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人間の抱える「ちぐはぐさ」の果てにある滑稽と悲哀/映画『しあわせな選択』

しあわせな選択 (監督:パク・チャヌク 2025年韓国映画)

「仕方がない? いや、本当に仕方がないのか――。」

本作は、韓国の巨匠パク・チャヌク監督によるブラックコメディ・スリラーだ。突然の解雇で人生が崩壊したサラリーマンが、再就職のために常軌を逸した「選択」を迫られる姿を、アイロニーと黒いユーモアで描き出す衝撃作である。

【STORY】 製紙会社で25年真面目に働き、妻ミリ(ソン・イェジン)と子ども2人、愛犬2匹と郊外の家で幸せを満喫していたマンス(イ・ビョンホン)。しかし突然のリストラで人生は崩壊する。再就職活動が失敗続きとなり、家族の離散と住む家を失う危機に追い詰められた彼は、絶望の底でひとつの決断を下す——就職活動の障壁となるライバル3人を、殺人によって排除することを。

【キャスト・スタッフ】 主演は『JSA』以来25年ぶりにパク監督とタッグを組んだイ・ビョンホン(ゴールデングローブ主演男優賞ノミネート)。妻役には『愛の不時着』のソン・イェジン(青龍映画賞主演女優賞受賞)。監督のパク・チャヌクは『オールド・ボーイ』『別れる決心』などで知られる世界的な名匠で、本作はトロント国際映画祭国際観客賞を受賞している。

パク・チャヌクは、韓国映画界でも別格と言える存在だ。「復讐三部作」をはじめ、ハリウッド進出作まで手がけ、鮮烈かつ芸術性の高い作品群を世界に発信してきた。そして前作『別れる決心』では、悲恋と犯罪を超えた「奇妙な余韻」で観る者を揺さぶった。

本作『しあわせな選択』もまた、一言では言い表せない「奇妙さ」が全編を覆う。原題「어쩔수가없다」(英題:No Other Choice)は「仕方がない」「どうしようもない」を意味する。では、何が「仕方がない」のか。何がどう「奇妙」なのか。

追い詰められたマンスが選んだのは、ライバル3人の殺害という暴挙だ。しかし彼は狂った殺人鬼ではない。仕事を愛し、家族を愛し、小心で人間臭い小市民である。ただ一点——殺人を実行してしまうこと以外は。しかも、製紙会社以外の転職先を一切思いつかないまま「仕方がない」と自己正当化し、犯行に踏み切る。その視野狭窄の滑稽さと、追い詰められた者の悲哀、そして行動の「ちぐはぐさ」。これこそが本作の核心だ。

マンスはターゲットの妻の不倫を心配し、同業者であることに共感し、相手の失業に同情する。犯行の合間には妻の冷たい態度や息子の警察沙汰に心を痛め、娘の音楽の才能に希望を燃やす——そしてその間にも、殺人と死体の隠滅は着々と進む。この「ちぐはぐさ」に観客は混乱し、「こいつはいったい何をしているんだ?」と思いつつも、つい黒い笑いを漏らしてしまう。

人間の思考と行動には複数のレイヤー(理性・感情・衝動・社会的自己)が並存し、しばしば相反しながらも、なぜか「ひとつの私」としてまとまって存在している。本作でパク・チャヌクが描くのは、この「奇妙さ」そのものだ。矛盾と自己欺瞞、自己正当化の果てにある滑稽さと悲哀——こうした人間の本質を、彼は鮮やかに切り取ってみせる。

のみならず、本作では音楽の使い方、質、タイミングが素晴らしく、映像にしても、前作ほどの実験性は薄くはあるが、時折「え?」と驚かされる効果を使用する。これらから感じるのは、本作がそのテーマ性のみに特化した作品ではなく、パク監督の絶妙な遊び心、その柔軟な芸術性に則って製作された作品であることが大いに伺えるのだ。併せて、出演者の存在感、彼らの演出の楽しさが格別だ。総じて、パク・チャヌクは、またしても傑作を生みだしたといえるだろう。


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