週末にNetflixで、この『日々は過ぎれど飯うまし』というアニメの第1話を観ていた。
SNSで流れてくるプロモーションなどを見ていて、「若い女性の集団が『孤独のグルメ』っぽい飲食店に行く話なのか、なんか売れ線キーワードのマッスルドッキング(キン肉バスター+キン肉ドライバ−)みたいな話だな、と思っていた。
まあ、集団で行く時点で、「孤独」じゃないわな。
で、第1話なんだけれど、大学に入学したものの内気で友達もできず(でもアルバイトはやっている)、食事は基本的に自炊、外食してみたいがなかなか店に入る勇気が出ない、という主人公が、定食屋に入るかどうかずっと迷い続ける、というような流れが1話の半分くらい続いていた。
観客としてはもどかしいところもあるのだが、観ていて、僕は自分の学生時代を思い出さずにはいられなかったのだ。
僕は大学時代、ひとりで店に入って外食するという行為の敷居がすごく高くて、それでずっと部活で先輩たちに「ご飯食べに行こうか」と声をかけてもらうのを待っていた記憶がある(そこで先輩たちにかなり奢ってもらった恩を感じていて、のちに自分も後輩に「お返し」をすることになり、当時の先輩の経済的な負担を思い知ることになるのだが)。
外食するお金が全くなかったわけではないけれど、とにかく「ひとりで外食」ができなかった。
僕の大学生時代といえば、今からもう30年以上昔の話で、ひとりで入りやすい店って、そんなに種類が豊富ではなかったし。
いや、種類が豊富とかそういうこと以前に、「ひとりでご飯を食べている人」だと他人に思われるのがなんだかとても怖くて、授業や実習や部活で疲れて自炊するのも面倒くさくて、まだ24時間営業にもなっていなかったコンビニやスーパーで食べ物を買うか、インスタント食品にするか、ほっともっとなどの持ち帰り弁当にするか、ハンバーガーなどをテイクアウトするくらいしか選択肢がなかった記憶がある。
最初の頃は、一人飯の定番であり、入門編でもある、牛丼屋とかラーメン屋も苦手だった。
店員さんに注文する時に、なかなか声をかけられなくて、声をかけようとしても声が通らなくてずっと放置されてしまってつらくなる。思い返してみれば、吉野家が僕の周りにできたのが、もう20代半ばくらいになってから、ではあったし。
吉野家には、仕事で遅くなったり、急な仕事で職場に呼び出された後の夜中や早朝に、よくお世話になったものだ。牛丼も高くなったよねえ。給料は全然上がっていないのに(もちろん職種にもよるので、一概にはいえないけれど)
『日々は過ぎれど、飯うまし』の主人公の「河合まこ」は、大学で一人暮らしをはじめて、基本は自炊(その時点で僕にとっては偉い!」なのだけれど)。食べることが好きで、外食にも興味があって、見かけた定食屋さんにディスプレイされている料理を「食べてみたい」と思いながら見つめているのだが、ひとりで店に入る勇気がなく、店の前で店員さんに声をかけられると逃げ出してしまう。
ああ、わかる、わかるよそれ。
高級レストランや居酒屋、焼肉屋に「ひとり飯」初心者が入りづらいのは、理解してもらいやすいと思う。
でも、「大学の近くのひとり飯上級者だらけの定食屋」みたいな場所も、それはそれで入りづらいものなんだよなあ。
『孤独のグルメ』があれだけ人気になったのも、「ひとりで入れる店」「ひとりで食べる客や常連が多い店」というのは、逆に「ひとりで入ることに慣れていない人には敷居が高い」からなのかもしれない。
物語としては、最終的には「前進する」のだけれど、今の時代の若者でも「ひとりでご飯を食べる」というのは、けっこうハードル高いんだな、こんなにいろんな店ができて、「ひとり飯」を扱ったコンテンツもたくさんあるのに、と微笑ましくもあり、懐かしくもあり、昔の自分を思い出して、ちょっと恥ずかしくもなった。
今でもやっぱり、「ひとり飯」はそんなに得意じゃないんだけれど。
レベル1:マクドナルドなどのハンバーガー店
レベル2:吉野家、すき家などの牛丼店(松屋は食券制なので嬉しい)
レベル3:「やよい軒」などの食券制の定食屋
レベル4:ショッピングモールのフードコート
レベル5:CoCo壱や「かつや」などのひとり客が多くてカウンター席がある専門店(行列なし)
レベル6:ファミリーレストラン
レベル7:常連が多い定食屋や喫茶店
レベル8:居酒屋、焼肉店(「焼肉ライク」などのひとり飯特化型は除く)
レベル9:食べ放題店
レベル10:高級レストラン
というのが、いま考えた僕の「ひとり飯レベル」なのだが、僕は現在レベル5くらいだ。
ただ、これはけっこう個人差があるみたいで、「ファミレスは入れるけれどCoCo壱や王将はひとりでは入りにくいとか、個人差はもちろんあると思う。
僕自身は、学生時代「ひとりで学食」も避けていた。なんでこんなに自意識過剰なんだろう、とは思うのだけれど、そこでプレッシャーを感じるくらいならひとりでコンビニおにぎり、あるいは食事抜きのほうがいい。
ひとりで食べているときに、中途半端な知り合いと学食で遭遇するなんて状況を想像するだけで怖かった。
こうして書いてみると、店員さんとのコミュニケーションの有無(もちろん少ないほうがいい)や周囲もひとり客が多いかどうかなどが重要で、僕に関しては「常連扱いされると、なんだか向こうの期待に応えなければならないというプレッシャーを感じてしまって2度と行かなくなる」ということになりがちだ。
そして、レベル1と2、レベル4と5、レベル6と7のハードルはかなり高い気がする。
『孤独のグルメ』をきっかけに「ひとり飯」はそれなりに市民権を得たように見えるけれど、新型コロナ禍で「テイクアウト文化」が充実したこともあり、「もうテイクアウトでいいや」という選択もしやすくなった。
いまの僕の場合は、環境的にも、ひとりで食事をする機会は少なくなったので、むしろ「ひとり飯」になったときには、ちょっと楽しみでもある。出張先などで普段は飲まないビールを一杯、とか、宿泊しているビジネスホテルでYouTubeをダラダラ観ながらコンビニで買ってきた酎ハイを飲むのは、至福でもある。
僕も接客業を30年近くやっているのだが、相手(お客さん、クライアント)との距離感というのは難しいよね。親しみや感謝の気持ちから声をかけたり「おまけ」してくれているのはわかっているのに、客側は「個体」として認識されていることに戸惑ってしまう。
逆に「こんなに通っているのに全く認知されていない」と気分を害する人もいる。
まあなんというか、50年以上も生きていても、このくらいしか人間関係的に「成長」していない人間もいる、ということだ。
『孤独のグルメ』のゴローさんとか、初見の定食屋に入っていけるだけで、「なんて鋼鉄のメンタルなんだ!」と僕は感心せずにはいられない。
美味しいものを食べるのは大好きなのだけれど、食べずに生きていけたら面倒くさくないのにな、と、ずっと思っている。
fujipon.hatenadiary.com
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