全国の受刑者200人にアンケート取材!! 料理家が再現した刑務所のごはんの写真(カラー)77点、調理レシピ27食分、各料理についての解説、受刑者からの手紙(肉筆)13点も掲載!! 外の食事とは何が違う? どこの刑務所が美味しい? 楽しみにしている食事は? 嫌いなおかずは? 好きなデザートは? 出所して最初に食べたいものは? 食からわかる受刑者の日々の心情。
「ムショの臭いメシを食わせてやる!」
というようなセリフが、20世紀後半の日本の刑事ドラマでは、けっこう頻繁に使われていました。
そりゃ、罪を犯して服役しているのに毎晩ご馳走じゃ、あんまりだよな、世間には、悪いことをしていなくても、食べ物に困っている人たちだっているのに……でも、受刑者の権利とかを守ろうとしている人も少なからずいるみたいだから、案外良いものを食べているのかも……
われながら、下世話だとは思うのですが、「他の人、とくに、特殊な環境にいる人は、毎日どんなものを食べているのか?」には、けっこう興味があるのです。
刑務所に自分が入ることは、まず無いと思いたいのですが、人生どうなるかわからないですし。
刑務所の食事を題材にした『極道めし』というマンガもけっこう話題になりました。
この本、受刑者の更生を支援するボランティア団体が、全国約30か所の刑務所にいる約200名の受刑者に「刑務所での食事」についてアンケートを行い、それを参考にして「リアル刑務所メシ」を紹介したものです。
ご想像どおり、刑務所の中は自由とはかけ離れた世界です。そんな環境に身を置く受刑者にとっての数少ない楽しみのひとつが”食事(給食)”です。刑務所内での食について書かれた手紙がたくさん届きます。本書では当プロジェクトならではのネットワークを活かし、有志の会員に対して刑務所内の食事に関する取材を書面でおこない、その結果をレシピ集として、できるだけ受刑者たちの証言どおりにまとめています。
味のみならず量の面でも「物足りない」と感じている受刑者が多くいることは想像に難く有りませんが、物価高騰や不景気、さらにはコロナ禍の影響などで、状況はますます厳しさを増しているというのが受刑者たちの実感です。「犯罪白書」によれば、「受刑者一人一日当たりの食費(予算額)は543.21円(主食費97.09円、副食費446.12円)」とされています。10年前の2013年と比較して10.38円、2%ほどの増額となっていますが、同期間における食料品の価格上昇は20%を超えるという統計結果もあることを考えれば、ただでさえ寂しいことの多いおかずや祝日にのみ許される菓子類が「小さくなった」、「種類が減った」と嘆く受刑者たちの声も痛切です。特に長期受刑者の多い施設では高齢化を理由にした減塩化が進むなど、過酷な現実があるようです。
この本では、実際に刑務所で供されている「本物」の写真ではなく、受刑者の証言を参考にレシピをつくり、再現したものの写真が多数掲載されています。
正直、どれも「おいしそう」とは言い難い。
学校の給食や寮のご飯でさえ憂鬱だった僕にとっては、これを食べるしかないのは辛いだろうな、と感じるメニューばかりでした。
カロリーは制限されているし、高齢の受刑者が増えていることもあり「減塩」が徹底されているようなので、身体には良いのかもしれませんが。
特筆すべきは”きな粉”だろう。これは大さじ山盛り1杯ほどのきな粉に軽く砂糖を混ぜたものだそうだが、受刑者にとって忘れられない味のひとつということのようだ。麦飯にまぶして食べたの遅、残りを味噌汁に加えたりすることもあるという。貴重なタンパク源であるため、無駄にはできない。
「水を足してペースト状にする者、お茶に入れて飲む者、飯を一生懸命スプーンでつぶし餅状にしておはぎを作る者とさまざま」だ。スプーンはプラスチック製である。
副菜はそれぞれ、刑務所の食事を知らない私たちが想像する量の、よくて半分程度では無いかということだ。それでたっぷりと分量のある麦飯をかき込む。
「ナポリタン」というメニューについて。
いわゆる(スパゲティ)”ナポリタン”を想像してはダメ。ケチャップ和えの具材が麺にのっている。賛否両論、評価の分かれる一品。ちなみに「ナポリタン風焼きそば」なるメニューが登場する施設もある。
この「ナポリタン」を再現した写真も掲載されているのですが、本当に「茹でた麺の上に、ケチャップ和えが乗っている」だけで、麺にケチャップの色はまったく付いていないのです。
「焼肉」というメニューなんて、玉ねぎとモヤシが入ったスープに、申し訳程度の豚肉の細切れが入っているだけで、もし僕の普段の食事に出てくれば「これのどこが焼肉なんだ!」と厨房にクレームをつけに行きそうです。
甘いものを少しでも「かさ増し」するために、プリンとご飯を混ぜる「プリンめし」などは、別々に食べたほうが……」と言いたくなります。
それほどにも受刑者は「甘いもの」「味がするもの」を求めている、ということなのですよね。
とはいえ、受刑者の食費は税金でまかなわれているわけですし、受刑者に優雅な食生活をおくられていたら、それはそれで良い気持ちはしない、というのも僕の実感なのです。
「食べたいものを、食べたい時に、食べたいだけ食べられる自由」というのは、大切なものだよなあ、と痛感させられます。
戦争とかになって、食糧が不足する事態になったら、罪を犯していなくても、この「刑務所ごはん」よりも質量ともに劣る食事をしなければならないのだから、戦争はしないほうがいいよな、とも思いました。
罪を犯して収監されているのだから、ひどい食生活でも仕方ない、食べられるだけマシと思え!と考えるのか、「更生」のためには、ある程度は食生活を充実させて心を穏やかに保つべき、なのか。
いまの高齢年金生活者の「1日にスーパーの激安弁当1個を3食に分けて食べている」なんて話も聞くと、限界が来ているのは、刑務所の食事だけじゃないよな、と絶望的な気持ちにもなります。