以下の内容はhttps://gundamer.hatenablog.com/より取得しました。


【Afterwar不定期更新に変更のお知らせ】

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機動戦士ガンダムAfterwar〜戦後の戦士たち〜」を読んで頂きありがとうございます。

 

これまで毎週土曜日に更新してきた「機動戦士ガンダムAfterwar〜戦後の戦士たち〜」ですが、本職が大変多忙になり、これまでのように毎週の更新が困難になりました。

そのため、誠に勝手ながらこれまでの定期更新から、不定期での更新に変更させていただきます。明日更新予定の第二十三話「地球の重力」の更新も見送らせていただきます。

楽しみにしていただいていた方には大変申し訳なく思っています。

更新の間隔を空けることでこれまで以上に充実した内容にさせていただきますので、これからも「機動戦士ガンダムAfterwar〜戦後の戦士たち〜」をよろしくお願いします。

 

2022.1.28 uvertime

【第二十二話】ガンダム再生計画

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機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~

【第二十二話】ガンダム再生計画

 

ガンダムアムロ・レイの活躍によりジオンに『白い悪魔』と言わしめた連邦を代表するモビルスーツであることは誰も疑いを持たないだろう。知っての通り戦時中は余剰パーツを使った量産タイプも含め10数機のガンダムタイプが投入され、いずれも高い戦果を挙げていることは、もちろん機体の性能もさることながら、『ガンダムは恐ろしい敵』というイメージをジオンに植え付けたことも間違いないだろう。戦後一年、連邦の戦後処理もようやく落ち着ちついた。そしてジオン残党の動きは今はおとなしいが、これが奴らの再決起の機会をうかがっているものだという考えは否めない。そこで今回新たなモビルスーツの開発計画の一つとして『ガンダム』という名前を前面に押し出し、抑止力とすることも目的の一つだ。そして先にも少し述べたが、この先本格的なプロジェクトとして新型ガンダムの開発計画も立ち上げる予定となっている。そのためにも今回の『ガンダム再生計画』は、今後の連邦のモビルスーツ開発を左右する非常に重要な計画となることを肝に銘じてほしい。ここまでで何か質問はあるか?」

コーウェンは一度話しをやめ、質問を仰いだが、特に誰も質問しなかった。

「うむ。では改めて君たちは1月1日付けで第802独立試験部隊に編入されたわけだが、この部隊は今回のプロジェクトのために新設された部隊だ。三小隊として、ミリアルド大尉を第一小隊長、シンジ中尉を第ニ小隊長、ヨナ中尉を第三小隊長として編成を組んでもらう。詳しい編成については明日改めて話しをする。他の隊員たちも今日着任している。今日は君たち小隊長のみでの話しだ。明日は全員でブリーフィングを行う。作戦開始は明後日を予定している」

コーウェンは水を飲んだ。話も終わりそうな雰囲気になっている。

「繰り返しになるが、今回のプロジェクトは今後の連邦の軍事体制を大きく変えるプロジェクトにするつもりだ。上層部にはまだまだ大艦巨砲主義の体質が根強く残っている。先の大戦では我が軍のモビルスーツは思いの外機能しなかったのが私の所感だ。結果的に数で圧倒したに過ぎなかったと思っている。上層部たちの考えを正すためにも今回のプロジェクトは是非とも成功させねばならないし、後塵を配したモビルスーツ開発についても大きなアドバンテージを持たせたい。以上だ」

全員立ち上がって敬礼した。

「うむ、よろしく頼む」

コーウェンも敬礼で返した。

「この後は三人ともフリーとする。但し、指定区域からは出ないように。明日の朝同じ時間にこのルームでブリーフィングだ。詳しい事は各マネージャーに確認してくれ」

コーウェンは三人それぞれに声を労いの声をかけた。

「シンジ中尉は久しぶりの地球だな。慣れるのに少しかかるかもしれないが、君には特に期待している。頑張ってくれ」

コーウェンはシンジの右肩に手をポンと乗せた。

「は!、ご期待に添えるよう全力を尽くします」

シンジが敬礼するとコーウェンは付き人と共に702会議室を後にした。

やはり最初に口を開いたのはヨナだった。

「ちょっと、びっくりだよね!ガンダム再生計画だって!私たち新型のガンダムのテストパイロットになるみたいね」

「今回はまずはRX-78の再テストといったところだな。オレもガンダムタイプには搭乗したことがないから、今から楽しみではあるよ。そういえば、シンジは今はガンダムタイプにのっているんだってな」

「え?うそー、私聞いてないわよ。何タイプ」

「元々はジム・ドミナンスだったのを改修してもらったんです、モーリン大尉に」

「なるほどな。でもドミナンスのフレームならガンダムとしても充分な性能を発揮できるだろうな」

「はい。元々ドミナンスだったとは思えないパワーと機動性ですね」

「私のジムスナイパーIIもチューンしてもらう時に顔をガンダムにして貰えばよかったなー」

両手を頭の後ろで組んで、少し上を見ながら残念がったヨナは、

「それに、私たち隊長だよ」

急に話しを変えた。

「ヨナは隊長の経験はないのか?」

「リーダー的にまとめた事はありましたけど、こんなに明確な小隊長としては初めてです」

「俺もですね」

「特に二人は大抜擢といったところだな」

シンジとヨナは目を合わせて少し歯に噛んだ。

「この後はどうする?一応自由行動という事だ」

「また夜は三人で会いたいですね」

「そうだな。じゃあシンジの部屋はどうだ?」

「さんせー!」

ヨナは右腕を垂直に上げた。

「もちろん大丈夫です。まだ荷物もまとまって無くて殺風景ですが」

「私は気にしないから、お酒いっぱい持っていくね」

いや、こっちが気にするから、と思いつつ、この辺のリズムもジョージと重なる。

ヨナは体全体からウキウキ気分が溢れ出していた。

「本当に大丈夫なのか?」

ミリアルドが念のためにもう一度確認した。

「はい、もちろんです。自分も二人の話しを聞くの楽しみです」

「でしょー」

まだまだウキウキ気分が続くヨナ。

「聞いたな?ミハエル、スケジュールよろしく頼む」

「わかりました」

「ロレンツァ、私の方もお願いね」

「オッケー」

ミリアルドとヨナはお互いのマネージャーに確認すると、

「アンディ、こっちもよろしくな」

「了解です」

「じゃあ、一旦ここを出よう」

「はい」

シンジとヨナは返事をはもると、ミリアルドとマネージャー達と共に702ブリーフィングルームを出た。

長い長い通路を歩き、エレベーターを乗り継いでようやく本部ビルの建屋を出た。

「本当に広いわね。また明日ここに来るかと思うとなんか気が重いわ」

ぐちぐち言うのもヨナの性格だ。

「でもここにいる将軍達も毎日こんな広いビルを行き来しているんですかね」

「彼らの行動範囲なんてたかが知れてるさ。一日中同じ部屋にいることが殆どだろう」

「そうですよね。おじさん達が毎日歩く距離じゃないですもんね」

「ヨナ、口を慎め」

「ごめんなさい」

ミリアルドがヨナを制したが、ヨナの表情からは反省の色は微塵も感じられない。

シンジは二人のやり取りを見ながら、以前三人で共に仕事をしていた時を徐々に思い出し始めていた。

「何よ?シンジ」

「いや、なんだか懐かしいと思ってね。この三人で連邦のモビルスーツの歴史が始まって、また新たな連邦のモビルスーツをまたこの三人で作れるんだと思うとね」

「コーウェン将軍もそこも含めて我々に白羽の矢を立てたのだろう。また我々の手で連邦に新たな歴史を作ってやろうじゃないか」

「そうですね。ではまた夜お待ちしています」

二人と別れたシンジは、一度自宅に戻ることにした。

ああは言ったものの、やはりこの状況で他人を入れるわけにはいかない。

「手伝ってくれるか?」

「もちろんですよ」

どうせやらなければいけない片付けだ。

後回しにするつもりだったが、重い腰を上げることにした。

 

【第二十三話】地球の重力 に続く。

2021年1月29日12時更新予定

 

【注記】この物語はフィクションであり非公式です。また、公式には出てこない機体も登場したり、一部独自の設定があるなど、パラレルワールド的な物語である事をご了承ください。

【第二十一話】ジョン・コーウェン

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機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~

【第二十一話】ジョン・コーウェン

 

宇宙世紀0081年1月8日 9時

「おはようございます」

呼び鈴の次にアンディの声がインターフォンに響いた。

「おはよう、今出る」

シンジも既に準備は万端だ。襟のホックも今回は溜める。現地で提出するという辞令も持った。

玄関のドアを開けると、アンディは待ち構えたように敬礼していた。

「おはようございます」

アンディは改めて挨拶した。

「そんなに堅苦しくする必要ないっていつも言ってるだろ」

「そういう訳にはいきませんから」

もうこのやり取りは何度も続いている。

二人はエレベーターで一階に降り、エントランスからマンションを出た。

エレカに乗り、昨日の発着場とは違う、ジャブロー最大の司令塔に向かう。セキュリティを通過すると目的の建屋に到着した。ただでさえ広いジャブローの敷地内にあって、一際目立った大きさの建屋だ。

建屋の入り口からブリーフィングルームまで歩いて10分では辿り着けない。

アンディが時間に余裕を持って迎えにきた理由がよくわかる。

たどり着いた702ブリーフィングルームの扉の前に立つと、アンディが軽くノックしたのちドアを開けた。10人程度が入ることができるブリーフィングルームには既に4人が席に座っていた。

「ミリアルド大尉、それにヨナも」

シンジは知っている顔を見て、即座にその二人の名前を叫んだ。

「シンジか!?。久しぶりだな、元気そうで何よりだ」

「また会えて嬉しいよ、シンジ」

ミリアルド・コーナー大尉とイ・ヨナ中尉は共にRX計画時代から苦楽を共にした同志だ。

二人共シンジと同様、元はエンジニアとして携わっていたが、現在はパイロットだ。

シンジはまたしても二人と握手した。

「私が最初に来て待ってたらミリアルド大尉が入ってくるんですもの、ビックリしたわよ。そうしたら今度はシンジでしょ、もうビックリ通り越しちゃったよ」

ヨナは22歳の女性でとても明るく、ちょっと破天荒な感じはジョージに似ている。

「俺も何も聞かされてなかったからな。またこの三人で仕事ができるってことなのかな?」

ミリアルドは45歳のベテランだ。テムやモーリンと同世代の彼はシンジやアリスのような新人の教育係的な存在だったことから、二人はもちろん、周りからの信頼も厚い。

「また後でゆっくり話す機会があればいろいろ伺いたいですね」

シンジはミリアルドの方を向いて話かけるとヨナの方にも顔を向けた。

「もちろんそれくらいの時間は設けてある」

野太い声とと共にその声の主、ジョン・コーウェン中将が付き人と共に入ってきた。

三人はとそれぞれの付き人も、一瞬ビクッとした後、立ち上がってコーウェンに向かって敬礼した。

コーウェンも軽い敬礼で返した。

「急に来て済まなかったな。三人が揃ったと聞いたもんでな。少し早いが始めようかと思うがどうかね?」

「もちろん大丈夫です」

ミリアルドはそう返事をしてシンジとヨナを見たが、二人共首を縦に振った。

「では始めよう」

コーウェンは壇上に向かった。

三人が着席したところで、

「まずは君たちに渡した辞令を受け取りたい」

と言うと、付き人に辞令を取りに行かせた。

付き人が三人の辞令を受け取って鞄にしまうのを確認すると、

「この会議は極秘事項であるため資料は配布しない。このモニターに映し出すのみでメモも取ってはならん。各自頭に叩き込むように」

とコーウェンは少し厳しい顔で念を押した。

「は!」

三人は声を揃えて返事をする。

モニターに資料を映し出す前にコーウェンは言った。

「今回三人に集まってもらったのは、薄々気付いているとは思うが、連邦が今後進めていくモビルスーツの開発について、君たちに手伝ってもらうためだ。詳しい話はこの後話すが、君たち三人はいずれもRX計画から携わるエンジニア出身のパイロットだ。数多い連邦のモビルスーツパイロットの中でも、モビルスーツを技術的に理解して操作する事ができる数少ない人材だ。ワシもエンジニアとして今回のプロジェクトを立ち上げる事になった。エンジニアとしての意見と考え、それをコックピット操縦システム他各システムにフィードバックし、自らパイロットとして実証試験をする。それを君たちにはやってもらいたい。連邦のモビルスーツ開発は、戦時中に急場凌ぎで進められたところが多い。各拠点独自の技術が盛り込まれ、それら自体は大変高い技術力で確立されているが、規格やシステムが統一されていない。それらを統一していき、より高い技術力をもたらしていきたいと思っている。少し長くなったが本題に入る」

コーウェンは正面の大型モニターに資料を映し出して、壇上に置いてあった水のボトルを口に含んだ。

コーウェン中将は戦時中は技術少将としてモビルスーツ開発を推し進める改革派としてレビル将軍と共に尽力してきた。

シンジも戦時中に新型の陸戦機のテストパイロットとしてジャブローに入った時に一度だけ面識がある。

コーウェンはその時にシンジがエンジニア出身のパイロットであることを知り目を付けていた。

シンジもコーウェンの独特の風貌と、見た目と違い部下に対する接し方がとてもマイルドであることから強く印象に残っていた。

シナプスがコーウェンを慕う理由が今回接して改めて分かった。

「先にも述べた通り、今回のプロジェクトの本幹はバラバラになっている技術の統一だ。モビルスーツの開発は宇宙ではサイド7でのみ行われはしたが、地球では各開発拠点で独自に開発を行い技術を確立して、それぞれで高性能機の開発を成功させている。それが故に君たちも耳にした事はあるかと思うが、ブルーディスティニーのEXAMシステムの様な軍が承認していないシステムも開発されてしまったことは軍としては大いに反省材料と言える。しかしながらシンジ中尉はサイド7でRX-78の開発に携わっていたと思うが、連邦のモビルスーツの原点はやはりRX-78と言える。結果的にアムロ・レイの操縦技術によって78はジオンに白い悪魔と呼ばれるようになったのだが、それはあくまでも結果であって我々の技術の蓄積によるものではない。今回のプロジェクトは正規のルートによる技術力の蓄積に基づいたモビルスーツの開発である」

コーウェンは手元のパソコンで大型モニターに映し出されている資料を見ながら、たまにこちらを見ながら説明を続けた。

「まず君たちには各拠点に飛んでもらって情報収集をやってもらいたい。本来は優秀なパイロットである君たちの仕事ではないのかもしれないが、我が軍の重要かつ非常に機密性の高い情報を扱うこともあり、君たちにお願いしたい次第だ。当然危険が伴う任務となるため、各一個小隊とし君たちを隊長とした上で編成を組んでもらう。その編成はワシの方で組んであるから、それは後ほど伝える」

コーウェンはまたボトルの水を飲んで一息ついた。

「今回のプロジェクトはこの先に予定されている大きなプロジェクトの準備段階の位置付けとなっている。それまでに情報収集を終わらせてほしい。それが完了したらそのデータを元に一機のモビルスーツを建造する予定となっている。それこそがファーストロットのRX-78だ。君たちも知ってはいようが、ファーストロットのRX-78は三機建造され、-1と-2は大破したが、-3についてはマグネットコーティングのテスト後にこのジャブローで保管してある。

今回新たに-Xとして新造し、-3と共に様々なテストを実施する予定だ」

モニターにはグレー基調の-3、いわゆるG-3ガンダムが映し出されている。

「そして今回のプロジェクトの名称だが、まだ仮称ではあるがこう名付けた。『ガンダム再生計画』」

 

 【第二十二話】ガンダム再生計画 に続く。

2021年1月22日12時更新予定

 

 

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ジョン・コーウェン ©創通・サンライズ

【第二十話】ジャブロー

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機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~

【第二十話】ジャブロー

 

宇宙世紀0081年1月7日1時

 

シンジとストームブリンガーを乗せたHLVは定刻通りに地球の重力圏まで接近していた。もう地球は目の前だ。

地球で言う深夜の時間帯だが、シンジは睡眠時間を調節してこの時間は起きていた。

宇宙世紀と言えども大気圏突入はそう何度も経験する物ではない。やはりその光景は目に焼き付けたいものだ。

窓からはアメリカ大陸を見ることができた。ジャブロー南米大陸にある。ここから地球を一周して落下軌道に乗って大気圏に突入する。あと一時間くらいだ。

「間も無く大気圏に突入します。案内がありましたらシートベルトを着けてください」

搭乗してから案内や話し相手になってくれていた輸送班の上等兵が声をかけてくれた。

「眠っちゃうといけないから、もう着けとくよ」

冗談混じりて笑いながらベルトを着けると、上等兵も笑いながら

「お願いします。トイレも今のうちに」

と返した。

窓を見るとアメリカ大陸は見えなくなり海が広がっていた。

「太平洋か?」

シンジはボソッと独り言を言った。

こんなに間近で地球を見ることも滅多にない。地球の美しさ、大きさを改めて実感する。

気付けば地球にどんどん近づいている。間も無く大気圏突入だ。

今まで何度も戦地を潜り抜けたシンジだが、大気圏突入となると別の緊張感がある。

「本船は間も無く大気圏に突入します。シートベルトの着用を確認してください」

船内にアナウンスが流れた。

いよいよだ。船内は既に重力を感じるようになってきた。

窓のシャッターが閉まると徐々に船体が揺れ始めた。

突入から突破まで約30分ほどこの揺れが続く。決して気持ちがいいものではないが地球に降下していると思えば気分も高まる。

目をつむって揺れが収まるのを待った。

そして揺れが徐々に収まってくると窓のシャッターが開いた。

自然の景色が目の前に広がっている。これを見て感動しない人間はいないだろう。例えスペースノイドやルナリアンであっても、地球に降りて大地を踏まないで死ねる人間などいない。

地球はやはり人類にとって故郷なのだ。

全身に重力を感じる。コロニーやルナツーのような擬似的な重量とは違う。高度が高いため完全な1Gではないが、これが大地の重力だ。

HLVは姿勢を整え減速を始めた。

 

7時

HLVはジャブローへの着陸体勢に入った。

南米大陸熱帯雨林地帯の地底深くにそびえる地球連邦軍最大の基地であるジャブローは強固な地盤で覆われており、巨大な基地であるにも関わらずメインゲートの場所は知られておらず、長く秘密基地的な存在となっていた。

それが一年戦争でジオンの特殊部隊によって発見されはしたが、ジャブローのとてつもない規模の大きさから、難攻不落の基地であることに揺らぎはなかった。

そんな地下基地であるジャブローのHLV着地場のゲートは陸地がスライドすることで現れ、シンジが乗ったHLVは着陸した。

機首部が上を向いて着地する構造のため、重力圏での乗り降りはそれなりの苦労がある。

しかも宇宙から降りてきたばかりの体ではかなり堪える。

輸送班の乗組員は慣れた動きをしているが、シンジはそうはいかなかった。

上等兵の手を借り肩を借り搭乗ゲートまで辿り着いた。手荷物も持ってくれた。

「中尉殿、お疲れ様でした」

上等兵は100%の敬礼をしてきた。

シンジはまだ腰が重かったため軽く敬礼で返した。

「ありがとう、これからも頑張ってくれ」

「こちらこそありがとうございました。中尉殿のますますのご活躍、期待しています」

シンジはこの上等兵にはかなり世話になったため、滅多にしない握手で返した。

搭乗ゲートからエレベーターまで歩くのだが、全身に重力をヒシヒシと感じていた。

エレベーターに乗り込みこのエリアの「一階」に降りた。

エレベーターのドアが開くと、そこには懐かしい顔の男が立っていた。

「中尉殿お疲れ様でした」

「アンディ、久しぶりだな」

「はい、ご無沙汰しております。またお会いできて光栄です」

彼はアンドリュー・スパイク、階級は軍曹。大戦時にシンジが少しだけジャブローに滞在していた時があり、その時の付き人的存在だったのが彼だ。シンジのように彼を親しみを持ってアンディと呼ぶ人間も多い。

歳は23とシンジより年上だが、シンジの方が階級が上だ。

「また生きて会うことができて嬉しいよ。また俺のマネージャーなんだろ?」

「はい。よろしくお願いします」

「こちらこそ」

「それと、中尉昇進おめでとうございます」

アンディは満面の笑みだ。

「ありがとう」

また握手をした。地球に降りると握手をするものなのか?

「こちらです」

アンディが手を向けた先に一台のエレカが止まっていた。

二人はエレカに乗り込み、アンディの運転で出発した。

「まだ何も聞かされてないんだけど、この後はどうすればいいんだ?」

「一旦宿舎まで案内します。そこでこれからの大まかなスケジュールをお話しします」

「やっぱり秘密主義か」

シンジは両手を頭に回して右足を組んで、天井を見上げてボソッと言った。

まだ軍エリア内のため、無骨な天井な続いている。

この景色だけだとルナツーと変わらない。せっかくの地球なのに空が見れないのは何とも寂しい。

「申し訳ないです。自分もスケジュールしか聞かされておらず、中尉が何故呼ばれたのまでは聞かされておりません」

アンディは運転しているためシンジに顔を向けることはできないが、申し訳なさそうな表情が滲み出ていた。

「あ、いや、別にアンディを責めている訳じゃないからな…」

シンジは軍に対する愚痴をこぼしそうになったが、このエレカの会話も盗聴なり録音なりされている可能性があるため控えた。

約一年振りに再会した二人は、軍とは関係ないプライベートの話題で盛り上がった。

軍エリアのゲートを抜けるとそこからは民間エリアになり、途端に華やかになる。天井もマッピングではあるものの青空が広がっている。夜には星空になるのもルナツーと同じだ。

そこから車で20分程走ったところに、巨大なマンション群が見えてきた。

「今回は結構遠いんだな」

「はい、なので自分が送り迎えさせてもらいます」

すまない、と言おうとしたが、それが彼に与えられた任務だ。

「よろしく頼む」

シンジは大人の返事をした。

駐車場にエレカを停めると、アンディは5階のシンジの部屋に案内した。

エレベーターの中でシンジは

「また5階か」

と呟いた。

「はい?」

アンディは聞き返した。

「いや、ルナツーの自宅が5階だったから」

「そうだったんですね」

5階に着くと、左端がシンジの部屋だ。

「まずはセキュリティの登録をお願います」

指紋と虹彩(瞳の模様)による認証登録を行った。

「オッケーです。ではどうぞ」

シンジの認証によりロックを解除し部屋に入った。

これでもかという部屋の広さに、返って落ち着かない。相変わらず無駄に広い連邦のマンションだ。

まずは簡単に暮らしについての話を聞いた。

本当に簡単な話で、生活は簡単だという説明だった。

ルナツー同様全てが至れり尽せりだ。

生活の説明の次はスケジュールだ。

「ひとまず今日はこちらでゆっくりしてください。明日の朝9時に迎えに上がります。10時からコーウェン将軍とのブリーフィングです」

「ん?終わり?」

「はい」

「それだけ?」

「はい。詳しい話は明日のブリーフィングでするそうです」

「ふぅ」

ソファに座っていたシンジは大きく息を吐いて背もたれにもたれ掛かった。

「分かった、ありがとう。今日はゆっくり休ませてもらうよ」

「はい。では、明日の朝9時に」

「了解だ」

アンディは頭を下げてシンジの部屋を出て行った。

部屋は全てが整えられており、ベッドメイクも完璧だ。部屋の状態はルナツー以上だ。

「本当に落ち着かないな…」

シンジはキッチンにあったコーヒーメーカーでコーヒーを作った。

コーヒーには少しこだわりがある。本場ブラジル産の豆はコーヒー通にはたまらない。

もちろんブラックだ。

ゆっくり蒸らしながらドリップしていると部屋中にコーヒーのフレーバーが広がる。

地球に降りて早々こんな良いコーヒーを口にする事ができて、シンジは至福の時を過ごしていた。

 

【第二十一話】ジョン・コーウェン に続く。

2021年1月15日12時更新予定

 

【注記】この物語はフィクションであり非公式です。また、公式には出てこない機体も登場したり、一部独自の設定があるなど、パラレルワールド的な物語である事をご了承ください。

 

【第十九話】地球へ

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機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~

【第十九話】地球へ

 

宇宙世紀0080年12月31日23時00分

 

「シンジ・アラタ、ガンダムストームブリンガー、行きます!」

ホーネットのカタパルトからストームブリンガーが発艦された。

隊長のアレン機とミック機は既に発艦されている。

グリニッジ標準時、あと1時間程で宇宙世紀は0081年を迎える。それは、ジオン独立戦争終戦を迎えて1年が経つことにもなる。

「まもなく日付が変わります。来ますかね、ジオンの連中」

「俺たちが待ち構えていることは奴らにも分かっているはずだ。このまま監視をしていれば奴らも攻めては来ぬよ」

アレンとミックのやりとはシンジの無線にも入ってくる。

日付の変更と同時に黙とうをささげることを各コロニーの首長達が宣言していた。

宇宙全体が祈りを捧げている間にジオンが攻めてくることも考えられる。アルバトロス隊はパトロールのためサイド6に出向いていた。

開戦時から中立を守っているサイドのためサイド3と並んで被害が少ないサイドではあるが、戦争も終わり正規軍でなくなったジオンにとっては中立も何も関係なくなったこともあり、一番の標的となる可能性のあるサイドでもあった。

三機は予定地点でそれぞれ待機する。

ミノフスキー粒子はほとんど散布されていないため、レーダーも無線も生きている。

この状況なら所属不明機が接近してくればすぐ気付けるし、ミノフスキー濃度が濃くなったら尚更だ。

アレンの言う通りジオンが攻めてくる可能性は極めて低い言える。

とはいえ警戒は怠らない。不測の事態が起きた場合にはすぐ対応しなければならない。

シンジは静かに時が過ぎるのを待った。

そして、時計の針は午前0時を示した。

宇宙全体が沈黙に包まれる。

もちろんパイロット達は黙祷は出来ないし、手も合わせられない。

それでも祈りは捧げている。

そして一分が過ぎると、今度は各コロニーから一斉に花火が上がった。死者への弔いの花火だ。

この花火についても最後まで揉めたのだが、

各サイドの強い要望によって実現された。

シンジもレーダーを見つつ花火も見ていた。

真空の宇宙で花火を上げるのにはかなりの技術力が必要だ。それでも実現できたのは、二度とあんな悲惨な戦争は繰り返したくない想いの表れなのだろう。

この花火を合図に、年明けの祝賀会が各コロニーで始まっている。

各々のコロニーの首長達が挨拶し、しばしの間、新年の幕開けを祝っていた。

そして予定通り2時になっても異常は起きなかったため、パトロールは完了した。

「帰還するぞ、いや、帰還しましょう中尉殿」

接触回線でミックが冗談めいてわざと敬語で言い直した。

「よしてくださいよ、ミック少尉!」

シンジも少し上から目線な感じの口調で返した。

「ははは、もう上官だからため口聞けないな」

「いつも通りでいいですよ」

そんなやりとりをしているうちに三機はホーネットに補足された。

 

宇宙世紀0081年1月5日10時00分

ルナツーの物資搬出入デッキではHLVにストームブリンガーが搬入されていた。

12時ちょうどにシンジと共に地球へ向けて出発する。

シンジはその様子を中二階の踊り場から見ていた。

「もう準備は終わったのか?」

アレン隊長だけが見送りとしてこのデッキに来ていた。

「はい。あとはストームブリンガーがHLVに搭載されれれば全ての準備が完了します」

シンジの表情はやはりどこか寂しげな感じだった。

「この九ヶ月、本当にご苦労だったな。隊を代表して改めて礼を言うよ」

アレンも柔らかな笑顔をシンジに向けた。

「こちらこそ本当にありがとうございました。お世話になりました」

シンジはアレンに向かって敬礼すると、アレンも敬礼で返した。

「やはり増員は無いのですか?」

「ああ、そうみたいだな。むしろ四月からまた連邦の体制が変わると言う話があるみたいだから、それに伴って隊の解散もあり得るらしい」

この情報はシンジは初耳だった。

アレンもまだ他の隊員に話していない。

「本当なのですか?」

シンジは驚きを隠せなかった。

「隊の解散まではまだ分からないが、何かしら動きがあることは間違いないだろうな」

アレンはシンジと目を合わせないまま話を続けた。

「お前の今回の異動も新しい体制の準備のためなのかもしれないな。モビルスーツの開発による連邦の新体制の構築を伺っているのかもしれない」

パッとシンジの方を向いて

「すまない、これは俺の一個人の予想だから忘れてくれ」

「いいえ、かつてはモビルスーツに否定的だった連邦がモビルスーツを理由に新体制を構築しようとすることは納得いくところです。それだけ連邦内部に大きな動きが起きようとしているんでしょうね」

「だがこの先何が起きようと、俺たちは与えられた任務を全うするだけだがな」

「そうですね…」

シンジは何か言葉を詰まらせた感じはあったが、アレンは指摘はしなかった。シンジの心の奥底に潜めている何かをアレンは感じ取っていたからだ。

デッキではストームブリンガーの搬入が完了したHLVのハッチが閉まるのを二人は見ていた。

「終わったようだな」

「はい。でもまだ時間ありますから、今のうちに昼食を済ませてきます」

「なら俺はこれで持ち場に戻る。元気でな。隊のみんなも心配しているだろうから、落ち着いたら連絡よこすんだぞ」

「はい、ありがとうございました」

シンジは最後にもう一度敬礼し、エアロックに向かった。

 

11時30分

「中尉殿、いつでも乗船して頂いて大丈夫です」

搭乗員入口に控えていた輸送班の上等兵が敬礼しながらシンジに伝えた。

「ああ、ありがとう」

簡単な手荷物を持ったシンジは、敬礼で返して、HLVの搭乗ゲートから搭乗した。

輸送機であるHLVは物を運ぶ事が本来の目的であることから、人が快適に乗れる機能は備わっていない。

座席こそあれど、宿泊できるスペースも無く人はおまけ程度の扱いだ。

HLVは宇宙開発時代から使われている輸送機で地球と宇宙を行き来することができる万能輸送機だ。

それでも100年近くこの手段が使われている。一年戦争が勃発したこともあり、新しい技術の開発が進められていた。

シンジ自身も新技術の開発に携わっている身であるため、HLVを使うのもこれが最後になるだろうと、なんとなく感じていた。

そんなHLVの乗務員席のエリアに入ると、シンジの他に数名が乗船していた。

シンジ以外はジャブロールナツーを定期便として行き来しているHLVの乗務員だ。

シンジは案内された席に座ると

「発進前にはシートベルトをお願いします」

と声をかけられた。

発進までもう数分ある。

シンジはリクライニングを少し倒して心を落ち着けた。

地球の大気圏まで約38時間、ジャブローまで44時間の長旅だ。トイレと食事はできるが基本的にはこの席で過ごさないといけないためちょっと憂鬱だ。

シンジはこういう時の時間潰しの趣味を持っていないことをいつもながら後悔した。

寝るしか無いか…。

12時ジャスト、定刻通りにHLVはルナツーを出港した。

 

【第二十話】ジャブロー に続く。

2021年1月8日12時更新予定

 

【注記】この物語はフィクションであり非公式です。また、公式には出てこない機体も登場したり、一部独自の設定があるなど、パラレルワールド的な物語である事をご了承ください。

 

 

 

 

【第十八話】クリスマスイブ

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機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~

【第十八話】クリスマスイブ

 

宇宙世紀0080年12月24日19時

 

ルナツーの街はクリスマス一色だ。

クリスマスソングも街全体に響いている。

街路樹がイルミネーションやクリスマスツリーに彩られたメインストリートをシンジとサラは腕を組んで歩いていた。

ルナツーのクリスマスは初めてだけど、意外と盛大なのね」

「狭い分無理やり一つにまとめたって感じだよね」

「そんな感じね」

サラはシンジと会ってからは終始笑顔だ。

「それにしても寒いわね」

ルナツーのクリスマスは日本のクリスマスを真似てるらしいよ。日本のクリスマスって妙に寒いだろ?」

「そんなんだ?だからどこか懐かしい感じがあるのね。この寒さは日本の寒さってことなんだね」

「そういうこと」

気象のコントロールは基本的にはAIによる自動制御だが、クリスマスなどイベント時には特別に人の手により彩られる。

また、日本に似せたルナツーのクリスマスは知る人ぞ知るスポットとして訪れるカップルも少なくない。

寒いクリスマスがカップルの距離を更に近づける効果ももたらしていた。

二人の目的地はストリートの先にあるレストラン。クリスマスディナーを予約してある。20時に予約してあるのだが、そこまでには数多くの誘惑が待ち受けている。

それらを突破し時間までに目的地に辿り着かなければならない。

タイムキーパーのシンジの戦いが始まった。

 

20時

数々の誘惑を突破し、時間通り目的地のレストラン「DUO」に着いた。

デュオと言ってもカップルしか利用できない訳ではなく、一人でも3人以上のグループでも利用可能だ。

シンジとサラはエレベータで5階に上がると、ウェイターに窓際の席に案内された。

窓と言ってもガラスではなくモニターだ。高層階からの街の夜景が映し出されている。

これもクリスマス限定の特別仕様みたいだ。

「メリークリスマス!」

シャンパンが注がれた細長いシャンパングラズの先端を合わせた。

「美味しい」

サラはシャンパンのおいしさとアルコールで頬を少し赤めた。

「こういう時ぐらいはね。お店のおススメのシャンパンとメニューを用意してもらったよ」

高給取りの割に普段ほとんど出費の無いシンジは、今日ばかりはお金を一切気にしない段取りを踏んでいた。

おかげで高級シャンパンに、一般市民は手に入れづらい天然食材をふんだんに使ったメニューを満喫することができた。

ただシンジは残念ながら下戸だ。反対にサラはザルであり、シャンパンのほとんどはサラが飲み干してしまった。

その後も肉や魚のコースに、酒が入ったサラは笑いが絶えなかった。

メインディッシュも終わり一息つこうかというところでシンジが口を開いた。

「サラ、話さなきゃいけないことがあるんだ」

「何?改まって」

シンジの表情にサラも合わせた。

「今日辞令が降りて、年明けからジャブローの試験部隊に配属する事が決まったんだ。しばらくの間離れ離れになっちゃう」

変な語尾になってしまったため、言い直した。

「ちょっとの間離れ離れになるけど、また戻ってこれるから」

咄嗟に嘘をついてしまった。

別れ話を繰り出している訳ではないのに、やはり暫く会えなくなるから我慢してくれとは言いづらい。

この後何を話せば良いか分からなくなったシンジを見かねて、

「知ってたよ」

サラはニコッとして反応した。

シンジは驚いた表情を隠せなかった。

「何で知ってるの?」

「診察室で誰かが普通に話してたよ。こんな狭いルナツーだもん、噂なんてすぐに広がるでしょ?」

「そうだったんだ…」

「うん。ジャブローのお偉いさんからのお誘いなんでしょ?シンジのパイロットとしての腕が認められたんだから、全力で頑張ってこなきゃね、中尉さん」

「そんな事まで知ってたのか?だったら最初に話せば良かった」

「私はルナツーでお留守番しながら、シンジの活躍を祈ってるね」

良かったのか悪かったのかよく分からない空気が二人の間を流れたが、その空気の流れを変えるべく、

「実はもう一つ話しがあるんだ」

「何?」

シンジはおもむろにポケットから箱のようなものを取り出した。

サラの方に向けて蓋を開くと、そこには指輪が入っていた。

「こういうのは、柄じゃないことは分かってるよ」

シンジは立ち上がると、サラの左側にひざまづいて、左手の薬指にスッとはめた。

「こ、これって?」

今度はサラが驚きの表情を隠せなかった。

「今すぐ結婚してくれとか、そういうことじゃないよ。でも…」

シンジはサラの左手を両手で握った。

「俺は必ずサラの元に帰ってくるから、それまで待ってて欲しいんだ。この指輪に誓って、必ず帰ってくる」

シンジの言葉は力強かった。

サラは緊張の糸がスッと解けて、そのままシンジに抱きついて大粒の涙を流した。

シンジの異動の話しを耳にした時は、これがシンジと過ごす最初で最後のクリスマスになるかもしれないと覚悟していたからだ。

「絶対に約束守ってよ」

涙声のサラ。

「ああ、必ず守るよ」

ここがレストランだと言うことを忘れて、しばらく抱き合ってた二人。

周囲もカップルばかりだったため、二人を見て啜り泣く声も聞こえていた。

サラが落ち着きを取り戻し、椅子に座ったとことで、ウェイターが二人のテーブルにやってきて、訪ねた。

「食後のデザートと飲み物をお待ちしてよろしいでしょうか?」

「はい!」

二人は元気よくハモった。ウェイターもどことなく嬉しそうだ。

採れたてのフルーツが一口サイズに切られたデザートと、シンジはコーヒー、サラはレモンティーに満足して店を後にした。

 

22時30分

二人はシンジの住宅エリアの住居に戻ってきた。

5階建てマンションの、シンジの部屋がある3階にエレベータで昇ってきた。

指紋認証でドアを開けると、クリスマスをイメージした電飾が電灯と同時に光る。

「わぁ、何これ?」

サラは笑顔がはち切れそうだ。

「すごいだろ?」

「シンジがやったの?」

「そうだよ、一人で居る時にね」

壁から天井にかけて夜景をイメージした装飾に、ただただ嬉しく、ずっとシンジの腕を組んだまま離さなかった。

「ねね、飲み直そ」

「まだ飲むの??」

「これ見たら酔いが一気に醒めちゃった」

どういう体の構造してるんだ...、これが大酒飲みか…

サラはシンジの唇に軽くキスをして、キッチンに向かった。

シンジも上着上着掛けにかけると、ソファーに座りネクタイを緩めてワイシャツのボタンの上二つを外した。

暖房を付けっ放しにしていたため、むしろ暑いくらいだ。

「サラ、俺は冷たい水かお茶でいいよ!」

「えー」

キッチンからサラの不満そうな返事が聞こえた。

シンジはテーブルの上にあるモニターを付けるセンサーに手をかざそうとしたが、今夜はサラと過ごす時間を大切にしたいからモニターを付けるのをやめて、その隣にあるオーディオを付けるセンサーに手をかざした。

今夜はリクエストチャンネルならそれなりにムーディーな曲が流れるだろう。

手をかざしてオーディオが点灯したのを確認すると、手を左右に振ってチャンネルを選んだ。センサーにはチャンネルも表示されている。

リクエストチャンネルになると今度は手を上に振ってボリュームを上げる。

聞こえてくる曲は思った通りクリスマスソングだ。

ボリュームは大きくなく小さくなく、耳に入ってくる程度のボリュームに設定する。

「はいどうぞ」

「ありがとう」

サラがお水のボトルを持ってきてくれた。

よく冷えている。

サラは酎ハイの缶を持っていた。

シンジの左横に座ると、

「乾杯」

サラが缶を差し出した。

「乾杯」

水のボトルを合わせると、なんとも鈍い音がした。

シンジは部屋の暑さと喉の渇きと若干の気分の悪さから、半分くらいを一気に飲み干した。

サラは一口一口飲んでいる。

いつの間にか上着を脱いでいて、 シンジと同じように胸元のボタンを外していて、下着が見えそうなくらい胸元が露出していた。

しかしサラのボリュームでは谷間は形成されない。

それでも意識が少し不安定なシンジはその胸元を凝視してしまう。

「ちょっと、どこ見てるの!?」

嬉しいのか怒っているのかよく分からない口調で両手で胸を隠すと、

「どうせこの後裸になるだろ」

「馬鹿!」

思い切りシンジの頭を叩いた。

たまに無神経な発言をするシンジに対してサラは容赦はしない。

「痛てーな、何するんだよ!?」

本当に痛かったため、叩かれた部分を手で押さえて少し顔を歪めた。

「無神経なこと言ったからだよ」

サラは少しだけそっぽ向いて、酎ハイを一気に飲み始めた。

シンジも頭を叩かれたおかげで頭痛と気分の悪さが悪化したため、水を一気に飲み干した。

ふぅー

大きくため息をついてボトルをテーブルに置くと、サラも缶をテーブルに置いた。

「サラ」

「何よ?」

振り向いたサラはまだムッとした表情をしていたが、それを覆い被せるように抱きしめた。

「大好きだよ」

「私も」

サラの表情は180度変わった。そしてシンジの背中に両腕を回した。

そのままサラをソファーの上に押し倒して舌を絡めた。

「ん…ぁん」

シンジの体温がダイレクトに伝わってくる。

「ここでするの?」

「たまにはいいだろ?」

「まだシャワーも浴びてないよ」

「たまにはいいだろ?」

「今日は朝まで頑張れるの?」

約束だった。

「俺を誰だと思ってるんだ?」

「期待してるよ、中尉さん」

 

【第十九話】地球へ に続く。

2021年1月1日12時更新予定

 

【注記】この物語はフィクションであり非公式です。また、公式には出てこない機体も登場したり、一部独自の設定があるなど、パラレルワールド的な物語である事をご了承ください。

【第十七話】辞令

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機動戦士ガンダムAfterwar~戦後の戦士たち~

【第十七話】地球へ

 

宇宙世紀0080年12月24日

 

ジオン残党によるコロニー落とし未遂(公式では事故によるコロニーの移動)から5ヶ月以上が過ぎたが、あの日以来ジオン残党によるテロ事件は一切行われなくなった。

連邦政府は、管理体制を強化したことに起因するとしているが、今回の一件はむしろジオンの再決起を促していて、更なる強化のための沈黙だと考える人も少なくない。

強化したのはあくまでも管理体制であり、監視は現状のままとしている。また、アルバトロス隊とペネディソン隊のアステロイド周辺の捜索活動も大幅に削減するよう指示が出た。コスト削減が理由だという。

強化されなかった監視の目をかいくぐって徐々に集結しているのは、サイド5の暗証宙域真っただ中に建設されつつある「茨の園」。

失敗してしまった第三次ブリティッシュ作戦を更に強化して、決起するその時を待っていた。

 

いつものように朝のブリーフィングを終えると、リックがシンジを呼んだ。

「シンジ少尉」

「はい」

「この後司令室に来てくれ」

「了解しました」

シンジは敬礼すると、リックはそのままブリーフィングルームを出て行ったため、隊員全員で敬礼して見送った。

「シンジ、何かあったの?」

アリスが聞いた。

「俺にも分からないよ」

シンジも少し困った様子だ。

「アレン隊長はご存じなんですか?」

今度はジョージだ。

「ああ。だが俺の口からは言えないから、指令と話しをしてからだ」

と言うとブリーフィングルームを出て行った。

他のメンバーも戸惑った様子だったが、とにかく指令の話を聞くしかない。

シンジは一人指令室に向かった。

 

トントン

指令室のドアをノックすると

「入りたまえ」

リックの声で返事があったので、ドアを開けた。

「失礼します」

シンジは敬礼しながら部屋に入ると、自席でパソコンを操作しているミックの横にキム・シン副指令もいた。

「掛けたまえ」

ミックは立ち上がると、一枚の紙を手にして、ちょっとした会議スペースにミックが座ったのを見て、シンジも座った。

キム・シンは立ったままだ。

「実はな、君に辞令が届いたんだ」

そう言うとミックは手にした紙をシンジに見せた。

宇宙世紀のこの時代、多くは電子ペーパーなのだが、最高機密や重要性が高い内容が記されたものは紙ベースで書かれている。

改ざんや複製ができなく、処分も至って簡単なためだ。

シンジも久しぶりに紙を見たが、「紙=自分の人生を大きく変えるもの」だということも分かっている。

ジャブローのコーウェン将軍から直々のお達しだ。ここでは詳細を伝えることはできないが、年明けにモビルスーツの新たな開発計画が始まるらしい。君にはジャブローに降りてもらうことになった」

ジャブローで新型機の開発ですか?」

「言っただろう、ここでは何も話せない。詳細は直接ジャブローのコーウェン将軍に聞くんだ」

リックは続けた。

「1月1日付で第802独立試験部隊に編入される。併せて中尉に昇進も決まっている」

さすがのシンジも戸惑いは隠せないが

「シンジ・アラタ少尉、1月1日付で中尉として第802独立試験部隊編入承知しました」

立ち上がり敬礼して転属を了承した。

リックもおもむろに立ち上がると、

「君が隊から離れるのは大変な痛手ではある。アレン大尉も大変残念がっていた。だがこれが君にとっては、軍人としても人間としても更なる飛躍となることは間違いない。これからの活躍を大いに期待しているぞ」

優秀な部下を手放すことは指揮官として残念な気持ちがあったことはリックの本音だった。だが軍の指示である以上それは絶対だ。

もちろんシンジもそのことは重々承知している。

転属先は生まれ故郷の地球だ。もちろん嬉しくない訳ではない。

だが一つだけ気がかりなことがある。

「この辞令はジャブローのコーウェン将軍に直接手渡さなければならない。無くしたり汚したりするんじゃないぞ」

「は」

「今後の詳しいスケジュールは追って連絡が来るはずだ。以上だ、下がりたまえ」

「は、失礼します」

シンジはリックとキム・シンに敬礼すると、指令室を出た。

真っ先に伝えたい人はいるが、上下関係が厳しい軍に所属しているため、順番を考えると次はシナプス大佐になる。

辞令を持ち歩くのも良く無いし、一度気持ちを落ち着かせようと、軍施設内の自分の自宅に戻った。

汚したり無くしたりするとまずい辞令を、重要書類にファイリングする。

まだ実感が湧かない。

やはりいつものメンバーやサラと話をしないとそうならないか。

ブラックコーヒーを一気に飲み干し、リサイクルボックスに間違いなく缶を捨て、シナプス大佐がいる総合観測室に向かった。

ホーネットの艦長ではあるが、出航しない時はここ総合観測室で指示を出している。

「コーウェン将軍とは面識はあるのかね?」

「はい、大戦中にジャブローで一度」

「見た目はあんな感じだが、とても部下思いの将軍だ。君はきっと将軍の期待に応えることができるだろう。逆に我々としては君を手放す事になる事は痛手だがな。コーウェン将軍の元で働けるなら気持ち良く送り出すことができるよ」

シナプスは大戦前からコーウェンの右腕として働いてきた。コーウェンの事をよく知る人物の一人だ。

コーウェンからの誘いだからこそ、シナプスもすんなり受け入れる事ができたのだろう。

「ありがとうございます。大佐からそのように言っていただいて大変光栄です。今までお世話になりました」

シンジは敬礼し

「うむ」」

シナプスも敬礼で返した。

「では、失礼します」

シンジは総合観測室を後にした。

あとはアルバトロス隊のメンバーだ。

ノーマルスーツに着替えてモビルスーツデッキに向かった。

エアロックを出てアレンを探したが、この広いデッキだ、どこにいるのか探すのに苦労すると思ったが、アレンの愛機のジムキャノンの足元にアレンのノーマルスーツを見つけた。

「アレン隊長」

カニックと話をしているアレンに呼び掛けると、アレンはこちらに流れてくるシンジに気付いた。

「よろしく頼む」的なことを言ってメカニックを下がらせたアレンは、シンジが側にくると

「話せるのか?」

「はい」

アレンは顔と目をブリーフィングエリアに向け、そちらに向かって流れた。

ブリーフィングエリアに入ると、しばらく沈黙が続いた。

本来はシンジから話しかける立場なのだが、何から口にすればいいかわからない。

そんなシンジの気持ちを汲み取って、アレンはシンジが発するまで待った。

そしてシンジは口を開いた、

「シンジ・アラタ少尉、1月1日付で第802独立試験部隊に中尉として編入することになりました」

やはりこれしかなかった。

「今までご苦労だったな、9ヶ月という短い期間だったが、シンジがいたからこそ隊もまとまったと思っている。ありがとう」

アレンは率直にシンジに対して感謝の気持ちを述べた。

「そ、そんな。自分は何もできませんでした。アレン隊長やみなさんのおかげでここまでやってこれました。自分こそ感謝の気持ちでいっぱいです」

「本当に何もできなかった奴は無いもできなかったなんて言わないぞ」

「...」

一瞬シンジは戸惑った。アレン隊長が...冗談??

「いえいえ、本当ですから」

シンジは変な汗をかいて両手を振って否定した。

「ははは、冗談だよ」

珍しく声を出して笑うアレンに、少し気持ちが和んだ感じがした。

アレンもそれを狙ってのことだったのだろうが、ちょっと間が悪かったか。

「ともかく、我々のことはいい。問題は...」

「はい、わかっています」

「彼女のこと、どうするつもりだ?」

「今はまだ、お互い今の立場を変えることはできないと思っています。彼女も軍人です。それは分かっているという理解でいいと思います」

「そうだな。あれで階級を持った軍人だからな」

そう、サラは目立ってそのような感じは見せないが、彼女は立派な軍人なのだ。階級は上等兵。普段は白衣をまとっているが、その下にはちゃんと制服をきている。だが白衣のイメージが強いサラを軍人扱いする人はほとんどいないだろう。それほど『看護師』としてのサラのイメージが強いのだ。

「はい。ですから、自分は大丈夫だと思っています」

「分かった。じゃあアルバトロス隊にもここに集まるよう連絡してくる」

と言ってアレンはブリーフィングルームから出て行った。

アルバトロス隊全員このルームに集合するよう呼びかけるアレンの声がモビルスーツデッキに響いた。

しばらくすると、ぞくぞくと集まってきて、全員集まったところで、まずはアレンから報告する。

 「シンジ少尉だが、年内でアルバトロス隊を離れる事になった。次の所属はジャブローの第802独立試験部隊だ」

実に単刀直入過ぎて、皆んな鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。

更に間髪入れず

「シンジ、お前からも一言言ってみろ」

どんどんぶっ込んでくるアレン。

「あ…えーっと…急な事で驚かせちゃったけど、俺も驚いています。でもこの隊に在られた事は本当に良かったし、人間としてもパイロットとしても大きくレベルアップできたと思っています。今度は地球で勝手も違うかもしれないけど、ここでの経験を活かして頑張るので、皆んなも頑張ってください。今までありがとうございました」

シンジは深々と頭を下げた。日本人なら当然の礼儀だ。

皆んなでシンジに駆け寄り様々に声をかけるが、一気に声をかけられて戸惑ってしまう。

見かねたアレンが皆んなを制した。

「まぁ待て。シンジもさっき辞令を受けたばかりで気持ちの整理も付いていないんだ。まだ時間はある。またゆっくり話しをすればいい。今日はここまでだ。皆んな持ち場に戻るんだ」

アレンの言う通り一旦引く事にした。

各々ブリーフィングルームを出ていくと、アレンもその後から出ようとしたので、

「ありがとうございました」

アレンの背中に敬礼をした。

アレンは振り返らず右手を上げて応えて、ジムキャノンの方に流れて行った。

「ふぅ」

シンジは一つため息を吐きブリーフィングルームを出ると、ジョージとアリスがいた。

「シンジ…」

ジョージは半分泣きそうだ。

「ジョージ、またゆっくり酒でも飲みながら話そ」

ジョージの右肩をポンっと叩く。

「サラはどうするんだ?」

「俺たちは軍人だぞ」

「それって…」

「ジョージ、二人のことは二人で決めればいいの、今夜はクリスマスイブなんだし。じゃあシンジ、またね」

アリスはウインクをして、ジョージを抱きかかえながら、元いた持ち場に戻って行った。

「そうか、今夜はクリスマスイブだったな」

シンジはおもむろに天を見上げると、モビルスーツデッキの無骨な天井が目に入った。

 

【第十八話】クリスマスイブ に続く。

2021年12月24日18時更新予定

※次回はタイトルに合わせて金曜日の夕方に配信します。

 是非読んでください。

 

【注記】この物語はフィクションであり非公式です。また、公式には出てこない機体も登場したり、一部独自の設定があるなど、パラレルワールド的な物語である事をご了承ください。




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