったらかしにされて入院中に亡くなったとしても「先生、お世話になりました」と寸志を渡してくる患者さん家族もいるのである。
病院の中はブラックボックスであり、主治医の先生がどれだけ患者さんのことを思っているかなんて外からは全く分からない。入院させたけど、退院(死亡退院も含め)するまで一度も患者さんの顔を見に行かないような医者がいるのが現実である。なので、できるだけ多くのインセンティブを得るためには、できるだけ多くの手のかからない患者さんをいかに多く入院させるかにかかってくる。あとは看護師さんに任せておいて、主治医は電子カルテの遠隔操作で点滴や検査をオーダーするだけでいいのだ。
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病院を一つの企業としてみるならこの仕組みは悪くないと思う。病院という企業は、患者さんを入院させなければ利益が上がらない。そして患者さんを入院させることができるのは医者だけである。医者が「この患者を入院させる」と言わなければ、どんなに状態の悪い人でも「俺はその病気の専門じゃないから、よその病院で診てもらって」と追い返されてしまう。自分の専門領域でも「今病院にいないと言っといて」と平気で居留守を使うこともある。医者にはそれくらいの圧倒的な権限があり、またそれと同時に病院の経営を握っているキーワーカーになるのだ。
やる気に満ち溢れた医者、正義感しかない医者、どんな激務でも黙ってこなし続ける医者、朝早くから病院の仕事を率先して受けている医者もいれば、自分の都合でしか動かない医者、自分のQOLしか考えていない医者、お金のことしか考えていない医者、すぐにブチギレて怒鳴り散らす医者など実に様々である。このように多岐にわたる医者たちを、どうすれば正当に評価し、それ相応のインセンティブを発生させ、それと同時に医者以外のスタッフ(受付係、看護師、リハビリ、ヘルパー、栄養士、事務職、掃除のおじさんなどなど)にもきちんとインセンティブが発生するようになるのか?一見不可能のように思えるが、長年この問題を考え続けた僕は、つい先日素晴らしいアイデアを思いついたのである。
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少し長くなったので、そのアイデアについてはまたの機会に。とりあえず、この三連休の最終日をゆっくり楽しむことにしよう。ブログは僕にとって表現の場であり、発信の場であるが、実は外付けハードディスクの役割も担っている。忘れてもいいけど何かの機会に役に立つかもしれないアイデアを記録しておく媒体がこのブログである。これだけ書いておけば、このブログのタイトルを見ただけで「働かない医者を働かせ、それに見合ったインセンティブを正当に割り当て、かつ他の職種のスタッフもきちんと恩恵を受け、結果的に患者さんにもより良い医療を提供できる」方法を具体的に思いだすことができる。
ブログという媒体を自分のメモリー(記憶)の外付けハードディスク役として使うというアイデアもなかなか面白い。全てその時の思いつきで書いているテキトーなメモブログなのであ〜る。

それではまた^ ^