以下の内容はhttps://fujipon.hatenadiary.com/entry/2025/12/19/084756より取得しました。


【読書感想】かんぽ生命びくびく日記――ノルマ死守!本日もお年寄りに営業かけます ☆☆☆☆


Kindle版もあります。

「自分が買わない商品を売る仕事」 
かんぽ営業マンが教える
口説きの手口
――かんぽ生命、入りませんか? 

今から数年前、私は東海地方にある郵便局に勤務し、かんぽ生命の苛烈なノルマに追われながら仕事に勤しんだ。数十件におよぶ契約を獲得し、東海支社管内での「ルーキー賞」なる賞を受けた。
さらに在籍中、当時のかんぽ営業のあり方をいくつかのメディアに告発した。そういう意味では、かんぽ生命の不適切営業問題が表面化するきっかけを作った一人ともいえる。
かんぽ営業の裏も表も経験した1年あまりにおよぶ歳月はいい意味でも悪い意味でも濃密な時間だった。
私はかんぽ営業の現場で何を見て、何を考え、なぜ退職を決断したのか。
――本書に記すのは、すべて私がかんぽ営業の現場で体験したありのままの事実である。


2019年に「かんぽ生命」の不正契約問題が報じられ、「かんぽ」への信頼は大きく損なわれたのです。

「郵政グループ」は2007年に民営化され、窓口での対応やサービスが良くなった、という評判がある一方で、民間企業として、よりいっそう利益を追求しなければならない状況にもなりました。


president.jp

fujipon.hatenadiary.com


「かんぽ生命」の営業マンたちは、厳しいノルマを課せられ、営業成績を上げるために不正な保険商品の勧誘を続けていたのです。
「郵便局」の信用を利用して金融商品の内容に疎い高齢者に保険料の二重払いになる契約をすすめたり、高額の保険に加入させたり。

 新潟市の70代男性の自宅には2019年5月下旬、新しい終身保険のパンフレットを手に郵便局員2人が訪れた。
「絶対に有利。今の養老保険から乗り換えませんか」
 男性と妻は養老保険に加入し、保険料は月3万円。乗り換えると旧保険は途中解約となるが、保障内容は充実し、保険料も低めと説明された。しかし、資料をよく見ると、月3万円の保険料は月8万4000円にはね上がる内容。それを問うと、局員はばつの悪そうな表情を浮かべた。
 男性は結局、年金暮らしで払えないと断ったが、「高額な保険はいらないのに勧誘され、おかしな話。お得と信じてだまされる人がいてもおかしくない」と振り返った。

 かんぽが金融庁へ報告した事案には、耳を疑う事例もあった。
 東北地方の90代女性は10年間で54件の保険を契約し、すべて解約していた。勧誘に携わった局員は計27人。1人の高齢者をねらい、局員が入れ代わり立ち代わり契約を取ったようだった。


上記の『PRESIDENT Online』では、社員が会社の様子を「まるで振り込め詐欺のアジトみたいだ」と語っています。


この『かんぽ生命びくびく日記』では、もともと銀行やファイナンシャルプランナーの事務所に勤めていた著者が、2017年に郵便局に入社してから1年間「かんぽ営業マン」として経験したことが書かれています。

報道で外部からみた「かんぽ生命」は、まさに「振り込め詐欺のアジト」なのですが、内側からはどんなふうに見えていたのか?

「半沢ぁ、これからはひとりでやらんといかんでな。先輩に追いつけるようにがんがん取ってちょーよ」
 時折タッコーは金融渉外部のメンバー一人一人にこうして声がけする。一種の締め付けともいえるが、「見てるぞ」というメッセージでもある。タッコー流の人心掌握術なのだ。
「はい、ぼちぼちやっていきます」私がそう答えると、
「貯金残高があるとこ狙わないといかんでよ。掛けてもらう保険料はできるだけ高いほうがええがね。それから端末見とることはあんまり口外せんほうがええで」
 タッコーがボソッとつぶやく。最初は何を言わんとしているかがわからなかった。そのうちに社内のパソコンでゆうちょ口座のデータにアクセスすることそのものが問題行為なのだと気づいた。
 かんぽ生命の保険営業を行うのは「日本郵便株式会社」だ。これに対し、貯金などの金融サービスを扱うのは「株式会社ゆうちょ銀行」である。この2つはグループ企業で、「ゆうちょ銀行」は「日本郵便」に業務委託しているとはいえ、まったくの別会社だ。「ゆうちょ銀行」が管理する口座情報を、「日本郵便」が扱うかんぽ生命の営業にお客の同意を得ずに用いれば、個人情報保護の観点からも、企業倫理の観点からも重大な違反になる。実際にこれはのちのち事件化し、日本郵政の幹部が謝罪に追い込まれている。
 このとき、Y郵便局金融渉外部の全メンバーは当たり前のようにゆうちょ銀行の個人口座情報にアクセスし、アポ取りを行っていた。
 そして、タッコーら管理職も「あんまり口外するな」と注意しつつ、できるだけ保険料の高い契約をがんがん取れ」とわれわれの尻をたたいた。
 私は罪悪感も持たぬまま、必死にゆうちょ口座のデータを検索し続けた。


消費者金融やクレジットカードの借入額や滞納状況が業界で共有されていて、借り入れや新しいカード作成の際には、これまでのその人の実績「信用情報」を参照している、というのは、けっこう知られている話です。『ナニワ金融道』などのマンガでもよく出てきましたよね。

貯金や資産の額などは「個人情報」として保護されているはずなのですが、実際のところは、かなり業界内で「流用」されていると考えたほうがよさそうです。
保険の勧誘をするのも、ランダムで家やオフィスを訪問するよりは、「貯金が多い、金融知識に乏しそうな高齢者と仲良くなって契約してもらう」ほうが、確率は高そうですし。

著者が経験してかんぽ生命の現場では、歩合給をより多く得るために、違法ギリギリ、あるいは、契約者にとってはメリットがない契約を自分の成績向上のためにとってくる「成績優秀者」もいるのです。

企業としては「実績」「利益」をあげないと、前年よりも業績をアップしないといけない、というプレッシャーが大きいから、「グレーゾーンに踏み込んでいても、好成績をあげている社員」に対しては、何も言えなくなってしまう。

実際のところ、保険や社会保障、金融のしくみを知れば知るほど「生命保険は本当に必要なのか?」と疑問になってくるのです。

 私は深沢さんを口説きにかかった。
「2人に1人はがんになる時代です」──研修で、嫌というほど聞かされてきたセリフ。消費者の不安を煽り、商品を販売する手法だ。
 私は医者ではないから、医学的なことはよくわからない。ただ、「がん」は細胞の一部が変異してしまった状態を指すらしい。人間の体は約60兆個の細胞から成り立ち、長く生きていれば、どこかしらの細胞がおかしくなる。そういう意味では、誰でも「がん」を持っているとっもいえる。
 実際、2020年の「がん情報サービス(最新がん統計)」によれば、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は男性で62%、女性で49%。よって、「2人に1人はがんになる」というのはあながち間違った話ではない。
 では、みんながん保険に入るべきか?
 じつは私はがん保険に入っていない。無駄だと考えるからだ。
 日本には「高額療養費制度」があり、治療費が一定額を超えると、その超過分は公的扶助でまかなえる。つまり、多額の医療費がかかっても経済的リスクはある程度抑えられる。それに長期間保険料を払っても、がんにならなければ給付を受けられず、費用対効果が悪い。極論、貯蓄さえしておけば、がん保険に入る必要などないのだ。
 もちろん、そんなことはおくびにも出さず、入院、通院、3大治療に加えて先進医療の保障までを含んだアフラックがん保険を提案した。深沢さんの年齢だと、月額の支払保険料は1万円を超える。それでもすんなりと契約が決まった。
「これに入っておけば安心だね。よい保険を教えてくれて、ありがとうね」
 深沢さんの「ありがとう」という言葉に罪悪感を覚える。業界の事情を知れば知るほど、営業活動にブレーキがかかる。むしろ業界の知識などないほうが仕事に積極的に向き合える。私は相変わらずそのジレンマの中にいた。

 峰岸さんからストレス発散のような愚痴を聞いていると、彼は突然トーンを落とし声を潜めて言った。
「ところで、半沢さんは金融経験者だから知ってるかもしれませんけど、うち(かんぽ生命)の養老保険って、どれも完全に掛けオーバーですよね?」
 入社直後の研修中、同期の中に「かんぽの商品性」の悪さに気づいている人はほぼいなかった。しかし、峰岸さんは日々の営業活動の中でその事実にぶち当たったのだ。
「そうだよ」私は会話を打ち切るようにそう返答した。峰岸さんはそれ以上何も言わなかった。


ちなみに、この「掛けオーバー」という言葉に対しては、こんな注釈がつけられています。

 掛け金(支払い保険料)の総額が保障額や満期保険金を上回ること。たとえば、この当時、75歳の男性が死亡保険500万円、払い込み期間10年の「終身保障」に加入すると仮定する。月額保険料は5.3万円で年間だと63.6万円。10年間で636万円。これだけ払って得られる死亡保障は500万円なわけで、この保険に入るのがいかにバカバカしいかがわかる。


昭和の時代は「結婚して子供が生まれたら、もしものために生命保険くらいは入っておくのが当たり前」という風潮でしたが(当時は金利もけっこう高くて、満期に返ってくるお金もそれなりに「お得感」がありましたし)。
しかしながら、平成後半から令和では、健康保険は要らない、あるいは、入るにしても、掛け捨ての安いものでいい、と考える人が増えているようです。

医療を生業にしている立場からすると、日本の社会保障制度はまだかなり充実していて、知識とある程度のマメさがあれば、高額の保険に入らなくても、必要な治療が受けられなくなるとか、病院で何もしてもらえずに門前払いされる、というようなことはまずありえません。

暴言・暴力などのハラスメント行為をやったり、わざと他の患者さんに迷惑をかけたりするような人でなければ、「標準的な医療」は受けられますし、役場の職員もきちんと相談に乗ってくれます。

高額医療費には公的負担制度があるので一時的な支払いは必要でも、あとでお金は返ってきます。
海外での心臓移植レベルになると、ちょっと高い保険に入っているくらいだと、それでカバーするのは難しい。

スタッフの人件費やさまざまなコストもあるので、保険会社にとって「儲かる商品」でなければ保険は成り立たないのはわかるけれど、そのなかでも、かんぽ生命の保険の「保険としての魅力」は乏しい、と金融畑を歩んできた著者は感じていたのです。
でも、社員としては、それをお客さんに売らなければいけない。

この本のオビには「自分が買わない商品を売る仕事」と書かれています。

だいたいの「ものを売る仕事」は、そういうものだ、と言えなくもないし、「ちゃんと貯金しておけばいい」としても、それができないから人は保険に入り、ローンを組むのでしょうけど。


fujipon.hatenablog.com
fujipon.hatenadiary.com




以上の内容はhttps://fujipon.hatenadiary.com/entry/2025/12/19/084756より取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14