S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl (PlayStation 5、Xbox Series X/S、PC)

放射線と異常現象の渦巻くチョルノービリ原発周辺を舞台としたサバイバルFPSゲーム
1986年に爆発を起こしたチョルノービリ原子力発電所。この跡地で2006年、再び原因不明の大爆発が起きる。周辺に突如出現した謎の立入禁止区域「ゾーン」を巡り、複数の軍事勢力が血みどろの戦闘を続けていた。「ゾーン」の奥深くには、人類の運命すら変えうる超常的な"力"が存在していたのだ。主人公はその"力"を漁る「ストーカー」として、死に満ちた荒野をさまよい続ける。
ウクライナのゲーム開発会社GSC Game Worldが手がけたFPS『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』は、原発事故後のチョルノービリ原発周辺という特異な地域を舞台に、敵勢力やミュータントとの戦闘のみならず、放射線物質や異常現象によって生命を削られ続けるという究極のサバイバルゲームだ。2024年11月20日に発売され、つい最近クリア。予約購入しながらも結局クリアには1年半近くかかってしまった。プレイ時間は136時間。

1作目『S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl』
この『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』を語る前に、2007年に発売された前作『S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl』について説明しなければならない。私はこの1作目を英語版PCソフトでプレイ(その後日本語化MODを適用)したが、この1作目はいわゆる「神ゲー」だった。
S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl:ストーリー
チョルノービリ原発周辺に突如出現した謎の立入禁止区域「ゾーン」。そこで記憶を失った状態で目覚めた主人公は、「ストレロクを殺せ」というメモだけを手がかりに行動を開始する。ゾーン内で異形のミュータントや敵対するstalkerたちと戦いながら進むうち、自分自身がそのストレロク本人であることが判明。ゾーンの中心に潜む謎の装置「モノリス」と、それを巡る組織の陰謀に迫っていく。
原発事故によって荒廃した土地には放射線物質が渦巻き、突然変異した凶暴なミュータントが徘徊する。さらに不可思議な物理現象が頻発し、巻き込まれれば命を失いかねない。しかしその現象が生み出す「アーティファクト」と呼ばれる物質は現代科学を凌駕する能力を持ち、その採取と売買を目的に多くの食い詰め者や軍事勢力がゾーンへと流れ込み、一獲千金を夢見て不毛な抗争を繰り広げていた。主人公はストーカーとしてゾーンをさまよいながら、次第に事件の核心であるチョルノービリ原発の中心部「石棺」を目指すことになる。

凄まじいゲームだった。一歩先も見えない危険地帯で、四方八方から弾幕とクリーチャーが襲いかかり、空にも大地にも絶えず異常現象が起き続ける。そこは文字通りの「地獄」だった。ゾーンをさまよう理由も、戦う理由も次第に曖昧になり、ただ「生き延びること」だけが最終目的となっていった。さまよい続けた末についにチョルノービリ原発が視界に入った時、ゲームの中にいながら、現実世界でもっとも呪われた汚染地帯に自分が立っているかのような感覚を覚えた。
ゲーム世界はオープンワールドで、昼夜の概念があり、天候は刻々と変化する。荒廃した大地、遺棄され崩壊しつつある建造物、無計画に生い茂る草木——それは現実と見まがうほどのグラフィックだった。手に入る銃の性能は劣悪で、「出血」すると体力が絶えず減り続け、重量制限のある背嚢と疲労概念のある歩行が、あらゆる行動を重くする。常に心身を消耗させられる体験だが、それゆえにマゾヒスティックなまでの「リアル」を感じさせた。

2作目『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl 』
『Shadow of Chernobyl』発売後、アドオン作品『Clear Sky』『Call of Pripyat』の2作が加わり、俗に「S.T.A.L.K.E.R.三部作」とも呼ばれている。この三部作は現在『S.T.A.L.K.E.R.: LEGENDS OF THE ZONE TRILOGY』として1本にまとめられている。そしてスタジオの閉鎖と再開、度重なる発売延期、さらにロシアのウクライナ侵攻という苦難を経て、2024年についに発売されたのが本作『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』だ。
『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl 』:ストーリー
ゾーンの外縁部で暮らしていた元ウクライナ海兵隊員スキフは、ある事件をきっかけにゾーンの深部へと足を踏み入れることになる。ゾーン内では軍事組織「ワード」とスカー率いる反体制派閥「スパーク」など複数の派閥が覇権を争っており、スキフはその争いに否応なく巻き込まれていく。鍵を握るのは政府系科学機関「サーカー」によるゾーン全体に影響を及ぼす謎のシステム。スカフはその真相を追いながら、ゾーンの「心臓部」へと向かう。
1作目と比べるならこの2作目は技術的・ゲームデザイン的に非常に大きな進化を遂げている。エンジン変更によるグラフィック・ビジュアル面の大幅な進化、シームレスで広大なオープンワールドを再現したことによる強烈な没入感、NPCやモンスターが「その世界で生きている」かのように振舞うAIライフシステムの導入、洗練された戦闘・銃撃感・サバイバル要素、ストーリー・クエスト・演出の強化がそれに当たる。つまりより「デラックス」になったのがこの2作目なのだ。

困難を極めるゲーム進行
プレイ面においては、1作目と同様、苛烈なゲームバランスとなっている。主なものを挙げると——
- 重量制限による携行可能アイテムの少なさ
- 重量オーバー時に踏破できない場所の存在
- スタミナの急減による徒歩速度の遅さ
- ヴィークルがなく、広大なマップをほぼ徒歩で踏破しなければならないこと
- 「出血」によるHPの漸減
- 放射線物質・アノマリー・毒沼などによる突然死
- マップの高低差表示が乏しく、ルート判断が難しいこと
- 敵の出現方向が読みにくいこと
- 敵のHPが表示されないため、撃破に必要な弾数が分からないこと
- 敵味方の判別がしにくいこと
- 武器・装備の劣化概念と、修理に金銭が必要なこと
- 「空腹」の概念があるため、食糧を余計に所持しなければならない
このため、A地点からB地点へとマップを横断すること自体が大きな試練となる。ミッション攻略よりも「マップを走破すること」そのものがゲームの核であり、その過程で用意された異様な光景を存分に味わわせるのが製作者の意図なのではないかと感じた。
しかしこうした困難の多くは、マップ各所に点在する「アーティファクト」を入手することでかなり緩和される。重量制限、スタミナ、出血、放射線汚染防護など幅広い面で効果を発揮し、特に「不思議な水」というレア・アーティファクトは重量制限の問題をほぼ一気に解決してしまう。
つまり本作では、ミッションクリアと並行してマップを探索しアーティファクトを集めることが攻略の重要な柱となっている。主人公が「アーティファクト掘り」としての「ストーカー」である世界観を、そのままゲームの攻略設計に落とし込んでいるわけだ。

フィールドそれ自体が敵
透明化して襲ってくるミュータントの攻撃はあまりにもいやらしい。群れを成しすばしこく動くネズミや犬のミュータントにもうんざりさせられた。一番てこずるのはテレキネシスでこちらの銃をことごとく奪ってしまう人型ミュータントだ。相手を心神喪失状態する超能力をもった人型ミュータントがこれまた固くて、出会うと具合が悪くなる。
一方、アノマリーゾーンや放射線汚染地帯は近付かなければ問題はない。ただしそこを走破しなければ先に進めないことも多々あり、そもそも不気味でたまらないので遭遇すると陰鬱な気分になる。毒沼も入らなければそれでいのだが、浮草をジャンプで渡って進まなければならないこともあり、この際、重量過多だとまともにジャンプができす、詰む。だからせっかく集めたアイテムを、沼の前で大量に遺棄することもあった。
最も恐怖心を煽られるのはチョルノービリ原発跡地を中心に発生する「高熱放射嵐」だ。フィールド探索中に突然空が赤くなったかと思うと警報が鳴り、「近くのシェルターに避難しろ」とアナウンスがされる。雷が鳴り嵐のように風が吹き始める。時間内にシェルターを探し辿り着けなければ高熱放射に曝され殆ど即死の状態でゲームオーバーとなる。これが巧妙なタイミングで発生するようになっていて、近くに建造物があまり無い状態のときに起こるのだ。建物に辿り着いても扉が開かずパニックに至ることも何度もあった。まさに「フィールドそれ自体が敵」という顕著な例だろう。
これらに比べれば人間同士での銃撃戦はまだ容易な部類だ。的確な遮蔽物と射線とエイムを用いれば、多少相手が固くてもなんとか乗り切れる。ただし問題は、重量制限による銃弾保有数の限界、持っている銃や装備の劣化、ジャミングのしやすさである。特に敵のドロップした銃は殆どが劣化か故障しており、拾ってもあまり使い物にならなかったりする。

殺伐とした世界を歩むことの醍醐味
このように、プレイしてひたすら忍苦を強いられ、憂鬱な気分にさせられるゲームではある。『Apex Legends』や『Call of Duty』のような、カジュアルで競技性に優れ、ド派手な演出で爽快感をもたらすFPSとは真逆なのだ。それでもなお、このゲームに惹かれてしまうのはなぜか。それは「ゾーン」という世界が、凄まじい迫真性を持っているからだ。
鬱蒼とした原野、重く垂れ込める悪天候、黒々とした沼、打ち捨てられた廃墟、謎めいた施設、不気味な超常現象、銃弾飛び交う戦闘地帯、醜いモンスターの群れ——本作に用意された光景はどれも陰鬱で殺伐としており、死の臭いに満ちている。と同時に、危険な美しさに溢れてもいる。そのただ中に一人のストーカーとして存在し、異境と化した光景を一歩一歩踏み進める。ゲームをプレイしているというより、呪われた土地を実際に生き延びているような感覚——本作が与えてくれるのは、そういう種類の体験だ。この圧倒的な臨場感が何よりも素晴らしいのだ。
確かに人を選ぶゲームだろう。そのバランスの悪さに苛立ち、投げ出す方も多いだろう。それでも私はこのゲームは1作目と同様にユニーク極まりないゲームとして賞賛したい。それは唯一無二の世界観を擁するゲームだからであり、ここでしか得ることのできない体験を得させてくれるものだからだ。
この2作目では実はチョルノービリ原発に入ることができないのだが、この後にチョルノービリ原発突入ミッションの存在するアドオンの発売が予定されている。これが発売された日には、再びウクライナの呪われたゾーンに侵入し、チョルノービリ原発の地獄を再び体験したいと思う。











