
あらゆるタイプの動物たちが平和に暮らし、「誰でも夢をかなえられる」という理想の楽園ズートピア。ウサギで初めて警察官になるという夢をかなえたジュディは、以前にも増して熱心に任務にあたり、元詐欺師のニックも警察学校を無事卒業して警察官となった。再びバディを組むこととなった2人は、ズートピアに突如現れた指名手配犯のヘビ、ゲイリーを捜索するため、潜入捜査を行うことになる。ゲイリーは一体何者なのか。やがてジュディとニックは、ゲイリーと爬虫類たちが隠すズートピアの暗い過去にまつわる巨大な謎に迫っていき、その中で2人の絆が試されることとなる。
2025年映画館での鑑賞17作目。
平日のレイトショーで観客は50人くらいでした。
『ズートピア』って、僕の記憶では「ポリコレ社会の象徴みたいなアニメ映画で、世間の評判のわりには、なんかいい話すぎるというか予定調和っぽくて刺さらない映画」だったのです。
前作の感想では「完璧な佳作」とか書いてますね。正直、この『2』もそんな感じではあります。
「差別的だ」「不寛容だ」と重箱の隅をつつきたい人たちも沈黙せざるをえないほど慎重に「とげ抜き」がされていて、「昆虫食差別だ!」くらいしかツッコミどころがない。
今回、この感想を書くために、前作の感想を読み返してみたのですが、前作の公開が2016年だったことに驚きました。えっ、もう10年くらい前になるのか……
1作目の公開当時は「多様性」とか「ポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)」に配慮したアニメーション作品だったのが印象的だったのですが、この10年間で、さまざまなコンテンツは「ポリコレ準拠」が進んできており、この映画の「描いている理想は素晴らしいのだけれど、なんか説教臭いよな」感は『2』では、だいぶ薄れてきました。
時代が追いついてきた、ともいえるし、良くも悪くも、この映画の「特徴」が目立たなくなったのです。
映像は綺麗だし、キャラクターの動きも面白い。ストーリーはありきたりというか、たぶんジュディとニックのキャラクターと関係性、そして、「ヘビをも包摂する多様性」を描ければそれでよかったのだろうな、と思います。
僕は子どもの頃からヘビが大の苦手で、学校帰りに一度ヘビに遭遇してからは、怖くてずっとその道を通れなかったくらいなのですが、嫌いで苦手な一方で、動物園などの安全な状況下だと、ヘビを観るのは好きなんですよね。
しかし、なんでことさらにヘビとか爬虫類とかが差別の対象になるのだろうか、と考えてみると、キリスト教ではヘビは「邪悪の象徴」みたいな役割を与えられているので、そのヘビさえも包摂するズートピアの多様性を強調しているのでしょうね(ただし、「癒し」とか「救い」の象徴として描かれることもあるようです)。
そういえば、アダムとイブが善悪の知識の木の実を食べてしまったのも、ヘビの誘惑がきっかけでした。
「ヘビとも共生するズートピア」は、キリスト教圏では僕が思うよりもずっと「ひらかれている」印象を与えるのかもしれませんね。
正直、こういう蘊蓄を長めに書いているのは、作品そのものにあまり言いたいことがない場合が多いのです。
そこそこ面白くて、ためになる。ファミリーやカップルで見ても『8番出口』みたいな微妙な空気にはなりません。
ジュディとニックのバディは、オッサンである僕には「功績をあげたいのはわかるけど、そんなスタンドプレイばっかりやられたら周りはたまらんだろうな」と言いたくなる場面が多くて、ちょっと不快な場面もあります。
「そういう人たち」にも、もっと寛容であろうよ、という観客へのメッセージも含まれているとは思うのだけど。
ジュディとニック、お互いへの感情が「仲間意識」なのか「恋愛感情」的なものなのか、そもそもズートピアは「共生社会」とはいっても、異種間の交配・ペアリングが可能なのか。
でも、「そういうところ」を突き詰めないからこそ、『ズートピア』という映画は観客にとって心地よい。
子どもたちに見せたい映画ではあるけれど、自分にはそんなに刺さらない。
2016年に比べると「ポリコレ」や「多様性」は、議論の対象から、マンネリ化した新鮮味がないテーマになってしまった。
とはいえ、こういうのは、訴え続けるのをやめてはいけないのだろうし、多くの人にとっては、こういう積み重ねのおかげで世界は生きやすくなった。
上映時間も108分、登場人物も観客も(たぶん)傷つかず、観終えて「どこが、って思い出せないけど、なんか、楽しかったね」という、ふわっとした満足感だけが残る。
まさに「多様な観客に適応できる、気軽に観に行くには、ちょうどいい映画」なんだよなあ。
『ズートピア2』は、「完璧に近い佳作」だと思います。
物語があまりにも予定調和的だったのと、主題歌が「推されている」わりには、あんまり印象に残らなかったので、「完璧」まではいかないかな。
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