
映画「罠」(原題:THE SET-UP、1949)は、のちに「ウエストサイド物語」などで巨匠となるロバート・ワイズ監督作品。上映の現実時間(72分)と映画内時間がほぼリアルタイムで進行するという実験的な作品でもある。
夜9時5分に始まり、10時16分で終わる。時計が何度も映し出され、リアルタイムであることを強調していた。原題の「The Set-Up」は"八百長"の意味。

主演のロバート・ライアンは学生時代にスポーツ選手として活躍、特にボクシングでは4年間カレッジ・ヘビー級チャンピオンというから、役柄にはうってつけだった。
ボクサーとしてはピークを過ぎた中年に差し掛かっていたが、マネージャーが買収されて、負けると約束。ただ、本人には伝えておらず、勝ちそうになってきたので伝えると、逆にそれが本人を発奮させるきっかけとなり、番狂わせが生じるのだった。

ボクシングのパンチの応酬シーンが余りにもリアルで、見ている側も緊張の連続。賭けている観客たちの興奮もすさまじかった。叩きのめせという女性客の口元のアップなど見どころ。
ボクシング映画というと「ロッキー」シリーズ、「レイジング・ブル」「ミリオンダラー・ベイビー」「ALIアリ」「ボクサー」などがあるが、ボクシング映画の原点のような映画かもしれない。邦画では「百円の恋」「あゝ荒野」などがある。
ロバート・ライアンというと「ワイルドバンチ」など西部劇や戦争映画で中年の渋い役が印象的だが、若手のころはスポーツマンで鍛えていて動きもかろっやかだった。
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<ストーリー>
今夜もパラダイス・シティ・アリーナではボクシングの試合が行われている。ストーカー・トンプソン(ロバート・ライアン)もメイン・イベントの直後の試合に出場。
彼は35歳であり、もうボクシング選手としての盛を過ぎていた。ホテルの部屋で「今日は勝てそうな気がする」と妻のジュリー(オードリー・トッター)に話しかけるが、ジュリーは全く信じない。
最近の夫は負け続きで、しかも今日の相手がタイガー・ネルソン(ハル・フィーバーリング)という23歳の若い選手。ジュリーは夫にわざと負けて、ボクシングを引退してほしいと願っていた。
一方、ストーカーのマネージャーのタイニー(ジョージ・トビアス)も同じ気持ち。彼もストーカーのキャリアは終わったと見なし、最後の一儲けとばかり八百長試合に応じるつもりでいた。
カネを出したのは相手のタイガーのスポンサーである”リトル・ボーイ”と呼ばれるギャング。カフェで50ドルを受け取ったタイニーはアリーナに向かうが、八百長の件はストーカーにはわざと知らせなかった。
というのも、ストーカーが八百長を拒む可能性があったからだが、あえて試合を放棄しなくても、ストーカーが若いタイガーに勝つとは思えなかったからだ。
ストーカーもアリーナに入り、試合までの時間を他のボクサーとの会話で潰します。ボクサーたちはいずれもチャンピオンになることを夢見ていたが、中々うまくはいかない。
散々将来大物になることを喋っていたガンボートも試合に破れ、病院に運ばれていく。
ストーカーは暗い気持ちになるが、妻ジュリーが見に来る試合で負けるわけにはいかないと気持ちを集中させていく。
ところが、リングに出て観客席を見渡すと妻の予約席は空っぽだった。ジュリーは夫が負ける姿を見たくないと思い、アリーナの前まで来たが引き返してしまったのだ。



ストーカーは若いタイガー相手に善戦する。こうなると八百長がうまくいかないと思ったタイニーは、試合の途中で事情を話し、ストーカーに負けるように促す。
しかし意地になったストーカーは最後のラウンドで相手をノックアウト。怒ったギャングたちは試合後に彼の右拳をレンガで潰してしまう。
夫が倒れているのを知ったジュリーはそばに駆けつけ、彼を介抱する。そして涙を流しながらも、ストーカーがボクシングができないことを知って、かえって喜ぶのだった。
<主な登場人物>
■ストーカー・トンプソン:ロバート・ライアン…過去には実績があったが、35歳の今は落ちぶれたボクサー。
■ジュリー・トンプソン:オードリー・トッター…ストーカーの妻。不安定な生活に疲れ、ストーカーにボクサーを引退するように勧める。
■タイガー・ネルソン:ハル・フィーバーリング…ストーカーの対戦相手の23歳のボクサー。2ラウンドで相手が倒れて負けると聞かされている。対戦中に、相手が本気で攻めてくるので、思わず話が違うと口走ってしまう。
■タイニー:ジョージ・トビアス…ストーカーのマネジャー。小心者。

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