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さて、帰るか

 

よう、おまえ、おまえさいきんいっつもルイボス・ティー飲んでるけどよ、ルイボスってのはなんなんだよ? ルイボスって草? 生えてる? おれの村には生えていたよ、ルイボス畑が地平線の向こうまでつづいていたんだ。村のルイボス祭りには若人たちが張り切って、草相撲に興じたものだ。ルイボス横綱になると、隣村のいちばんの美女と、山の向こうの泉まで逢瀬を楽しむ権利が与えられたんだ。ちょっと待ってくれ、隣村のいちばんの美女の人権はどうなるんだ? そんなふうに人間が商品のように扱われていいと思っているのか。おれたちが飲んでいるルイボスティーは、そんな犠牲の草のうえに成り立っていたというのか。こんなものすべて捨ててしまえ、ボストンの海に沈めてしまえ、当然おれはレッド・ソックスのファンだ……。わかった、かわりにジャスミン・ティーをおごるよ。気持ちをリラックスさせるんだ、ボーイ。ジャスミンでリラックスだ。チル・アウトだ。ばかなのかおまえは、ジャスミン・ティーにはカフェインが含まれている。なんだって、ジャスミンにはカフェインが含まれているっていうのか? ママはそんなこと言わなかった。ジャスミンにカフェインは含まれていない、ジャスミン・ティーにカフェインが含まれているんだ。おまえはまただまされた。いつも偽物を掴まされる。そんな安くコロンビアのダウンジャケットが買えるはずなかったんだ。なんだあの偽物は。そんなことはいい、ジャスミン・ティーにカフェインが含まれているのはどういうことだ? おれは見たんだ、村のジャスミン畑が地平線の果てまで広がって、おれたちは遠い世界のことをいつも語り合っていた。おれたちはまだ若く、踏みしめる大地もまだ若かった。ときどき、そのころのことを思い出すんだ。それが今じゃ、こんな地の底のカフェでまがい物のジャスミン・ティーを飲んでいる。そういうわけなのか。冷静になれ、ボーイ、いいか、ジャスミン・ティーはジャスミンのティーじゃあない。ジャスミンとティーだ。ジャスミン&ティーなんだ。おれたちの革命は裏切られたんだ。凍てつくような赤の広場、労農赤軍の銃声。それでも人々は黒パンと塩のスープを求めて行列をつくっていた。薄汚い浮浪児がいつでもおまえのカバンを狙っていた。そうだろう、おれも、おまえも、フクースナ・イ・トーチカのボリショイ・バーガーを腹いっぱい食べたかった。おれたちは前線に並ばされたゴミだった。ゴミそのものだった。それが今じゃ、関内にも大きなビルが、あんなに大きなビルが建って、みんなあの時代のことを忘れちまった。ルイボスの若い葉の香りを忘れて、一心不乱にゾンビたばこを吸っている。市長は議長の尻を叩いて、知事はぶっ倒れた。ここはもう無法地帯だ。だからおれたちは歌を歌える。踊ることだってできる。青い牢獄はウエストリンギアの花でできていた。さあ、CBDを吸おう。いつだって自由はエリートが作ってくれる。東大のやつが作ってくれる。ただ、ときどきやつらにも吸わせなきゃいけない。それがディールってやつだ。この街ではディールができないやつから死んでいく。あっけなく死んでいく。おまえがまだ生きていることを、雲の上のだれかさんに感謝しておいたほうがいい。それでもまだ、おまえはまだ、ジャスミン・ティーのことを考えているのか? 無駄なことは考えないほうがいい。あれもこれも無駄なんだ。わかっていたことなんだ。それなのに、おれたちは這いつくばるまねをして、だれかの歓心を買おうとやっきになってる。それが生きるってことだって言われて、信じられるか? おれたちは与えられた死。もういちど歌うことくらいはできる。違うか、ボーイ?




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