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SuiseiNoboAz『ubik』

 

 

 

  • アーティスト:SuiseiNoboAz
  • カッティング エッジ

スイセイノボアズが2013年にリリースしたアルバムについて書く。

まず音がめちゃめちゃ良い。ギターの歪みが本当に気持ちいい。遠くから鳴る、奥行きを感じる轟音。ベースのフレーズがとても立体的で、曲中ずっと泳ぎまくっている。「adbird」「tokimekinishisu」のベースは特に素晴らしい。ドラムも無茶苦茶に上手い。加えて、石原氏のギターの音の広がりが本当に凄い。ミックスについてはさっぱり知識がないので何も言えないが、1stや2ndと比べても音が違うと感じる。奥行き素晴らしく、遠くで鳴るギターが広大な空間を通って自分の耳に伝わるのがわかる。これが臨場感というやつか、なんて凄いんだ、と聴くたびに何度でも感動する。13曲、65分という時間全てに隙がなく美しい。曲として一番好きなのは「elephant you」だったりする。歌詞に歌われている新宿近くでぶっ倒れたまま朝を迎える話は実話らしい。タイトルにもあるようにSFっぽいモチーフが多い。もっと尖っていた1stや、名曲「64」が収録され石原正晴が「赤黒いイメージ」と言っていた2ndよりも、この青緑色の3枚目が自分は好きだ。

2013年に発売されたアルバムについて今更書いたのは、最近リリースされた、かつて自分が在籍していたアルバムの音源が、結果的に割と『ubik』に近い音像になったからだ。

all love begins and ends there - EP - girl said,のアルバム - Apple Musicall love begins and ends there - EP - girl said,のアルバム - Apple Music
自分はこの音源で一部のベースを弾いたのみで、アレンジやギター撮りには全く関与しておらず、時々メンバーから送られてくる仮ミックスに「いい感じやね」「かっこいい」「天才かよ」などのLINEを返すことしかしていない。なんならレコーディングが終わり、ミックスダウンの途中で脱退して迷惑をかけた。完全にギター陣が主役のバンドであり、95%ほどはこのバンドの首謀者であるボーカルとギターのスタジオワークによるものだ。完成版のミックス音源が上がってきたとき、自分はその美しさに震え、デモとの音の違いに戸惑った。奥行きのある音像は、スタジオでの仮録音から劇的に変化しており全く別物だった。知らないうちにSEとかアコギの音とか入ってるし。ここまで化けるとは。そして「まるで傑作『ubik』みたいだ」と思った。ギターの歪みや空間を感じる音の処理の仕方が似ていたのだ。ミックスを担当したギターはボアズは特に聴いたことないと思う。全くの偶然に、自分のバンドの作品が好みに寄ってきたのだ。なんだかとても嬉しかった。

初めて『ubik』を聴いてから、ボアズは10年以上に渡って自分の中で特別なバンドだ。2013年のライジングサンで観たライブが最初だった。最後の「ubik」のアウトロ、途轍もない轟音が鳴る中、テープエコーを肩に担ぎマーシャルの上によじ登った血塗れの石原正晴がジャックをぶち抜いてそのライブは終わった。渋谷でLITEとボアズのツーマンも観た。自分が住む街にもライブで来てくれた。3人から4人、また3人へとメンバーは変わりつつ『liquid lainbow』『3020』『GHOST IN THE MACHINE DRUM』とアルバムは発売され、自分は聴き続けている。でもやはり『ubik』が最高傑作だと思う。4月頃のよく晴れた日に、このアルバムを聴きながら散歩すると、どんな音楽にも代えられない多幸感がある。これが自分の中では特別なアルバムで、あらゆる音楽で一番気持ちが良い音が鳴っている。

 

シドニー国際空港にて

f:id:ngcmw93:20260131190946j:imageオーストラリアへ出張し、無事に全行程を終えた日。自分はシドニー国際空港にいた。帰国便の搭乗まで時間があったので、空港を散策する。あまり買い物をする気分ではなかった。ぐるりと一周し、飲み物を買い、ベンチに座る。ポケットにイヤホンがあったので、なんとなく大森靖子を聴く。再生したのは大学生の頃に聴いていたアルバム『絶対少女』。なんだか、どの曲もすごく良い。こんな傑作だったのか。ひと仕事終えた自分がリラックスしているからなのか、空港の片隅のベンチで聴くのがそう感じさせるのかわからないが、なんて良い曲ばかりなんだ…と打ちのめされた。優しい曲も、鋭い曲も全部良い。生きることの切なさとか、煌めきとかが切実に歌われていた。あとアレンジがすごくうまい。「エンドレスダンス」のコーラスが凄い。工夫に満ちている。「ミッドナイト清純異性交友 」は大学時代に軽音サークルでカバーしたこともある。懐かしい。基本はバンドアレンジの曲が好きなのだが、最後の弾き語りの「I&YOU&I&YOU&I」がとても心に沁みた。聴き終えて少し呆然として余韻に浸る。空港の賑やかさが戻ってくるまでに時間がかかった。そしてふと気付く。アルバム一枚をこんなにじっくり通して聴くことが、ここ数年なかったのだ。最近の自分は、音楽を丁寧に聴くことからずいぶん遠ざかっていた。学生の頃はあんなに夢中で、バンドもやっていたというのに、自分の中で音楽は遠いものになってしまっていた。

おれは今、人で溢れる空港の片隅で、音楽に没頭していた。スマホを触ったり、他の作業の片手間ではなく、この47分間は、『絶対少女』を聴くためだけに使った。その結果、すごく心が満たされた。これは自分にとって大きな出来事で、うまく言えないが頭が急にクリアになった感覚がした。ここ最近、冬のせいなのかうっすらと気分が塞いで、心が疲れていた。それがこの「空港のベンチで大森靖子を聴いて感動する」という音楽体験で少し楽になったのだ。大森靖子に感謝したい。あとApple Musicにはアルバムのジャケットをド派手に間違ってるので直してもらいたい。

搭乗の時間になり、飛行機に乗り込む。南緯33:56から北緯35:32へ。また日常に戻ることになる。でも、どんなに忙しくても、つらいことがあっても、良い音楽で心が救われることがある。これを知っている自分は、まだ大丈夫だと思えた。

トルコ旅行記③イスタンブール

f:id:ngcmw93:20260112211748j:imageトルコ旅行記の終盤、イスタンブール観光。

 

○5日目(続き)f:id:ngcmw93:20260124235518j:imageトプカプ宮殿から移動して昼食を食べる。広場横にあるこの店で食べた肉のプレートが全部とんでもなく美味くて感動した。何が入ってるのかわからなかったがスープも美味かった。

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f:id:ngcmw93:20260125001224j:imageブルーモスクを見学。正式名称はスルタンアフメトモスク、というらしい。巨大さに圧倒される。外観からでかいのだが、中に入るとほぼ吹き抜けの作りのためかえげつない広さである。あと照明が綺麗。 入り口には蛇口と椅子が並んでおり、信者たちが入場前に身を清めている。実際に祈りを捧げに来ている人もいた。入場時には女性はストールで髪を覆わなくてはならない。ブルーモスクの由来のひとつに、床の敷物の絨毯が青だったことがある。しかしコロナ禍後に赤に変えたらしく、見ると鮮やかな赤だった。

 

f:id:ngcmw93:20260125001739j:image近くにはアヤソフィア(ハギヤソフィア)が建っている。「聖なる知恵」という意味らしい。東ローマ帝国時代の6世紀に建てられてから900年間キリスト教の教会だったが、1453年のコンスタンティノープル陥落からイスラム教の礼拝堂になった。入場に4,000円くらいかかるらしく、しかも結構並んでいたので内部は見ずに遠目で鑑賞。1,500年近く昔からある建造物は、とんでもない巨大さでちょっとした地形のようなでかさだ。ピンク色で割とかわいい要素もある。補修のためか一部が幕に覆われている。

ブルーモスクはアヤソフィアよりも豪華で大きな建物を作ろうとしたらしい。アヤソフィアは6世紀に建造、ブルーモスクは17世紀に建造なので1,000年の開きがある。しかし、アヤソフィアより大きな建物は作れなかったため、せめて大きく見せようと6本のミナレット(塔)を作ったという。

このあたりに地下宮殿もあるのだが、チケットを買って並んでまで行くか悩んだ挙句、見送った。

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f:id:ngcmw93:20260125003322j:imageその後はバザールなどをぶらつき、お土産を買うなどした。店のおじさんからどこから来た?と聞かれるのでジャパンと答えたらヤマダ電機!と言われた。人混みの中、チャイを運んでる人が時々いる。お店の人が出前で取っているらしい。

f:id:ngcmw93:20260125071432j:imageトルコといえばトルコアイスだ。屋台で注文するとちゃんと遊んでくれる。このおじさんは有名らしく、様々な俳優たちが来た写真が飾られていた。少し薄めの練乳みたいなミルク味だった。

 

○6日目
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f:id:ngcmw93:20260125072112j:image市街地を歩いていると、赤い路面電車が走っている。旧型の赤い車両と新型の青い車両がある。鮮やかで美しい。あと、栗やとうもろこしを売る屋台が出ている。ガイドさんに聞くと、焼き栗には高確率で虫が入っており、あまりおすすめ出来ないらしい。

この日は裏でMLBワールドシリーズの第3戦が行われており、18回裏まで続く壮絶な試合の末にドジャースが勝利した。午前中はずっと、ツアーの男性陣はみな試合の速報を気にしていて面白かった。

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f:id:ngcmw93:20260125072641j:imagef:id:ngcmw93:20260125072830j:image軍なのか警察なのか、迷彩柄の服装の人がいた。あとトルコにはトッグというメーカーの車がある。市内では結構日本車を多く見る。軽自動車は無くてセダンやSUVやバンばかり。軽自動車が多い日本は独自の文化なのだなと思う。

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f:id:ngcmw93:20260125073345j:imageボスポラス海峡を渡る橋の上では、たくさんの釣り人たちが釣竿を垂らしている。この日は小雨が降っていたが、構わず釣りに興じている。その橋の下のレストランで最後の夕食を食べた。この旅の行き先にトルコを選んだ理由は、かなり昔にトルコ人には「ケイフ」という概念があると知り、そこからトルコについて興味を持ったからだ。ケイフは「何もしないことを尊ぶこと」だという。ただボーっとすることを良しとする。常にスマホを気にする我々にはもう至れない境地だ。ボスポラス海峡で日がな釣りをするトルコ人たちは、竿に魚がかかるまでの長い間、もしかしたらケイフしているのかな、などと思った。

 

○7日目f:id:ngcmw93:20260125075213j:image
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f:id:ngcmw93:20260125075105j:image旅の最終日。朝早く目覚めたのでホテル周辺を散歩する。少し肌寒い朝焼けが綺麗だった。海を眺めていると猫が寄ってくる。本当にそこらじゅうに猫がいる国だ。

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f:id:ngcmw93:20260125075447j:imageイスタンブール空港へ。世界一物価が高い空港、と言われるだけあって全てが割高である。お土産はすでに調達済みのため、散策するだけに留める。空港内にイスラム教徒がお祈りするためのスペースがあった。メッカの方向の壁に印がついている。そういえば飛行機内でもメッカの方角が常に分かるように方向が表示されていた。風向きの影響でヨーロッパから日本へは復路の方が速く飛行機が飛ぶ。それでも10時間くらいかかった。

こうして、我々は日本に帰ってきた。

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f:id:ngcmw93:20260125075926j:image買ってきたチャイを飲みながら、今でも時々トルコのことを考える。人生の中でもう一度くらい訪れたいと思う。老後になるかもしれない。生活していると忙しさのせいで時間があっという間に過ぎるが、チャイを飲むことで一息つくことができる。ケイフの精神を忘れずに生きたい。そして金と時間を手に入れて、数十年後に夫婦でトルコを再訪できたら良いなと思う。

トルコ旅行記②パムッカレ〜エフェソス

トルコ旅行の中盤、パムッカレ観光編。

 

○ 4日目f:id:ngcmw93:20260112205804j:imageヒエラポリス-パムッカレへ。若干曇りだが良い天気。早朝に朝飯を食べてバス移動。車窓から外を見ると朝焼けの空に気球が上がっている。カッパドキアだけでなくパムッカレでも気球体験はできるらしい。この日はパムッカレマラソンの開催日で、道路が封鎖されていた。やむなく迂回して目的地へ向かう。どこからか音楽が聞こえてきたり、道路にゲートが設けられていたりと少しお祭り的な雰囲気があった。

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f:id:ngcmw93:20260112080310j:imageパムッカレは「綿の神殿」の意味。石灰岩の大地が広がっており石灰棚を歩ける。段々畑のようで美しい景色だ。温泉が湧いていて、裸足になって入ってみると暖かい。近年は源泉が枯れて湯量が減っている、と聞いていたがこの日はめちゃめちゃにお湯で溢れていた。かなり運が良かったらしい。石灰棚は斜面でヌメッているため滑って転ぶ人もいる。転んだら濡れるわけで悲惨だ。散策して風景写真を撮りまくる。
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f:id:ngcmw93:20260112080302j:imageここにも猫がたくさんいて、構ってやると人懐こく膝に乗ってくる。動物のぬくもりを感じる。日本もトルコも猫は同じだ。毛並みが良く、野良にしては綺麗だったのでどこかで世話されているのかもしれない。道端でおばさんからザクロジュースを買う。甘酸っぱい。

そのまま割と近くにあるヒエラポリス遺跡群を見学。ローマ帝国時代の保養地。f:id:ngcmw93:20260112210504j:image

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f:id:ngcmw93:20260112210453j:image崩れて風化している箇所も多いが、神殿みたいな建物や演劇場?の跡などが見れる。一部の遺跡は補修工事の最中だった。馬鹿でかいクレーンが遺跡の途中で登場するのでワクワクした。ダムとか頭首工みたいな、自然の中に突然現れる人工物が見れると興奮する。晴天で気持ちいい。ここにも大量の猫がいて、人間の都合に構わず昼寝をしていた。遺跡の写真を撮ると猫が写る。猫たちは古代ローマ時代からここにいるのだろうか。

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f:id:ngcmw93:20260124174950j:imageスーパーマーケットへ立ち寄る。オリーブオイルの種類が豊富である。お菓子売り場でチョコバーなどのばら撒き用のお土産を買う。カップラーメンは34トルコリラ日本製品もあったのだろうが見つけられなかった。

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f:id:ngcmw93:20260124183903j:imageビールコーナーをチェックすると昨日飲んだエフェスの缶がある。メジャーな銘柄らしい。さっき見たエフェソス遺跡から名付けられたとのこと。今はBomontiという銘柄もよく見かけた。エフェスを作っているANADOLU・EFES社の傘下らしい。トルコ人イスラム教徒なのに、結構普通に酒を飲む。レストランも大抵アルコールがあるし。

f:id:ngcmw93:20260125153658j:image購入したお菓子やスープ。ネスレは世界中どこでもある。トルコを代表するチョコのメーカー、ユルケル(ULHEL)は最近ゴディバを買収した。ミルクチョコバーが美味しい。他にエティ(ETI)のピスタチオ味のバーを買った。


イズミール空港から国内線に乗り、イスタンブールへ移動。日付が変わってから宿に着く。綺麗な部屋だった。疲れから気絶するように眠る。

 

○5日目
f:id:ngcmw93:20260124190146j:imageこの日から3日間はイスタンブール観光。イスタンブールボスポラス海峡を挟んで西側はヨーロッパ、東側はアジアにまたがっている大都市だ。自分は海峡の西、ヨーロッパ側に宿泊している。まずは旧市街の中心部を観光。トプカプ宮殿へ行く。

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f:id:ngcmw93:20260124221441j:image宮殿はいくつもの建物で構成されている。王の居室、ハーレム、炊事場、図書館など。英語が読めないなりに解説を読んでくまなく見て回る。やはり宝物類が見ていて面白い。あとはコーランをずっと読み上げている人とか居た。厳粛な空気。テラスに出ると金角湾が眺められる。市街地が一望できる。

 

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f:id:ngcmw93:20260124221729j:image王や王妃の衣類も展示がある。肩がすごい。映画『ストップ・メイキング・センス』の中盤でデイヴッド・バーンが着る「ビッグ・スーツ」みたいだ。宮殿を去る時、ちょうど門番の兵士が交代するところだった。ガタイの良い髭の男たちがのしのしと歩いてくるのは迫力があった。

続いて、近くのブルーモスクへ移動する(続く)

トルコ旅行記①カッパドキア

2025年の秋、新婚旅行でトルコを旅行した記録。6泊8日。

 

○ 1日目
10:25成田発。航空会社はターキッシュエアラインズ。6,300マイルを飛んでイスタンブールへ向かう。13時間もの長距離フライトは初めてだ。腰痛持ちの自分は腰が爆発するのを防ぐためにサポーターや骨盤矯正クッションを買い込み、あらゆるストレッチを覚えてフライトに臨んだ。結果、腰はなんとか大丈夫だった。足がむくんだくらい。
座席のモニターにvoyager3Dというフライトの様子を見れるアプリがあった。飛行機のルートはなるべく人間が住んでいる場所の上空を飛ぶようだ。飛行機の腹に真下を見下ろす中継カメラが付いている。荒涼としたコーカサスの大地を空から眺めていると時々集落が見えて、こんな最果ての土地にも人の暮らしがあることに気付く。元々住んでいる人からしたら当たり前の暮らしも、日本に住む自分からしたら想像もつかない世界だ。どんなものかわからないが、案外豊かなのかもしれない。
途中、何ヶ所か全く人の気配のしない荒れた土地が延々と続く箇所があった。ウィキペディアの「フランクリン遠征」の記事を思い出す。個人的に好きな記事トップ5に入るお気に入りだ。19世紀半ば、イギリスの海軍のフランクリン卿は北極海航路を探索する目的で大西洋を航海する。現在で言うカナダの北東部だ。途中で氷に阻まれて船を放棄し、誰もいない地の果てで絶望的な彷徨を繰り広げる。結果的に隊員129名全員が死んだ。「世界の探検史上例を見ない死の行軍」「遠征隊の最期の地が(…)文明の最も近い前哨からは数百マイルも離れていた」との記述がなんとも言えず良い。あまりに破滅的で。遭難系の記事は秀逸なものが多い。「ドナー峠」とか「ウルグアイ空軍機571便遭難事故」など。
あとは映画『ナポレオン』と『マッドマックス 怒りのデスロード』『ハリーポッターアズカバンの囚人』を観た。久々のマッドマックスは破茶滅茶に面白かった。これぞエンタメ。

窓枠に付いた氷の結晶が太陽に照らされる様を見ていた

現地時刻の18時頃にイスタンブールに到着。国内線の乗り換えまで時間があるので空港を散策。カフェでトルココーヒーとチャイを飲む。コーヒーは粉っぽく、以前に寒河江にある「トルコ館」で飲んだコーヒーが本場に準拠した本物だったとわかった。つまり美味くはない。チャイは美味い。空港を行き交う人々を眺める。トルコ人男性は全員同じ髪型に同じ髭を生やしているので、なかなか見分けがつかない。22時過ぎにカイセリ空港へ到着。バスに乗ってカッパドキアへ。爆睡してたら一瞬で着いた。
カッパドキア洞窟ホテルにチェックイン。いい部屋だった。本当にしっかりと洞窟で驚く。ベランダに出ると、夜空にオリオン座が見えた。結構寒い。結局この日はトータルで9,800キロほど移動した。一万キロくらい遠く離れても、同じ星座が見えるのは感慨深い。随分と遠くに来たものだ。深夜1時くらいに就寝。時差で6時間巻き戻ったこともあり、長い一日だった。

○2日目

トルコにはそこらじゅうに猫がいる

朝食がバイキング形式でどれも美味い。チーズの種類が豊富だった。
カッパドキアはペルシア語で「美しい馬の国」の意味らしい。街の中心には馬のオブジェがある。

今回のトルコ旅行は、日本の旅行会社のツアーに参加した。6泊全ての宿と移動を自分で手配するのが面倒だった(トルコの国土面積は日本の2倍)のと、パッケージツアーで行きたい世界遺産を全て回れるプランがあったので。金額も安く済んだ。現地に行くまで知らなかったが、このツアーはトルコ政府のプロモーション事業の対象らしく、ツアー料金の40%は政府が負担しているとのことだった。ありがたい。ツアーの参加者は年配の方が多く、大学生がいた他では我々夫婦が一番若い部類だった。

8世紀に建設された地下都市へ行く。ローマ時代、迫害を受けた初期のキリスト教徒が隠れ住んだ場所。1965年に世界遺産登録された。高さが1mも無いような通路を進むと、様々な形の部屋に繋がっている。洞窟の遺跡に点在する小麦の貯蔵庫、ワイナリー、リビングなどを見学した。
次にローズバレーという荒涼とした奇岩の多い土地へ。スターウォーズエピソード1の撮影地の候補だったらしい。アナキン・スカイウォーカーの暮らしていた故郷、タトゥイーンのモデルだ。確かにポッドレースのシーンなどを思い起こさせる砂と岩の大地だ。この地で実際に撮影された、と書きたいが、いま調べたらタトゥイーンのシーンはチュニジアで撮った、とネットにあった。トルコ政府が撮影を許可しなかったらしい。

三姉妹の岩、と呼ばれる奇岩

かつては岩をくり抜いて住居にしていた

晴天で景色の写真が映えた。バスで夕方まで名所を巡り、洞窟ホテルに戻って夕食。
ツアー客の間では、明日気球が飛ぶかどうかの話題で持ちきりだった。このツアーは主にカッパドキア、パムッカレ、イスタンブール世界遺産を巡るものだが、旅程で最大のイベントはやはりカッパドキアの気球体験だった。晴れていることが条件で、天気が良くても強風だと飛ばないらしい。本当はこの日(2日目)の朝飛ぶはずが、強風のため乗れず延期になったのだ。残るチャンスは翌日しかない。気球に乗るかどうかでこの旅の満足度は全然違うはず。各々がスマホで情報収集したところ、飛ぶか否かはこの時点でわからなかった。集団の心理としてみんな悪い方に想像を膨らませがちなので、皆が「もう無理なんじゃないか」と口々に言い始める。不安なまま洞窟ホテルで眠る。

 

○3日目
気球が飛びそうなため、早朝4時起きで離陸スポットへ向かう。10月のトルコはやや寒い。まだ暗い中、砂のオフロードを小型バスで爆走する。日が出る前に出かけるのはワクワクするので好きだ。暗がりのそこらじゅうに集団がいてざわざわと興奮が伝わってくる。

f:id:ngcmw93:20260112072045j:image準備が始まると、急にそこかしこで気球が膨らみ始めた。多いと120機が一斉に飛ぶらしい。
脚立を使って籠に飛び込み、空へ飛び立つ。割と揺れずにスムーズに離陸。自分は高いところが苦手なことを思い出し、足がすくんで籠の中心部へ避難する。めっちゃ怖い。上空は風が強いかと覚悟したが無風だった。
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f:id:ngcmw93:20260112072501j:image数百メートル上り、地面が遠くなると逆にそこまで怖くなくなったので周囲を見渡す。視野いっぱいに、色とりどりの気球が浮かんでいる。壮観だった。あまりに日常から離れた風景にクラクラする。これだけ密集して飛び立つとぶつかるのでは?と思っていたら普通に気球同士でぶつかっていた。でもボヨンと跳ね返るだけで問題なく離れる。操縦士がガスの燃料を噴射すると、気球の中で赤い炎が燃え上がる。どのように操作しているか気になって見ていると、人力で紐を引いて気球の上部を開閉して高度を調整しているらしい。気球は風で結構流される。乗客は荷物を出発地点のバスに預けるのだが、気球は出発地点に降りてこれる訳ではないので、無線で「この辺に降りるぞ」と連絡したところへ走ってくる。そして凄いのが、気球は地面に着地するのではなく運搬用の小型トラックの荷台に着陸するのだ。操縦士が細かく向きを調整して、神がかった技で荷台にドンと着く。無事に地上に降り立って、操縦士たちとなんか記念のシャンパンファイトをしてツアー客みんなで飲む。チップはグラスに入れて返すのがマナーらしいのでそうする。

f:id:ngcmw93:20260112073852j:image絨毯の商店へ。世界中のバイヤーが買い付けにくるという館へ。おばちゃんたちが手作業で織っている場を見学。写真は蚕から糸を取り出すところ。トルコ商人は究極に喋りが上手い。大阪万博の間はトルコ館で勤務したという大柄なトルコ人が、日本語でテンポ良くジョークを交えながら次々に絨毯を紹介していく。エンターテイメント性に本当に関心した。

f:id:ngcmw93:20260112074234j:image右は33万円、左は88万円。高いものには古くは王族の絨毯だけを作っていたという地名=ブランド、「ヘレケ」の文字が入っている。

バスに乗り、ビート(砂糖大根)を大量に積んだトラックを追い越しながら西へ。この日の移動距離は617キロ。どの街も中心部に象徴がオブジェになっている。カッパドキアの中心地ネヴシェヒルは馬のオブジェ、AKSARAYという街は中心に犬のオブジェがあった。途中で立ち寄ったパーキングエリアで食べたヨーグルトに蜂蜜とゴマをかけたものが美味しかった。とにかく食事にはヨーグルトやチーズが出てくる。ブルガリアとも近いし、乳製品を多く食べる文化なのだろう。アイランという伝統的な飲料も飲んでみたが、とにかくしょっぱく、全然好みではなかった。

 

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f:id:ngcmw93:20260112075121j:image数百キロバスで移動し、パムッカレという街に着く。巨大なホテルに泊まる。かっこいいデザインだった。なんとなく旧ソビエト連邦とかにありそうな雰囲気だ。トルコもソ連側の影響を受けてるのだろうか。冷戦時の分野は知識がなくわからない。トルコはNATOに加盟している一番東に位置する国だったはず。ホテルの外観も内装も、やたら鋭い角度の意匠が多い。食事はどこのホテルでもバイキングだが、ヨーグルトの種類が豊富で選ぶのが楽しい。はちみつやジャムをかけて食べる。たまに胡麻がかかっていたりする。宗教的理由からか豚肉は全くない。チキンか羊肉ばかりだ。この晩あたりからツアー客同士で打ち解けてきて、お互いの職業や居住地なんかのぼんやりした情報がわかってくる。仕事を早期退職し、株で儲けているおじさん。強そうな生保レディー2人組。学生さん、などなど。食事の代金はツアー料金に入っているが、飲み物代は毎回支払わなくてはならない。なんか懐かしいデザインのファンタを飲んだ。この日で旅の3日目が終了。まだ序盤である。

2025年を振り返る

今年の振り返りと、来年の抱負。

●野球f:id:ngcmw93:20260101155318j:image3月、ドジャース対巨人を観戦。幸運にも超高倍率のチケットが当たった。観れてよかった。ドジャースは今年のワールドシリーズを制する訳だが、巨人戦がブルペンデーだったため、ワールドシリーズの中継を観てるときどの投手も「こいつ生で観たな」となれたので嬉しかった。ロブレンスキーとかバンダとか。他にイースタンリーグも2試合観た。やはり時々スポーツ観戦するのは良い。

 

●関西旅行f:id:ngcmw93:20260101155716j:imageずっと行きたかった佐川美術館へ行くことができた。ここ2年ほど建築を見ることにハマっているのだが、ここは特別だった。わざわざ関西空港から琵琶湖のほとりまで行った甲斐があった。最近は旅程を組むとき、つい効率を重視して何箇所もハシゴできるか否かで目的地を決めがちだが、たったひとつの目的地のために時間をかけて移動するのもありだと思った。念願を叶えることは全てに優先される。それくらい満足度が高かった。京都駅の建築としての美しさにも感動した。

 

●トルコ旅行f:id:ngcmw93:20260101160123j:image結婚したので、新婚旅行でトルコへ行ってきた。6泊8日。これについてはガッツリ文章を書いているのだがまだ完成していない。旅行記に手加減など出来ないのだ。とても良い旅行になったので、なんとか記録に残したい。

 

●家f:id:ngcmw93:20251222063232j:image家を購入した。夢がひとつ叶って嬉しい。半年検討して、自分の理想にかなり近い物件に決めることができた。先週末に引渡しを受けたばかりで、この年末に引越しをする予定。しかし、ようやく奨学金を返し終えた年に退職の歳までかかるローンを組んだ訳だ。借金ばかりの人生!

 

●観た映画

50本観た。目標をギリギリ達成。年末に観た「トワイライト・ウォリアーズ」が最高に面白かった。一番強烈だったのは「無名の人生」か。とんでもない傑作。久々にパンフレットを買った。映画祭で観たのだが、上映された会場にいた監督と少しだけ話せた。1年半実家に篭ってひたすら一人で描いたという。あれだけの作品をほぼひとりで作った、ということに勇気づけられた。本当にすごいことだと思う。あと、ひとりならやりたい放題できる。最高にぶっ飛んだ作品を作るのは、いつだってひとりの狂気とエゴだ。
映画をそこそこ観た一方、本は全然読めなかった。総計12冊だった。漫画は割と読んだのだが。今読んでいる小説「タタール人の砂漠」は静かな小説で心地良い。

 

●ベストトラック

- YouTube2023年の曲だが今年見つけた。ひたすらに良い曲だ。いつかライブを観たい。

 

●その他雑記
今年も2回のハーフマラソンを完走した。なかなかタイムは伸びないが、これは続けることに意味がある。最近のテーマは走り続けることと書き続けること。創作面では本を2冊作った。文フリは4年連続4回目の出店。自費出版だが、いくつかの本屋で取り扱いもしてもらえている。2026年は長編を書く。絶対に書く。
あと、バンドからしばらく離れることにした。22歳で本格的にバンドを始めて、丸10年この界隈で活動した訳だ。理由としては、様々あるが一番大きいのはモチベーションが下がってきてしまったこと。仕事終わりの平日深夜のスタジオ練や、休日を丸一日潰してのライブがキツくなってきた。もっと生活を回すために使いたい。あと単純にベースに飽きてきたのもある。これからはクラシックギターを弾きたい。それかマンドリンとか。でもバンドを完全に辞めるわけではなく、少し離れるだけで完全に熱が冷めたわけではない。案外すぐにライブハウスに帰ってくるかもしれない。相変わらず音楽は聴いている。明日もレコード屋に行くし。人生が進むにつれて、自分のために使える時間が限られてきた。しかしそれも自分で選んだ道なので、何とか折り合いをつけるしかない。2026年の目標は毎朝1時間の読書を継続することと、映画を年50本観ること。それと長編小説を書き上げること。時間を捻出して、何とかやり遂げたい。

 

文フリへの道②完成

ついに本が完成したので、その報告と告知。

 

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f:id:ngcmw93:20251123094837j:image【新作】『諸相 vol.3』

8編の掌編を収録した文庫本です。リソグラフで印刷したブックカバー付き。A6サイズ、80P。

(解説)今年の秋に書いた7作の掌編と、昨年末に書いた「オールナイトロング」という短編を収録した文庫本。主人公は全員違って、文体も全部変えてみた。作ってみて、ここ最近作った本で一番達成感がある。30部しか刷っておらず、今年のうちに売り切りたい。

 

f:id:ngcmw93:20251123090122j:imagef:id:ngcmw93:20251123102718j:image【新作】『感性が交差する場所』
新潟市内野で飲食店を営む店主から、お店を作るまでの過程や変化しながら運営してきた経過をお聞きしたもの。B6サイズ、全64P、リソグラフ印刷の帯付き。

(解説)5月に簡易版を作った本を、カラーで製本して増版したもの。去年読んだ本「トラべシア vol.6」と「東京の生活史」に影響を受けて書いた。知り合いの飲食店の店主にお願いして、長いインタビューをさせてもらった。こちらも帯は友人の印刷所兼書店で印刷。グラデーションのデザインはcamvaを使って15分くらいで作ったもの。とても気に入っている。

 

丸一日ひとりでブースにいる予定。この文章をビッグサイトへ向かう新幹線で書いている。これを読んだ人は全員来ていただきたい。

 

11/23(日) @東京ビッグサイト

東京ビッグサイト南ホール

ブース名:闇鍋連合

出店位置:南3《く- 42》

 

公式サイト

https://bunfree.net/event/tokyo41/

 

個人のブース紹介

https://c.bunfree.net/c/tokyo41/4F/%E3%81%8F/42




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