
どこの職場でも「出来るやつほど早く辞める」という傾向があると思います。今までにいくつもの病院で働いてきましたが、大学病院医局という闇組織に勤務先を(勝手に)決められてしまう医師以外の職種の人で、「あの人はホントに仕事ができるな〜」という人は大抵の場合、数年くらいでその職場から去っていってしまいました。ちゃんと統計を取った訳ではありませんが、そういった傾向ってどんな職種にもあると思います。僕が今勤務している病院でも、残念ながらそんな感じで優秀な人材の流出が続いています。
僕たち医師が診療の仕事に専念するために、患者さんの保険や介護に関する書類を代わりに書いてくれる事務職が病院には存在します。15年くらい前は、病院に生命保険の書類とかを提出してもなかなか返ってこない時代がありましたが、その書類作成代行の職種の人が誕生して、書類作成率は圧倒的に改善したはずです。それまでは書類なんて一番後回しでした。患者さんから苦情が来ても「忙しくて書類を書けません」の一点張りでした。ある病院なんて、医者に書類を書かせるために「一枚書いたら500円(チャリ〜ン!)」みたいなインセンティブをつけていましたが、それでもやっぱり書類作成は後回しでした。
僕の勤務先の病院にも書類作成担当の事務の人がいて、その人をここではNさんと呼ぶことにします。Nさんは僕よりもずっと年配の女性ですが、常にテキパキと仕事をこなし、あちこちからかかってくる電話にきちんと対応しながら、病院内をいつも忙しく小走り(本当は危険なので禁止です)で移動しています。僕のように他の職員さんと井戸端会議で時間を潰したり、仕事の合間に診察用ベッドの上でストレッチをしながら本を読んだりするような不真面目なことは一切しない超優秀で仕事の出来る女性です。そんなNさんが先日突然「ぐるぐるねこ男先生、今までお世話になりました」と退職が決まったことを打ち明けてくれたのです。
書類作成の仕事が本業なのですが、他の人が面倒くさがってやらない仕事も全て引き受けて完璧にこなしていました。しかしそれらの仕事を押し付けてくる人たちがサボっている姿(ネットサーフィンや買い物、お菓子を食べながら雑談してサボっているなどなど)を見続けてきて、とうとう気持ちの糸が切れてしまったとのことです。Nさんは子供の頃から学級委員や部活動のキャプテンなどをするなど、元々の能力が高くてリーダーシップに長けた人だったようです。他の人よりも仕事の処理能力が高かったせいで、職場では「あの人にやらせとけばいいやん」みたいな空気感が蔓延していたようです。そして上司からも一目置かれていて「最後の砦はNさん頼み」みたいなところがありました。
しかし、期待に応え続けてきたNさんは燃え尽きてしまい(というよりは、仕事をしない人たちに呆れ果ててしまい…)、新しい職場へと旅立つことになったのです。仕事ができすぎてしまう分、仕事ができない人たちへの当たりや言葉遣いもキツかったという話も耳に入ってきます。自分の仕事の範囲を越えて期待にこたえ続けてきた結果、まわりから面倒な仕事をどんどん頼まれ、さらにその面倒な仕事も完璧にこなして期待にこたえてしまうという悪循環に陥ってしまったようです。ストレスを溜め続けたNさんは仕事のできない職員に強く当たるようになってしまい、逆に「あの人(Nさん)ちょっと口悪いし調子に乗ってるよね」みたいな陰口を叩かれるようになったのです。

正義感に溢れ、仕事を誰よりも完璧にこなし、ずっと職場に居続けていて欲しい優秀な人が燃え尽きて去っていく一方で、隙あらば手を抜き、仕事は不完全で、若い職員をイジめたり優秀な職員の陰口を叩き、早く職場から去ってほしいんだけれど、一応休むことなく(そして辞めることなく)働き続けてくれるポンコツな人がいます。優秀で真面目な分、まわりの手抜き仕事を許せない人と、ポンコツで不真面目な分、他の人となんとな〜く仲良くやっていける人のどちらが職場にとっていいのかなあ?って、Nさんの退職をキッカケに考えてしまいました。
まあでも人として必要最小限の正義感を持って、ある程度手を抜けるところは抜きつつ、まわりともうまくやって、出来るだけ長くその職場に勤務し続けるってことが、社員に求められる一番の資質なんでしょうね。今の僕は割り切ってそんな仕事のスタイルを選んで社会貢献できるよう努めています^ ^

それではまた^ ^