
今回は、フランス映画界で注目の監督ラジ・リが手がけた最新作『バティモン5 望まれざる者』をご紹介します。この映画は、パリの知られざる一面を浮き彫りにし、観る者に強烈なインパクトを与える作品です。

『バティモン5 望まれざる者』は、パリ郊外の移民が多く住む地区を舞台に、行政と住民たちの激しい対立を描いた社会派ドラマです。労働者階級の移民が暮らす「バティモン5」では、再開発計画が進行中。しかし、その計画は一筋縄ではいきません。前任者の急逝により臨時市長に就任したピエールは、信念に基づき地区の復興と治安改善を強行しようとしますが、そのやり方に住民たちは猛反発。移民たちに寄り添ってきたケアスタッフのアビーを中心に、住民と行政の衝突が激化します。
映画は、再開発をめぐる行政と住民の対立を緊迫感たっぷりに描きます。ピエール市長の強硬な政策と、それに反発する住民たちの姿は、現実の社会問題を反映しています。特に、住民たちが抱える恐れと不満が爆発し、暴力へと発展していく様子は圧巻です。観る者にとって、問題の深刻さと解決の難しさを強く感じさせるでしょう。
本作の監督・脚本を務めるラジ・リは、2019年の映画『レ・ミゼラブル』で一躍注目を浴びました。『レ・ミゼラブル』では、パリ郊外の犯罪多発地区を舞台に、犯罪防止班と少年たちの対立を描きましたが、『バティモン5 望まれざる者』でも同様に、社会の暗部をリアルに描き出しています。ラジ・リの鋭い視点とリアリティ溢れる演出が、本作でも存分に発揮されています。
映画のラストシーンは特に印象的です。バティモン5を俯瞰するカメラワークが用いられ、問題の根深さと解決の難しさが強調されます。このラストカットは、観客にパリ郊外が抱える問題を突きつけ、深い余韻を残します。
『バティモン5 望まれざる者』は、105分というコンパクトな尺ながら、その重みと緊張感が持続する作品です。移民問題や人種・宗教差別など、現代のパリが抱える複雑な社会問題を深く掘り下げています。観る者にとって、非常に考えさせられる一作です。
社会問題に関心がある方、ラジ・リ監督のファンの方、そして緊迫感溢れるドラマを求める方に、ぜひ観ていただきたい映画です。
2023年製作/105分/G/フランス・ベルギー合作
原題:Batiment 5
配給:STAR CHANNEL MOVIES
劇場公開日:2024年5月24日