以下の内容はhttps://gigazine.net/news/20200412-delivery-workers-essential/より取得しました。


by Yuya Tamai

Uber Eatsをはじめとする「食事配達サービス」は、出前に対応していない飲食店などの料理を指定した場所に届けてくれるサービスです。新型コロナウイルスの影響により人々が屋外を出歩くことができない状況が続く中、こうした食事配達サービスが人々の生活を支えている一方で、サービスを支える労働者の賃金や権利が十分ではないと指摘されています。

Delivery workers are now essential. They deserve the rights of other employees
https://theconversation.com/delivery-workers-are-now-essential-they-deserve-the-rights-of-other-employees-134406

Uber Eatsを展開するUberのダラ・コスロシャヒCEOは2020年3月19日に、3月12日~3月19日までの1週間で新たにサービスに加盟した飲食店の増加率が、平時の増加率の10倍を記録したと発表しました。アメリカの投資会社JMP Securitiesの証券アナリストであるRonald Josey氏はこの動向について「これは、レストランなどの飲食店がなんとか需要を確保しようとしているためだと思います。目下のところ飲食店が顧客を得る方法といえば、広告を打つかUberなどのアプリを頼るほかありません」とコメントしています。

また、食事配達サービスは単に需要の伸びの恩恵を受けるだけでなく、医療の最前線で新型コロナウイルスと戦う人々の支援も行っています。Uberは3月30日に、イギリスの国民保健サービス(NHS)の医療従事者らに対して、配車サービス合計20万回と、Uber Eatsによる食事配達10万回を無料で提供すると発表。コスロシャヒCEOは声明の中で「NHSの看護師や医師の皆さんは、この危機の最前線で英雄的な働きをしており、Uberの誰もが彼らの並々ならぬ努力に感謝しています。我々が提供する食事や交通手段が、少しでもお役に立てば幸いです」と話しました。

また、イギリスの食事配達サービスDeliverooも、NHSの医療従事者向けにピザハットの食事など合計50万食を無料で提供することを発表。3月30日の時点で、既に35万食を医療機関に提供しているとのことです。


しかしこうした美談の裏では、サービスを支える配達員たちが労働の搾取や健康上のリスクにさらされていることが問題視されています。学術系ニュースサイトThe Conversationに寄稿したクイーンズランド大学の人類学研究者タイラー・リオーダン氏らは「食事配達サービスのドライバーたちは最低賃金未満で働いていることが多く、病気休暇などの権利もありません」と指摘しました。

配達員の多くが不十分な福利厚生のもとでの労働を強いられているのは、Uber Eatsをはじめとする食事配達サービスの配達員の多くが、正規雇用の労働者ではなく個人事業主としてプラットフォーム側の企業と契約しているためです。こうした、インターネットサービスを通じて仕事を受注する働き方は「ギグエコノミー」と呼ばれています。

リオーダン氏らは「ギグエコノミーのプラットフォーム側が労働者に支払う給料には最低賃金などの規制がないので、好きなだけ『独立の請負業者』と契約することができます。これは顧客へのサービスを向上させ、プラットフォーム側の利益を増大させますが、個々の配達員の収入は減少します」と述べました。


さらに、健康上のリスクに対する支援も手厚いとはいえない状況にあります。Uberは3月17日に、「新型コロナウイルス感染症と診断されたか、または公衆衛生当局により隔離を命じられた配達員」に対し、最大で14日間の経済的支援を発表。しかし、リオーダン氏らは「新型コロナウイルス感染症の症状が出た配達員が、念のために自主的に仕事を休んだ場合は、病気休暇も労災もありません。そうした状況下での仕事を受け入れられない場合は、『請負業を廃業』せざるを得ないことになります」と述べて、業界の最大手であるUberでさえ配達員らに対する支援が十分でないことを指摘しました。

現場で働く配達員を新型コロナウイルスの脅威から守るため、配達員らで組織される労働組合はプラットフォーム側に対し、「手袋・マスク・消毒液などの支給」を求めていますが、プラットフォーム側からは前向きな回答が得られていないとのことです。


リオーダン氏らは「私たちが健康であるためには、私たちの玄関先にものを届けてくれる配達員が必要です。この生活に欠かせないサービスを維持するためには、法律により正規労働者と同じ法的権利と保護を保障しなくてはなりません」と述べて、法整備の必要性を訴えました。




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