
「アンダーマイニング効果」とは、金銭などの報酬を与えることで、逆にモチベーション(やる気)が下がってしまう現象のことを言います。医療の現場でも、このアンダーマイニング効果が見受けられることがあります。以前、僕が指導していた研修医の先生(ここではY先生と呼びます)が、初期研修期間を終えた後に、より高い報酬を求めて都会の病院へ就職しました。その病院では自分が受け持った入院患者さんの診療報酬によって、自分の給料にインセンティブが発生するという給与システムでした。要するに、より多くの患者さんを入院させ、できるだけ多くの診療報酬を発生させると、自分の給料もそれだけアップするという”努力が報われる”システムの病院でした。Y先生は水を得た魚のように、夜間休日を問わず働きまくり、給料はどんどん増えていったようです。
Y先生が僕の元を巣立ってから2年くらいが経過しました。学会で久しぶりにY先生と再会したのですが、以前のように働く意欲がなくなったと言い出したのです。聞くところによると、昼夜を問わず働きまくった結果、インセンティブが発生し過ぎて、とうとう上限値に達成してしまったとのことです。年収が2,500万円に到達したけど、1,000万円くらい税金などで引かれて、手取りは1,500万円。これ以上頑張っても年収は上限マックスだし、逆に少しでも手を抜くと給料が減ってしまうので、いろんな意味で仕事をがんばるモチベーションが下がってしまったとのことです。僕なんかよりも圧倒的に稼いでいるY先生なのに、見る影もないくらい仕事に対する意欲が低下していました。まさにアンダーマイニング効果そのものです。
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ちなみに僕の今の給料は、定額給+時間外手当という契約で働いています。これまで何年も働いてきましたが、時間外手当を1円もつけることがないくらい平和な病院です。給料が定額制なのでインフレにはすごく弱いし、ボーナスや退職金も出ません。そうなると、働かなければ働かないだけ得するような給与システムということになりますが、手を抜くようなレベルの仕事は一つもないので、やるべき仕事+αの仕事も余裕を持ってこなしています。そんな感じなので、僕自身はアンダーマイニング効果で悩むことなんて絶対にありませんが、僕なんかよりもよっぽど世の中の役に立っていて、僕なんかよりもずっと稼いでいるY先生のような人が、実はアンダーマイニング効果で悩んでいるんだってことを、あらためて知ったのでした。
我が家の子育てでも、このアンダーマイニング効果には気をつけています。例えば、うちの子供は部屋の片付けがすごく苦手です。このまま大人になってはマズイんじゃないかと思い、最初のうちは「週末、自分の部屋の掃除ができたらお小遣いをあげる」というルールを決めて、部屋の掃除を促していました。しかし、お小遣いをもらうために部屋の掃除をするようになってしまい、「気持ちよく生活するために、部屋の掃除をする」という、本来の内的な動機づけを低下させてしまう結果となったのです。このままではよくない方向へ進んでしまうと気がついた僕は、お小遣いをあげるという報酬よりも、部屋の掃除をした子供に対して「お!すごくきれいになったじゃないか」という”声かけ”を意識してするようにしました。すると以前と比べ、子供がより積極的に自分の部屋を掃除するようになったのです。掃除が終わるといつも「掃除したから見てほしい!」と、目をキラキラさせながら僕を呼びにくるようになりました。
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まとめになりますが、報酬を与えることで逆にモチベーションが低下してしまう「アンダーマイニング効果」を防ぐ一番の方法は”声かけ”だと思います。これは、どんな人間でも持っている「承認欲求」も満たしてくれるため、報酬としてお金をあげたりするよりも”声かけ”の方が圧倒的に効果的です。僕もアンダーマイニング効果に襲われるくらいの報酬をもらってみたいですが、給料定額制のサブスクリプション男なので、地道に投資でお金を増やすしか道はないのです…。ちなみにこの記事は、広島の宮島旅行へ出かける前に書きました。この記事がアップされる頃、僕は大雨の中で厳島神社を訪れている可能性があります。気持ちが折れてなければ、雨の宮島の旅行記も書こうかなあって思っていますが、さてどうなることやら…(笑)

それではまた^ ^